118ベートーヴェン:交響曲第9番「合唱」/ヤン・ヴィレム・デ・フリーント&読響メンデルスゾーン 無言歌集/徳江陽子デュオ〜ウィーン・プログラムへの誘い〜/福田進一&E.フェルナンデス細川俊夫:明暗〜サクソフォン作品集/大石将紀学究肌のデ・フリーントらしくHIP(歴史的情報に基づいた演奏)を意識し、ピリオド奏法をモダン楽器に適用した興味深い演奏である。弦楽器の規模を縮小したオーケストラによる演奏で何より驚かされるのは、室内楽的な明晰さであろう。空虚5度で始まる1楽章冒頭は作為的なスケールに拡大されることなく、4楽章冒頭でも轟音が強調されることはない。常に客観的で等身大の音楽が描かれており、新たな作品像をも予感させる。またエディションを読み解くデ・フリーントの姿勢が伝わってくる自身のエッセイを始め、解説、シラーの詩の対訳などブックレットが充実していることも特筆に値する。(大津 聡)かくも温かく、詩情にあふれ、心に沁みるメンデルスゾーン「無言歌集」の録音があっただろうか。徳江陽子が邦人初の全曲録音CD2枚組をリリースした。徳江はリサイタルのほか大使館や慈善事業のための公演で、多くの聴衆の感動と信頼を集めてきたピアニスト。2023年2月から1年がかりで曲集の全48作品を大切に収録してきた。ロマン派性格小品らしい情景を丁寧に伝える演奏である。切なさや陰り、輝きや夢見心地といった世界観を、声部ごとの立体感、ハーモニーの色合いを際立たせながら、柔らかなタッチで描いてみせる。「無言歌集」録音のマスターピースと言えるアルバムだ。(飯田有抄)福田進一とウルグアイ出身のE.フェルナンデスは、デュオを組んで約30年。本盤はウィーンゆかりの作品を集めたもの。シューベルトの若書きの弦楽四重奏曲からの編曲は、不穏な始まりで、それでも歌に溢れている。展開部の転調やひそやかな佇まいも特徴的だ。終楽章の舞曲では、素朴な踊りが果てしなく続く。一体何処に行き着くのか。ハイドンからの編曲も面白い。冒頭は対話が楽しい豊かな音楽だ。その中に意外に切実な響きも潜む。終曲はフーガ風のポリフォニーが2本のギターで存分に味わえる。ジュリアーニの協奏風変奏曲は、福田らのスピード感ある切れ味と華麗な響きが耳の愉悦となる。(横原千史)収録作品5作のうち「3つのエッセイ」「弧のうた」はオーボエからの編曲版。大石は原曲にサクソフォンの官能性、妖しい色気を加味し、楽曲が肉感的な存在感を増していることに気づく。そこを入口とすると細川のこの楽器に対する考えがみえてくる。「明暗」は天界や聖なるものを象徴する笙の透明な響きが、サクソフォンが吐露する俗世の煩悩を浄化していく。「3つの愛のうた」では和泉式部の和歌を歌うソプラノにサクソフォンが寄り添う。作曲時期が少し前の「ヴァーティカル・タイム・スタディ」II は作風もやや異なり、激しい情念を燃え上がらせる。演奏はどれも作品への深い理解に裏打ちされている。(江藤光紀)コジマ録音ALCD-9266,9267(2枚組) ¥4070(税込)マイスター・ミュージックMM-4531 ¥3520(税込)ベートーヴェン:交響曲第9番「合唱」ヤン・ヴィレム・デ・フリーント(指揮)読売日本交響楽団森谷真理(ソプラノ) 山下裕賀(メゾソプラノ) アルヴァロ・ザンブラーノ(テノール) 加藤宏隆(バス)新国立劇場合唱団収録:2023年12月、東京芸術劇場 コンサートホール(ライブ)オクタヴィア・レコードOVCL-00844 ¥3850(税込)メンデルスゾーン:無言歌 第1集〜第8集徳江陽子(ピアノ)シューベルト(J.ブリーム編):デュオ イ短調(原曲:弦楽四重奏曲第9番)/ジュリアーニ:3つの協奏風ポロネーズ、協奏風変奏曲/ハイドン(E.フェルナンデス編):デュオ ホ短調(原曲:弦楽四重奏曲第43番)福田進一 エドゥアルド・フェルナンデス(以上ギター)細川俊夫:「3つのエッセイ」、「明暗」、「3つの愛のうた」、「弧のうた」、「ヴァーティカル・タイム・スタディ」II大石将紀(ソプラノ/テナー/アルト・サクソフォン)宮田まゆみ(笙) イルゼ・エーレンス(ソプラノ) 吉野直子(ハープ) 大宅さおり(ピアノ) 葛西友子(パーカッション)KAIROS/東京エムプラス0022040 KAI ¥3090(税込)SACDCDCDCD
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