eぶらあぼ 2024.5月号
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第656回 定期演奏会〈トリフォニーホール・シリーズ〉 5/18(土)14:00 すみだトリフォニーホール〈サントリーホール・シリーズ〉 5/19(日)14:00 サントリーホール問 新日本フィル・チケットボックス03-5610-3815 https://www.njp.or.jp7/5(金)19:00 トッパンホール 4/22(月)発売問 パシフィック・コンサート・マネジメント03-3552-3831 http://www.pacific-concert.co.jp54ように演奏するべき作品だと思います」と語っていた。常にドイツ音楽を中心としてきた小泉の作り上げる豊麗な第8番。いまこそ体験しておきたい。 もう一つのシンフォニーは、チャイコフスキー第4番。「運命の動機」と呼ばれる象徴的なモティーフで始まり、重厚な音響と心を捉えるメロディが展開し、最後は異様なまでの高揚感で終わる。小泉の得意演目でもあり、これまでも各地で本作を取り上げて成功を収めてきた。西曲を演奏する。20世紀の作品や室内楽の演奏で冴えを見せているシュテッケルだが、C.P.E.バッハのチェロ協奏曲にも取り組むなど、幅広い関心を持つチェリストであることが興味深い。様々な演奏体験のなかから獲得した視点で、チェリストにとっての原点とも言うべきバッハの無伴奏をどう見るのか、そして私たちにそれをどう伝えてくれるか。現在のヨーロッパで生きるアーティストの「古典」への接し方にも注目して聴きたいコンサートである。小泉和裕 ©Ivan Malý欧的語法のなかにロシア民謡も現れる本作の底知れないエネルギー、深淵なメッセージまで伝わるような名演を期待してやまない。©Marco Borggreve文:林 昌英文:片桐卓也小泉和裕(指揮) 新日本フィルハーモニー交響楽団前進し続けるマエストロが導く傑作2選の重厚な響き 日本の誇る名匠のひとりである小泉和裕の活動が、改めて注目されている。長く国内各地の楽団で重要ポストに就いてきた小泉が、この3月まで務め上げた九響音楽監督の仕事が一区切りしたことで、関わってきた楽団それぞれと新たな高みを目指すステージに入ったのである。先日マエストロへのインタビュー機会があったが、「みなさんの期待に応えていけるように、自分にプレッシャーをかけて、歳を重ねてもまだまだ変化していきたい」と新たな意欲がみなぎっていた。 5月には新日本フィルの定期に登壇。取り上げるのは2つの交響曲。まず、「音楽家のバイブル」と語るベートーヴェンから第8番。9曲中もっとも軽快な曲とみなされがちだが、小泉が学んでいたカラヤンとベルリン・フィルによる第8番が「16型のフルオーケストラで、それはもうものすごい音でした。本当に立派な音楽であり、そのユリアン・シュテッケル 無伴奏バッハ・チェロ・リサイタルドイツの実力派チェリストが“聖典”3曲で魅せる 1982年、ドイツ生まれ。数々の国際的コンクールで入賞を重ね、2010年にミュンヘン国際音楽コンクールのチェロ部門で優勝したユリアン・シュテッケルが、トッパンホールで待望の無伴奏のリサイタルを開く。ボリス・ペルガメンシコフ、ハインリヒ・シフなどに師事、そしてアンティエ・ヴァイトハースからも薫陶を受けながら共演を重ねるなど、実力派として注目のチェリストである。これまでも、ヨーロッパの一流オーケストラはもちろんのこと、室内楽でもテツラフ、エーベルレ、タメスティ、レオンスカヤ、エベーヌ弦楽四重奏団らと共演し、多彩な活動歴を誇っている。現在はミュンヘン音楽演劇大学教授である。また録音にも積極的で、20世紀に書かれたチェロ協奏曲集、ヴァイトハースらと共演したコダーイの作品集など、注目盤を次々とリリースしている。 今回のリサイタルではJ.S.バッハの無伴奏チェロ組曲から第3、第4、第6番の3

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