eぶらあぼ 2024.8月号
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116ブラームス:ヴァイオリン・ソナタ全集/辻彩奈&阪田知樹パス・オブ・ディスカバリー/Bach Artists Japan 匠モーツァルト:ピアノ協奏曲第25番&第27番 他/ロバート・レヴィン&アカデミー・オヴ・エンシェント・ミュージック辻彩奈と阪田知樹という今をときめくフレッシュな組み合わせ。辻のヴァイオリンはイントネーションが清潔で、旋律の歌い回しに気品があり、とても美しい。第1番冒頭楽章の2つの主題がのびやかに歌い始められてきれい。展開部では阪田のピアノとのせめぎ合いが聴かせる。アルペジオの激しいやり取りに鬼気迫るものがある。アダージョの旋律にも内面性が感じられる。第2番の主題提示は阪田の奥行きのある表現が聴きもの。中間楽章の緩急の交替も、くっきりと印象付けられる。第3番はしみじみとした歌がいい。終楽章のぶつけるような熱い高揚も素晴らしい。味わい深いブラームス全集だ。(横原千史)トランペットのトップブランド「バック」を愛奏する在京楽団等の名手5名が組んだアンサンブルのCD第2弾。20世紀以降のオリジナル作品が9曲(三・四重奏も交えた構成が変化をもたらしている)収録された、テクニカルでモダンなアルバムだ。華麗で均質な音色による一糸乱れぬ演奏が次々に繰り出される様は、スポーツ的な爽快感に溢れており、どの曲もあまりの鮮やかさに感嘆しきり。とびきり難度の高いプログの「コントラスツ」は特に聴きものと言っていい。5人の妙技と完璧なアンサンブルを通して、トランペットの魅力を存分に堪能できる好ディスク。  (柴田克彦)ドイツ・グラモフォンの歴史において、日本人作曲家の交響曲録音(しかも自作自演)はこれが初めてではないか。映画音楽でまず世界に知られた久石譲だが、あらためて大規模管弦楽曲における力量を知らしめることになろう。ミニマル基調で多彩な管弦楽のパレットを駆使し、変容と変化を巧みに織り込みながら3楽章、40分近い大曲を一気に聴かせる。タメスティをヴィオラに迎えた「Viola Saga」共々、安易な物語性に依拠しない一方、映像的喚起力で魅了する。久石譲がロータ、モリコーネ、ウィリアムズに続く、映画と強く結びついた現代の交響楽作曲家の巨匠であることを、証明する一枚。(矢澤孝樹)モーツァルト演奏・研究の第一人者であるロバート・レヴィンと、2023/24シーズンに創設50周年を迎えたアカデミー・オヴ・エンシェント・ミュージック(AAM)は、1993年にモーツァルトのピアノ協奏曲全集プロジェクトをスタートした。その最終巻となる13枚目のアルバムが遂にリリースとなった。曲は後期作品の華やかな第25番と第27番、両者の間にはチャーミングなコンサート・アリア K.505を収める。ヴァルターをモデルとしたレプリカによる滑舌の良いレヴィンのフォルテピアノと、生き生きと精緻に奏でるAAMの対話が実に鮮やかであり、透明感のある響きが魅力的な完結盤である。(飯田有抄)ブラームス:ヴァイオリン・ソナタ第1番〜第3番/パラディス:シチリアーノ辻彩奈(ヴァイオリン)阪田知樹(ピアノ)プライス:イントラーダ・ドラマティカ/モラレス:X1、パス・オブ・ディスカバリー/プログ:コントラスツ/ブリテン:聖エドモンズベリーのためのファンファーレ/デュボワ:5つのバガテル/ノーレ:カクテル 他Bach Artists Japan 匠【安藤友樹 井上圭 佐藤友紀 長谷川智之 尹千浩(以上トランペット)】久石譲:Symphony No.2、Viola Saga久石譲(指揮)ウィーン交響楽団アントワン・タメスティ(ヴィオラ)モーツァルト:ピアノ協奏曲第25番、同第27番、レチタティーヴォとアリア(ロンド)「どうしてあなたを忘れられるでしょう? ̶心配しないで、愛する人よ」 K.505ロバート・レヴィン(フォルテピアノ)リチャード・エガー(指揮) アカデミー・オヴ・エンシェント・ミュージックルイーズ・オルダー(ソプラノ)AAM Records/ナクソス・ジャパンNYCX-10475 ¥3300(税込)ソニーミュージックSICX 10021 ¥3300(税込)妙音舎MYCL-00016 ¥3410(税込)ドイツ・グラモフォンUMCK-1762 ¥3300(税込)SACDCDCDCDJoe Hisaishi in Vienna/久石譲

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