108注目の才人シャニが、2018年から首席指揮者を務める主兵と録音した、第7番に続くブルックナー交響曲第2弾。これは、素朴・質朴なブル5ではなく、活力漲る大交響曲としての第5番だ。シャニが薫陶を受けたメータやバレンボイム、さらには多くを学んだカラヤン等の延長線上に位置する壮麗な音楽は、ある種のカタルシスや爽快さに満ちている。第1楽章の速い出だしから雄大な音楽が展開されるが、細やかさや見通しの良さにも事欠かない。近代オーケストラのメリットを活かしたこの演奏は、聴く者に第5番が有する華麗さやダイナミックさを再認識させる。 (柴田克彦)「荒木奏美 IN CONCERT」と題された当ディスクは、指揮者の大友直人が企画し、若手演奏家を紹介する「T-Shotシリーズ」の一環である。高崎芸術劇場の響きを生かした質の高い録音を特色とする。その第11弾には新進気鋭のオーボエ奏者、荒木奏美が登場。プログラムは古典派からロマン派を経て現代までと幅広いが、いずれの作品においても端正な演奏スタイルによって、各々の様式が的確に捉えられている。とりわけオーボエの大家ホリガーの妻で、ハープ奏者のウルスラの死を悼んだクルターグによる無伴奏作品「遠くからウルスラへの手紙」には荒木の豊かな想像力が感じられる。(大津 聡)夏目漱石のエッセイでも知られるラファエル・フォン・ケーベルは東京帝国大学で哲学を教える傍ら、藝大の前身・東京音楽学校で音楽も教えていた。このモスクワ音楽院卒の哲学者は、日本の近代学芸の恩人なのである。その遺品にあった9曲のドイツ・リートは弟子筋に引き継がれ出版されたが、どれもロマン派の基本を踏まえた趣のある佳作。山下牧子はこれらをメゾ用に移調した上で、連作と捉えてドラマティックな起伏をもって描いている。またケーベルに学んだ瀧廉太郎の歌曲も収録しており、ドイツ系教養人の教えの受容と変容からは、西洋に胸を開き始めた時代の気分が匂いたってくる。(江藤光紀)24歳の俊英、吉見友貴のデビュー盤。まず、ベートーヴェン「変奏曲」op.34で才能を感じさせる。主題の提示から、アゴーギクに思い入れがあり、単純なテーマを面白く聴かせる。変奏でも走句がきれいで、細かいデュナーミクが豊かな表情の変化を響かせる。葬送風の第5変奏にも小ドラマがある。リストのソナタは、アレグロからのスピードとエネルギー放出が半端でない。悪魔の高笑いが聴こえてくる。緩徐な中間部の抒情も爽やかだ。フーガ以降の畳み掛けと頂点の爆発も聴き応えがある。ブラームスの変奏曲は、機械的なようで、随所にこだわりが感じ取れ、味がある。ガーシュウィンの小品も洒落ている。(横原千史)J.S.バッハ(ブゾーニ編):われ汝に呼ばわる 主イエス・キリストよ/ベートーヴェン:創作主題による6つの変奏曲/ブラームス:パガニーニの主題による変奏曲 第1集/リスト:ピアノ・ソナタ ロ短調/ガーシュウィン(ワイルド編):7つの超絶技巧練習曲より吉見友貴(ピアノ)ブルックナー:交響曲第5番ラハフ・シャニ(指揮)ロッテルダム・フィルハーモニー管弦楽団ケーベル:9つの歌/瀧廉太郎:荒城の月、秋の月(山田耕筰編)、花山下牧子(メゾソプラノ)佐野隆哉(ピアノ)ワーナーミュージック・ジャパン5419.779201 ¥オープン価格オクタヴィア・レコードOVCC-00170 ¥3850(税込)妙音舎MYCL-00047 ¥3300(税込)日本コロムビアCOCQ-85625 ¥3500(税込)ブルックナー:交響曲第5番/ラハフ・シャニ&ロッテルダム・フィル高崎芸術劇場 大友直人 Presents T-Shotシリーズ vol.11 荒木奏美 IN CONCERTドヴィエンヌ:ソナタ第2番/R.シューマン:3つのロマンス/クルターグ:遠くからウルスラへの手紙/ドラニシニコワ:ポエム/パスクッリ:椿姫の楽しい思い出 他荒木奏美(オーボエ)秋元孝介(ピアノ)ラファエル・フォン・ケーベル:9つの歌 他/山下牧子&佐野隆哉リスト:ピアノ・ソナタ/吉見友貴CDSACDCDCD
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