48Interviewヤニック・ネゼ=セガン(メトロポリタン歌劇場音楽監督/指揮)■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ 世界最高峰のオペラハウス、メトロポリタン歌劇場(MET)の煌びやかなサウンドを司るMETオーケストラが6月、音楽監督のヤニック・ネゼ=セガンとともにやってくる。同公演は当初2022年に予定されていたが、コロナ禍で実現できず待望の日本公演となる。ネゼ=セガンは、カナダ出身の49歳。2018年に、43歳の若さでMETの音楽監督に就任した。ほかにも12年から名門、フィラデルフィア管弦楽団の音楽監督も務めるなど、世界的な活躍を続けている。今回のツアーではAとB、2つのプログラムが組まれた。 「《青ひげ公の城》は、バルトークの最高傑作のひとつ、ドラマティックであらゆる色彩のパレットの表現が要求される作品です。そしてバルトークは、ワーグナーの影響も受けていると思います。ですから、《さまよえるオランダ人》の序曲は、良い組み合わせだと考えます。ドビュッシーの《ペレアスとメリザンド》は、ミステリアスな物語のストーリーテリングにとても優れていて、バルトークへの準備としてうまく機能すると思います。 これらの作品には共通点があり、3人の作曲家も深く結びついています。ドビュッシーはワーグナーを強く拒絶していましたが、それはワーグナーの影響を強く受けていたからなのです。ですから、彼らはとても良い組み合わせになりますし、ふたりの作曲家がいなければ、バルトークは《青ひげ公の城》を作曲することはできなかったでしょう。 もう一方のプログラムに登場するジェシー・モンゴメリーは、アメリカ出身の優れた若手作曲家で、今や世界的に知名度を高めています。モーツァルトのアリアは、リセット・オロペサが歌ってくれることになりました。ツアーでは、少なくとも1つは声楽の要素を取り入れることが重要だと考えています。 またMETオーケストラは、オペラハウスのオーケストラという性質上、ブラームス、チャイコフスキーなど、交響曲の偉大な傑作を頻繁に演奏することはありません。だからこそ、それらを演奏するとき、何か違うものをもたらすと感じています。今回のマーラーの交響曲第5番も、まったく違うエネルギーがあります」 普段オペラハウスのピットで演奏しているオーケストラの強みについて、説得力を持って次のように語る。 「ワーグナーやヴェルディの大作を日常的に手がけている我々にとっては、このマーラーの5番のような長い曲を演奏するのも、何でもないことです。ですから私は、『ああ、最後の最後で少し疲れているかもしれないからペースダウンしなくてはいけない』と考える必要がありません。最後でも誰もが準備ができていて、まるで始まりのときと同じくらいフレッシュなのです。そして多くのオーケストラとマーラーを演奏した私の経験と彼らの経験が組み合わさることで、真に特別なものが生まれるのです」 13年ぶりとなる同楽団の来日公演だが、日本の聴衆にとってMETはライブビューイングという形で普段から接点を持っている。 「日本とは『METライブビューイング』を通じて大きな繋がりを持っています。しかし、ライブ演奏を行ってファンに会い、多様なプログラムを提供することも、とても重要です。現在のMETオーケストラは、ここ数年、新しいメンヤニック・ネゼ=セガン指揮 METオーケストラ来日公演20246/22(土)、6/23(日)各日15:00 兵庫県立芸術文化センター KOBELCO大ホール問 芸術文化センターチケットオフィス0798-68-02556/25(火)、6/26(水)、6/27(木)各日19:00 サントリーホール問 クラシック事務局0570-012-666https://www.met-japan-tour.jp※公演によりプログラムが異なります。詳細は上記ウェブサイトでご確認ください。バーがとりわけ増えたように思います。素晴らしい音楽家が加わりながらも、過去のクオリティを保ち、同時に以前とは違う響きも持っています。こういったことをこのツアーで披露できるのを、とても楽しみにしています」 オペラハウスのオーケストラらしく、ソリストもエリーナ・ガランチャ(メゾソプラノ)、クリスチャン・ヴァン・ホーン(バスバリトン)、リセット・オロペサ(ソプラノ)と一流の顔ぶれが揃う。海外旅行のハードルが高い今、このような来日公演の機会を有効に活かしたい。取材:小林伸太郎 文:編集部©George Etheredge
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