eぶらあぼ 2024.7月号
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第50回 日本フィル 夏休みコンサート2024“選べる”ワクワクのプログラムで特別な夏の思い出を!7/19(金)19:00 兵庫/西神中央ホール7/21(日)14:00 広島/はつかいち文化ホール ウッドワンさくらぴあ問 MCSヤング・アーティスツ mticket@mcsya.org https://mcsya.org7/29(月)19:00 北とぴあ さくらホール問 北区文化振興財団03-5390-1221 https://kitabunka.or.jp7/19(金)~8/6(火) 東京・千葉・神奈川・埼玉・京都問 日本フィル・サービスセンター03-5378-5911https://japanphil.or.jp/summerconcert2024※各公演の詳細は上記ウェブサイトでご確認ください。64 娘の幼稚園時代、とくにクラシック・ファンではないママ友から「一緒に行かない?」と渡されたのが日本フィルの夏休みコンサートのチラシだった。子ども向けのコンサートは数あれど、今年で50回目を迎える日本フィルの夏休みコンサートには老舗の安心感がある。会場に入った瞬間のあたたかい雰囲気やロビーでのウェルカム・コンサートから、長年にわたって子どもたちの心に音楽の種を蒔いてきた日本フィルならではのホスピタリティを感じるのだ。 今年は50回目とあって、例年にもましてスペシャルな企画が盛り込まれている。まず第1部は、作曲家の信長貴富への委嘱作品「『音楽のとびら』~管左より:梅田俊明 ©K.Miura/スターダンサーズ・バレエ団 ©Hasegawa Photo Pro./永峰大輔 ©N_IKEGAMI/上原彩子 ©武藤 章/江原陽子とができるので小さなお子さんにもおすすめ(7/19~7/31)。いっぽうの永峰大輔指揮、上原彩子による「わくわくピアノ」は、バッハからショパン、ドビュッシー、ガーシュウィン「ラプソディ・イン・ブルー」まで、バラエティ豊かな選曲でピアノの多彩な魅力を伝える(8/2~8/6)。 そして最後、第3部は江原陽子のナビゲートで「さんぽ」や「勇気100%」を歌って盛り上がろう! 親子三代でも楽しめる、夏休みの思い出作りにぜひ。弦楽のためのファンファーレ~」で幕を開ける。アンダーソン「舞踏会の美女」、エルガー「愛のあいさつ」、ホルスト「惑星」より〈木星〉といった誰もが知るメロディが続き、オーケストラの色彩豊かな世界へと誘ってくれるだろう。 第2部は、日程によって「バレエ」か「ピアノ」を選べるプログラムになっている。梅田俊明指揮、スターダンサーズ・バレエ団による『くるみ割り人形』ハイライト版は、目と耳の両方で物語の世界に入るこ川口成彦 ©Shin Matsumotoが、シューベルトでは「あえて」モダン楽器を用いる。作品/楽器/演奏の多様な関係性を聴衆に感じてもらおうという仕掛けだ。ロドリーゴ「黄昏」という、聴く機会の少ない作品の演奏にも注目したい。川口はイベリア半島の鍵盤音楽を積極的に取り上げている。ヴィアチェスラフ・シェレポフ ©Y.Mustaeva 2016年のブルージュ国際古楽コンクールで最高位を分け合った二人のデュオがいかなる化学反応を起こすか。間に挿入される二人のソロ曲もショパンやグリンカなど楽しみなものばかりで、しかも3ヵ所で曲目は微妙に違う。これは3回とも聴くしかない!文:原 典子文:矢澤孝樹川口成彦 & V.シェレポフ 不滅のフォルテピアノ 華麗なる鍵盤の世界コンクールで最高位を分かちあった戦友とともに フォルテピアノやチェンバロなど、ピリオド楽器演奏が「正統性」をめぐる議論の中にあったのは昔の話。今や、モダン楽器、ピリオド楽器それぞれの良さが評価され、受容される「多様性」の時代だ。日本では小倉貴久子、平井千絵、七條恵子はじめ優れたフォルテピアノ奏者が輩出しているが、川口成彦もまた、鋭敏な感性と柔軟な発想で私たちを魅了する。 この7月に川口が企画するのはヴィアチェスラフ・シェレポフとの鍵盤デュオ。ひとつの演奏会の中で、フォルテピアノとモダン・ピアノが曲に応じて弾き分けられる。演奏会は兵庫、広島、東京と3ヵ所で行われるが、核をなす連弾作品はフォルテピアノでのモーツァルトとクレメンティ、モダン・ピアノでのシューベルト「幻想曲」およびロドリーゴの「黄昏」。モーツァルトとクレメンティ、およびロドリーゴは作品が生まれた時代に対応した楽器が用いられる

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