30 長らく世界で活躍してきた指揮者の小澤征爾が亡くなり、一つの時代の終わりを強く感じる一方、20代のクラウス・マケラが頭角を現し、一昨年、昨年と来日も果たすなど確実な世代交代も実感する昨今の音楽シーン。そんな中、現在屈指の若手のホープであり、その才能が世界中で賞賛されているイギリス人指揮者ロビン・ティチアーティが、コロナ禍前の2019年以来5年ぶりに来日する。1983年生まれのティチアーティは15歳で指揮活動を始めると2009年、26歳の若さでスコットランド室内管弦楽団の首席指揮者となり、14年からはイギリスの伝統あるグラインドボーン音楽祭の音楽監督を務め、17年にはベルリン・ドイツ交響楽団の音楽監督に就任するなど指揮者としては異例の早熟ぶりを発揮してきた。手兵ベルリン・ドイツ響を率いた前回19年の初来日では、辻󠄀井伸行、服部百音、森麻季、反田恭平、吉野直子ら毎回異なる日本人の人気アーティストと共演するという贅沢、かつエンターテインメント性に富んだ企画であった。 あれから5年。今回はティチアーティの故国イギリスのロンドン・フィルハーモニー管弦楽団を引き連れての来日である。ロンドン・フィルは、まさにティチアーティを母国の期待の星として賞賛してきたイギリスを代表する一流オーケストラである。指揮者、オーケストラの双方に相当なモチベーションが生まれることは間違いないであろう。またベルリン・ドイツ響との初来日が東京公演に限定されていたのに対し、今回は東京の3公演に先立ち9月6日の浜松を皮切りに名古屋、大阪公演も組まれている。 今回のツアーで際立つのは大胆なプログラム構成ロビン・ティチアーティ ©Yuji Hori辻󠄀井伸行 ©Yuji Hori文:大津 聡である。全公演は4つのプログラムからなるが、内訳をみるとマーラーの交響曲第5番を含むプログラムA以外の3つのプログラムは、ベートーヴェンの「エグモント」序曲、ピアノ協奏曲第3番と第5番「皇帝」、交響曲第3番「英雄」の中から構成されており、今回はベートーヴェンで勝負するという指揮者のはっきりとした意思が感じ取れる。一方、ロンドン・フィルには、かつてクラウス・テンシュテットがもたらしたマーラー演奏の優れた伝統があり、唯一第5番の交響曲が聴けるプログラムAにも興味が尽きない。 そしてツアー全日程に帯同し、全プログラムにおいて共演するのは辻󠄀井伸行。すでにワールドクラスの人気アーティストであるが、先日ドイツ・グラモフォンの専属アーティストとなることが発表されたばかり。グラモフォンは言わずと知れた名だたる演奏家を抱えてきた老舗レーベルであり、グローバル専属契約は日本人ピアニスト初の快挙である。新進気鋭の指揮者ティチアーティと名門ロンドン・フィルによるベートーヴェンとマーラー、そして新たな栄誉を獲得したばかりの辻󠄀井との共演と、いずれも聴き逃せない。9/6(金)19:00 アクトシティ浜松(浜松市文化振興財団053-451-1114) 5/19(日)発売9/7(土)14:00 愛知県芸術劇場コンサートホール(東海テレビチケットセンター052-951-9104)9/8(日)14:00 大阪/フェスティバルホール(ABCチケットインフォメーション06-6453-6000)9/10(火)14:00、9/11(水)19:00、9/12(木)19:00 サントリーホール(チケットスペース03-3234-9999)https://avex.jp/classics/lpo2024/※公演によりプログラムは異なります。詳細は上記ウェブサイトでご確認ください。欧州で引く手数多の指揮者が英国の名門オケを率いて5年ぶりの来日!ロビン・ティチアーティ(指揮) ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団 辻󠄀井伸行(ピアノ)
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