eぶらあぼ 2024.5月号
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第266回 土曜マチネーシリーズ 5/25(土)第266回 日曜マチネーシリーズ 5/26(日)各日14:00 東京芸術劇場 コンサートホール問 読響チケットセンター0570-00-4390 https://yomikyo.or.jp6/18(火)19:00 東京芸術劇場 コンサートホール問 東京芸術劇場ボックスオフィス0570-010-296 https://www.geigeki.jp 39芸劇リサイタル・シリーズ「VS」Vol.9 務川慧悟 × ナターリア・ミルステインパリが引き合わせた俊英の初共演はストラヴィンスキーの三大バレエ文:宮本 明 務川慧悟が、東京芸術劇場のピアノ・デュオ・シリーズ「VS」にロシア系フランス人ピアニストのナターリア・ミルステインとともに登場する。ストラヴィンスキーの三大バレエ「春の祭典」「火の鳥」「ペトルーシュカ」を、いずれも2台ピアノで弾く、シリーズの本領発揮のプログラム。「ごまけない」というか、オーケストラの多彩な楽器の音色でオブラートに包まれていた作品の獰猛で鋭利な牙が、ピアノ版で聴くむき出しの骨格そのもののような響きによってあらわになるというのは、しばしば感じること。 務川が共演相手に選んだミルステインはヨーロッパでの所属事務所が同じで、彼女のプロコフィエフのCDを聴き、生き生きとした感性に感銘を受けて共演を申し出たという。ひと目惚れならぬひと聴き惚れ。ミルステインは1995年生まれ。祖父ヤコブ、父セルゲイもピアニストという音楽一族。今回が初来日とのことだが、父セルゲイユライ・ヴァルチュハ ©読響 撮影=藤本 崇な色彩感、そして艶やかにしてエキゾティックな旋律。並々ならぬ集中力と技巧で魅了する周防が作品のエッセンスを存分に引き出してくれるはずだ。 後半は、チャイコフスキーの交響曲第6番「悲愴」。前回の読響との共演では、スケール感があり、大きなうねりを務川慧悟 ©Yuji Uenoは神戸女学院大学の客員教授を務めていた時期もあるので、少女時代に遊びに来たぐらいはあるのかもしれない。2018年のデビューCD『プロコフィエフ/ラヴェル』で彼女は、「20世紀初頭は、紛争や社会学的な複雑さなど、周防亮介 ©JUNiCHIRO MATSUO伴ったマーラーの交響曲第9番を聴かせてくれたヴァルチュハ。チャイコフスキーが最後に書いた交響曲でも読響のポテンシャルを生かした重厚なサウンドを客席まで届けてくれるはずだ。死の恐怖まで吹き飛ばしてしまうようなダイナミックな「悲愴」を期待したい。ナターリア・ミルステイン ©Lyodoh Kaneko現在も続く数々の議論が生まれた時代。彼らの音楽は今なお身近で、私たちに歴史を語りかけてくる」と言っている。ストラヴィンスキーも生きた、第一次世界大戦やロシア革命の激動の時代の音楽が、彼女をひきつける。文:鈴木淳史ユライ・ヴァルチュハ(指揮) 読売日本交響楽団新首席客演指揮者がエネルギッシュに描く「悲愴」 2022年の読売日本交響楽団との初共演が高く評価され、今シーズンから同楽団の首席客演指揮者に就任したユライ・ヴァルチュハ。この5月、首席客演指揮者として初めて読響の指揮台に立つ。 1976年スロバキア生まれ。RAI国立交響楽団の首席指揮者、ナポリ・サンカルロ劇場の音楽監督を歴任し、2022-23シーズンからヒューストン交響楽団の音楽監督を務める。脚光を浴びつつある気鋭の指揮者だ。 今回、新しい首席客演指揮者が週末のマチネーシリーズで取り上げるのは、いわゆるロシア系プログラム。 一曲目のリャードフの「魔法にかけられた湖」は、幻想的な管弦楽曲。湖面に映された風景が揺らぎながら変化していくような、柔らかで繊細な音色表現を楽しみたい。 続くハチャトゥリアンのヴァイオリン協奏曲では周防亮介をソリストに迎える。コーカサスならではのきらびやか

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