eぶらあぼ 2024.7月号
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121文:近松博郎ソプラノ歌手・中江早希のリサイタル。中江は20世紀ドイツを代表する作曲家ハンス・アイスラーの歌曲研究で東京藝術大学博士課程を修了し、在学中から高い評価を得ている。シューマンの名作から、ともに19世紀末に書かれたシェーンベルクとツェムリンスキーの作品へと至るドイツ語歌曲の系譜を、第一人者の演奏で辿る本公演は貴重だ。人気のフォルテピアノ奏者・川口成彦がピアノ伴奏を務めるのも注目される。パシフィックフィルハーモニア東京の7月定期には音楽監督の飯森範親が登場。聴きどころは、2019年のチャイコフスキー国際コンクールで第2位に輝いたマルク・マルク・ブシュコフブシュコフをソリスト©Nikolaj Lundに迎えてのヴァイオリン協奏曲、そしてF.リースの交響曲(日本初演)だろう。リースはベートーヴェンについての回想録を著した弟子として有名だが、作曲家としての評価が近年高まっている。師の序曲と並べて聴けるプログラム構成が心憎い。無伴奏ヴァイオリンの夕べ(11夜)古橋綾子(ヴァイオリン)7/4(木)19:00 高崎芸術劇場 音楽ホール7/11(木)18:30 古賀政男音楽博物館 けやきホール群馬交響楽団のヴァイオリン奏者・古橋綾子は2012年から「無伴奏ヴァイオリンの夕べ」を続ける。今回は馴染みの作曲家たちに加え、プラハ出身で戦争の犠牲となったシュルホフ(1894~1942)が取り上げられるのが目を引く。プラハ弦楽四重奏団第一奏者ノボトニーのもとで研鑽を積んだ古橋の解釈に注目だ。ウクライナ出身のミルシテインの作品では平和への祈りが高度な演奏技巧に託されることだろう。7/13(土)14:00 Hakuju Hall7/21(日)14:00 東京芸術劇場 コンサートホール中江早希(ソプラノ)パシフィックフィルハーモニア東京第167回 定期演奏会飯森範親 ©山岸 伸©Ayane Shindoクラシック、ジャズ、テクノ・ミュージックと垣根を越えた演奏で注目を集める新時代のピアニスト、フランチェスコ・トリスターノ。ジュリアード音楽院に学び、2004年にオルレアン20世紀音楽国際ピアノコンクールで優勝を飾った実力者だ。今回のプログラムでもお得意のバロックと現代の作品を自在に弾き分ける。自作曲「RSのためのアリア」は坂本龍一へのオマージュ。躍進著しい彼のいまをぜひ聴いておきたい。フランチェスコ・トリスターノ(ピアノ)橋本京子(ピアノ) &伊藤万桜(ヴァイオリン) デュオ7/15(月・祝)14:00 東京オペラシティ リサイタルホール演奏家にとって決定的な出会いというものが存在する。伊藤万桜の場合、カナダを拠点として長らく欧米中心に活躍する橋本京子との2015年の出会いがそうだったらしい。橋本伊藤万桜 ©井村重人が芸術監督を務めるドイツのキルヒベルク国際音楽祭への2度にわたる出演等を経て、交友10年目となる今年、両者の音楽作りが東京で結実する。典雅なモーツァルトから荒れ狂うバルトークまで、圧倒的信頼感に支えられた熱演を堪能したい。トウキョウ・ミタカ・フィルハーモニア第89回 定期演奏会7/27(土)15:00 三鷹市芸術文化センター 風のホールピアノの名手としても知られる指揮者・沼尻竜典の弾き振りが注目を集めるトウキョウ・ミタカ・フィルハーモニアの定期演奏会。今回はモーツァルトが弟子のプロイヤー嬢のために書いたとされる軽快なピアノ協奏曲第14番が取り上げられる。今年没後120年となるドヴォルザークの交響曲第7番は作曲者自身が「本格的なもの」と評しており、第8番や第9番より知名度は劣るが、濃厚な響きを味わえる作品だ。掲載している公演の最新情報は、それぞれの主催者のホームページなどでご確認ください。橋本京子©Marie Staggat沼尻竜典7/6(土)14:00 横浜/フィリアホール 月の7

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