eぶらあぼ 2024.8月号
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拡大版はぶらあぼONLINEで!→♪♪♪39したおかげで、だんだんみんなの間に自信が芽生えてきました。先生と合奏をするたびに上達するのが感じられて嬉しかったし、総文祭出場が決まったときは信じられない気持ちでした」 フルート担当で部長の3年生、「ユイー」こと榊結已(さかきゆい)も富田先生の指導によってバンドの力が大きく伸びたと考えている。「亮先生は音楽の楽しさを教えてくれながら、私たち自身で音楽をつくるように促してくれるんです。自主性を育んでくれる先生です」♪♪♪ ナナミーやユイーたちはいま総文祭に向けて練習を続けている。費用や時間の関係で、沖縄の吹奏楽部が県外に出ていくことは簡単ではない。総文祭はまたとないチャンスだ。 ユイーは言う。「県外の吹奏楽部の演奏を一度も聴いたことがないんです。総文祭では全国から集まってくるレベルの高いバンドの音楽づくりや響きをたくさん聴いて、吸収したい。その上で、沖縄に帰って自分たちなりのサウンドをつくっていきたいです」 もちろん、ただ他校から学ぶだけでなく、自分たちの演奏でもインパクトを与えたい。その点、沖縄独自の豊かな音楽文化を伝えることができる《五つの沖縄民謡による組曲》はうってつけだ。 ユイーは沖縄の伝統楽器・三線(さんしん)を弾いて民謡を歌うことができる。「おじいちゃんが三線の先生だったんです。私と違って部員の中には三線に触れたことがない子も多いですが、民謡は自然と体に染みついているものなので、それを吹奏楽で表現していけたらいいなと思っています」 ただ、総文祭の前、7月下旬には吹奏楽コンクールの県大会もある。自由曲として選んだのは、難曲として知られるジェフリー・ローレンス作曲《エルフゲンの叫び》だ。 ナナミーやユイーたちが目標として掲げているのは、県大会を突破し、九州大会で金賞を獲得すること。しかし、それは簡単なことではない。沖縄県代表は2枠しかなく、小禄高校の前には那覇高校やコザ高校、宮古高校など県内の強豪が立ちはだかっている。もし九州大会に出られたとしても、全国トップレベルのバンドが待ち構えている。 だが、ナナミーは目を輝かせながらこう言った。「以前は『どうせ無理だろう』と自分の限界を決めてしまっていましたが、亮先生がそれを変えてくれました。チャレンジ精神をもっと身につけ、自分たちなりの音楽を表現して、高い目標の実現に挑みたいです」 コンクール(大編成)は最大55人まで出られるが、小禄高校は1年生もすべて合わせて38人と不利だ。公立校ゆえに練習時間も限られ、楽器も古びている。だが、自分の限界を越えていこうとする若者たちの可能性は無限大だ。 ナナミーやユイーたちの視線は、真っ青な沖縄の海のずっと先に向いている。

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