eぶらあぼ 2024.8月号
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120頬につたふ〜日本のうたを歌う〜/青木洋也&高橋明日香&松本望ブルックナー:交響曲第9番&交響曲ヘ短調/マルクス・ポシュナー&リンツ・ブルックナー管モーニング&イヴニング/ファジル・サイシトコヴェツキによる「ゴルトベルク変奏曲」弦楽トリオ用の名編曲を、あえてヴァイオリンの代わりにコントラバスを加えて、5度下げたハ長調で弾く。下手をすれば珍盤になりかねない試みも、このベルリンのトップ楽団メンバーであれば、高水準かつ新発見の連続となる。やはり個人技の高さとアンサンブル力が格別。いつになく外声となるヴィオラとコントラバスの技巧性と安定感がカギとなるが、シュテーグナーとライネ、現役ベルリン・フィル人気奏者の匠の技で盤石の演奏に。ピッツィカートのみで奏でた変奏もあり、大きい楽器の響きの長さが活かされて効果的。(林 昌英)情景や心情を繊細に描き出した日本歌曲の世界に、カウンターテナー、リコーダー、そしてピアノによるトリオで新しい光を当てたディスクである。青木洋也の清らかな響きの声と巧みな言葉さばき、高橋明日香の凛とした音色、それらに寄り添う松本望の演奏が圧巻。また、異色の編成を実現した松本の編曲も注目すべきである。編曲者自身は「シンプルなアレンジ」と述べているが、絶妙な音の配置により、各曲の世界観がより鮮やかに聞こえてくる。特に技巧の凝らされたリコーダーのオブリガートが楽しめる「朝だ元気で」は必聴。   (長井進之介)生誕200年を迎えたブルックナーによる交響曲全11曲、異稿も含めた18バージョンを録音する大型プロジェクト。その最終リリースとなるこのアルバムでは最初と最後の交響曲(ともに異稿はなし)を収録、無事完走を迎えることに。ポシュナーの演奏はスマートな語り口でバランスを整えつつも、同時にオーケストラのローカルさを引き出してくれる。テンポの揺らし方も独特で、第9番では神がかった荘厳さよりも、素朴で人間味あふれる姿を映しだす。一方、交響曲ヘ短調の演奏から立ち現れるのは、あたかもシューマンのスタイルを受け継いだような若々しいブルックナーだ。(鈴木淳史)作曲家としても活躍し、その出自から刺激的な音楽性を持つ“鬼才”ピアニストによる話題のコンセプト・アルバムが、配信を経てスタイリッシュなフィジカル2枚組で登場。「朝」盤はバロックや古典派以前を中心に構成され、18世紀フランスの爽やかなカッコウのさえずりからエネルギッシュな自作曲まで実に多彩。しかも意外とエモーショナルでロマンティック。一方の「夕べ」盤は夜想曲からセレナーデ、子守歌に「トロイメライ」や「月の光」「グノシエンヌ」と定番系が見事だが、ワーグナー「イゾルデの愛の死」でカタルシスを感じラヴェル「ソナチネ」に浄化されるのも素敵だ。(東端哲也)Phil.harmonie/東京エムプラスXPHIL 06042 ¥3300(税込)髙田三郎:啄木短歌集/小田進吾(松本望編):山は呼ぶ 野は呼ぶ 海は呼ぶ、朝/飯田信夫(松本編):朝だ元気で/江口夜詩(松本編):心のふるさと/信時潔:沙羅/瀧廉太郎(松本編):荒城の月 他青木洋也(カウンターテナー)高橋明日香(リコーダー)松本望(ピアノ)ブルックナー:交響曲第9番、交響曲ヘ短調マルクス・ポシュナー(指揮)リンツ・ブルックナー管弦楽団Capriccio/ナクソス・ジャパンNYCX-10477(2枚組) ¥2970(税込)ダカン:かっこう/モーツァルト:幻想曲第3番/ファジル・サイ:イスタンブールの冬の朝/サティ:グノシエンヌ第1番/ドビュッシー:月の光/ワーグナー(リスト編):イゾルデの愛の死/ラヴェル:ソナチネ/ショパン:子守歌/シューマン:トロイメライ 他ファジル・サイ(ピアノ)録音研究室(レック・ラボ)NIKU-9061 ¥3080(税込)ワーナーミュージック・ジャパン5419.793607(2枚組) ¥オープン価格CDCDCDCDJ.S.バッハ:ゴルトベルク変奏曲/マルティン・シュテーグナー&タネリ・トゥルネン&エスコ・ライネJ.S.バッハ(D.シトコヴェツキ&M.シュテーグナー編):ゴルトベルク変奏曲(ヴィオラ、チェロ&コントラバス三重奏版)マルティン・シュテーグナー(ヴィオラ)タネリ・トゥルネン(チェロ)エスコ・ライネ(コントラバス)

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