eぶらあぼ 2024.5月号
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第255回 芸劇シリーズ 6/2(日)14:00 東京芸術劇場 コンサートホール問 日本フィル・サービスセンター03-5378-5911 https://japanphil.or.jp7/18(木)15:00 19:30 Hakuju Hall 4/20(土)発売問 Hakuju Hall チケットセンター 03-5478-8700 https://hakujuhall.jp第172回 リクライニング・コンサート レグルス・クァルテット若手の代表格、4人の妙技に寛ぐ60分 Hakuju Hallの「リクライニング・コンサート」に、レグルス・クァルテットが登場する。2020年2月の「プロジェクトQ」のために結成された若い団体だが、早い段階から驚くほど卓越した演奏を聴かせていて、国内若手四重奏団の旗手と目される存在。レグルスのメンバーはソリスト出演やオーケストラ所属など、各自が多彩な活動で幅を広げて、積み重ねた経験を四重奏に集約させている。その経験が成熟につながってきたタイミングで、コアな室内楽ファンに留まらず幅広い層の聴衆が集う、約60分、1日2公演の「リクライニング」出演が実現する。 注目の舞台に選ばれた演目は、 4人中3人出身の桐朋学園大学のメソッドを象徴する名曲、モーツァルトのディヴェルティメント K.136。ハイドンの到達した深遠な美を誇る一篇、第79番 op.76-5「ラルゴ」第2楽章。若きウェーベルンの愛の情感あふれる甘美な「緩53徐楽章」。メンデルスゾーンが最愛の姉を亡くし、自らの晩年期ともなる時期の作で、彼としては異例の暗い情念に満ちた第6番ヘ短調。レグルスの特長が存分に表せるであろう、古典性とロマンあふれる名品が並ぶ。 卓越した技量と深い低音で万全のバランスを作るチェロの矢部優典。表に裏に支えつつ絶妙なひらめきを見せるヴィオラの山本周。そして、いずれも内外のコンクール入賞を重ねる名手で、手堅さと華やかさを兼備したヴァイオリンの吉江美桜とカーチュン・ウォン ©Ayane Satoぐったかと思えば、現代音楽風にはじけるところもあり、最後は祝祭的に高調して締めくくられる。そして彼の名を世界に広めた映画音楽からは、『ラスト・エンペラー』のメインテーマ。坂本ワールドを満喫できるラインナップだ。 プログラムにはドビュッシーの「夜想左より:山本 周、東條太河、吉江美桜、矢部優典 ©平舘 平東條太河。メンバーそれぞれの魅力と、4人としての高い実力が、理想的な会場で示される好機となる。文:江藤光紀文:林 昌英遠藤千晶曲」、武満徹の「波の盆」組曲より〈フィナーレ〉も織り込まれている。武満はドビュッシーから影響を受けたことで知られるが、そのラインに坂本を置いたらどんな音楽史的な景色が見えてくるかという問いかけが含まれているのではないか(監修:小沼純一)。カーチュン・ウォン(指揮) 日本フィルハーモニー交響楽団邦人作品の熱演を重ねるマエストロが紡ぐ「坂本龍一ワールド」 邦人作曲家に積極的に取り組む日本フィル首席指揮者のカーチュン・ウォン。これまでもっぱら日本人指揮者の取り上げてきた作品を、インターナショナルな視点から解釈し話題を呼んでいるが、6月の芸劇シリーズでは昨年71歳で亡くなった坂本龍一にフォーカスしたプログラムで登場する。 「箏とオーケストラのための協奏曲」は、箏の新作を積極的に委嘱しレパートリーを開拓してきた沢井一恵と佐渡裕&兵庫芸術文化センター管によって2010年に初演された。春夏秋冬のシーンを美しく描き出す管弦楽に、箏のつまびく音が木の葉のように舞う。今回独奏を務めるのは日本フィルともたびたび共演のある遠藤千晶。「地中海のテーマ」は1992年のバルセロナオリンピックの開会式のために書かれた20分ほどの作品。躍動感のあるビートに乗ったワールド・ミュージック風に始まり、アンビエント風のメロディーが心地よく耳をくす

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