eぶらあぼ 2024.7月号
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文:林 昌英 三浦文彰指揮のオーケストラ公演は、ARKで最も独自の公演といえるかもしれない。ヴァイオリニストとして他公演でもソロを担当しながら、指揮者としても2公演に出演する三浦。ARKでの指揮はもう5年だが、弾き振りはもちろんのこと、指揮に専念したときの演奏の見事さは特筆しておきたい。楽員の自主性と表現意欲を引き出しつつ、バランスも音楽の流れも的確にコントロール、演奏には熱気と瑞々しさがあふれるのである。 今年からオーケストラ名が変わることも注目。前回までは室内オーケストラ「ARKシンフォニエッタ」だったが、編成を拡大して名称を「ARK PHILHARMONIC」(ARKフィル)に変更。贅沢なメンバーがそろうことは変わらず、これまで以上に常設楽団と遜色ない水準の演奏を展開してくれるはず。 大ホールでの2公演は意欲的な内容。9月28日夕方「ARK PHILHARMONIC 1」は、辻井とのモーツァルトのピアノ協奏曲第21番ハ長調と、清水和音とのベートーヴェンのピアノ協奏曲第3番ハ短調。辻井の美音で楽しむモーツァルト、巨匠の清水のストイックながら豊潤なベートーヴェンに期待がつのる。メインはベートーヴェンの交響曲第5番ハ短調「運命」。指揮者にとって究極的な作品のひとつで、三浦がどのような指揮で熱く構築するのか。ハ調で構成された堂々たる古典プロにも意気込みが感じられる。 9月29日夕方「ARK PHILHARMONIC 2」は華麗かつ重厚な演目。まずモーツァルトのフルートとハープのための協奏曲ハ長調を日本の代表的名匠、高木綾子と吉野直子の典雅なソロで。そしてチャイコフスキーのピアノ協奏曲第1番を辻井のテクニックで熱く楽しむ。メインはブラームスの交響曲第1番ARK PHILHARMONIC ©N.Ikegami30都心の街角が音楽で満たされる贅沢な5日間 夏が終わると「サントリーホール ARKクラシックス」の季節がやってくる。アークヒルズ界隈で開催される音楽祭「ARK Hills Music Week」のメインイベントが「ARKクラシックス」で、毎年秋の風物詩となっている。 アーティスティック・リーダーとして「ARKクラシックス」の顔となっているのが、ピアニスト辻井伸行とヴァイオリニスト三浦文彰。世界で活躍する彼らを中心に、内外トップクラスの音楽家たちが集い、今年は9月27日から10月1日までの5日間、全11公演が行われる。ソロ、アンサンブルからフルオーケストラまで、多彩な公演の聴きどころをご紹介。改称して新たな門出を飾るARKフィル

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