eぶらあぼ 2024.5月号
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5/2(木)19:00 三鷹市芸術文化センター 風のホール問 テレビマンユニオン03-6418-8617 https://www.tvumd.com57Interview海野幹雄(チェロ)新たなテーマを携えて、委嘱作品を含む豪華なプログラムを準備取材・文:片桐卓也 チェリストの海野幹雄は2008年から継続してリサイタルを開催している。特に2018年からはブリテンの無伴奏チェロ組曲3曲を3年間にわたってプログラミングし、それ以降は様々な周年となる作曲家を特集するなど、チェロのための作品を系統的に紹介してきた。そして今年も5月26日に「チェロ・リサイタル2024」が開催される。 「今年のテーマは〈西洋と東洋の融合 Vol.1 ドイツと日本〉としました。実は、このアイディアのきっかけとなったのは、2022年に大先輩である堤剛さんの80歳記念コンサートがサントリーホールで開催された時に招かれて、武満徹さんの『オリオン』を演奏させていただいた経験からでした。日本人として音楽活動をしていく上で、やはり日本人の作品を紹介していかなければという想いは以前からあったのですが、『オリオン』の演奏を通してその想いがさらに強くなり、日本と西洋の作品を合わせたプログラミングができないかと模索していました。それが今年、実現します」 ファニー・メンデルスゾーンの幻想曲から始まり、武満徹の「オリオン」、土田豊貴へ委嘱した新作である無伴奏チェロのための作品、J.S.バッハの無伴奏ニウクに至っては複数の鍵盤楽器を駆使、エレクトリック・ピアノでそれ以前の音楽を弾いたりもする。2人の時代様式への対応力と即興演奏の力が、異なる時代の音楽同士を架橋し、「新しい音楽」を創り出すのだ。すでにバッハの共演ディスクがあり、2022年「東京・春・音楽祭」で伝説的な共演を披露している2人の、さらに進化/深化した「ビヨンド・コガク」に期待しよう!チェロ組曲第1番、シューマンの「アダージョとアレグロ」、そしてメンデルスゾーンのチェロ・ソナタ第2番という興味深いプログラムだ。 「バッハに関しては、ジョヴァンニ・ソッリマとの出会いからガット弦を使っての演奏にトライし始めたことが、今回のプログラムに繋がっています。ガット弦を使うことによって得られる新しい演奏法のアイディアなどは、コロナ禍の時間の中でいろいろと試すことができたので、その発見を演奏に活かしたいと思っています」 ドイツ・ロマン派の作品もメンデルスゾーン姉弟を中心に魅力的なものだ。 「あまり知られていない、演奏されていない作品を取り上げたいという気持ちはやはり強く、今回はファニー・メンデルスゾーンの作品を入れてみました。弟の陰に隠れがちですが、姉であるファニーも素晴らしい作曲家であったことを紹介したいと思います。シューマンの『アダージョとアレグロ』は実は第1回のリサイタルで取り上げた作品海野幹雄チェロ・リサイタル2024西洋と東洋の融合 Vol.1 〜ドイツと日本〜 5/26(日)14:00 サントリーホール ブルーローズ(小)問 新演コンサート03-6384-2498 http://www.shin-en.jp左:アンソニー・ロマニウク 右:柴田俊幸 ©sightwaysですが、それから年月が経って、改めて皆さんの前で披露した時に、僕自身の演奏がどう変化したのかも知っていただきたく、今回のプログラムに入れました。ぜひ楽しんでもらいたいです」 ピアノは海野春絵。手応えのあるリサイタルになりそうな予感がする。文:矢澤孝樹©塩澤秀樹柴田俊幸 & アンソニー・ロマニウク デュオ・リサイタル「違う、コガクじゃない」ボーダーレスに活躍するデュオの“驚演”がふたたび! 「違う、コガクじゃない」―柴田俊幸とアンソニー・ロマニウクのデュオ・リサイタル、刺激的なタイトルだ。「コガク」は「古楽」だが、「古典派以前の音楽」「古楽演奏」の限定的な印象をカタカナ表記で軽く皮肉り、超えてゆく意志を示す。 何しろ中世からダウランド、バッハ、リゲティ、チック・コリア等々を駆け抜ける内容だ。2人の楽器はフラウト・トラヴェルソと(主に)チェンバロという「バロック時代のピリオド楽器」だが、そこに限定せず幅広い時代の音楽を演奏し、それぞれから未知の表情を引き出す。ロマ

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