eぶらあぼ 2024.5月号
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第546回日経ミューズサロン タマーシュ・ヴァルガ チェロ・リサイタル信頼のデュオで聴くブラームスのソナタと珠玉の小品集 ウィーン・フィルとベルリン・フィルを筆頭に、ドイツ=オーストリア圏の一流オーケストラは度重なるツアーを通じ、日本に数多くの「友人」を持つ。それは個々の楽員と一般ファンの交流だけでなく、日本人音楽家との親密な共演にも及ぶ。ウィーン・フィルの首席チェロ奏者、1969年ブダペスト生まれのタマーシュ・ヴァルガも日本のレコード会社カメラータ・トウキョウで多くのアルバムを制作、プロとアマチュアの別なく日本のオーケストラで協奏曲のソリストを務め、ピアニストの浅野真弓5/3(金・祝)、5/4(土・祝)各日14:00 サントリーホール6/7(金)、6/12(水)、6/14(金)各日13:306/15(土)、6/16(日)各日14:00東京オペラシティ コンサートホール問 ジャパン・アーツぴあ0570-00-1212 https://www.japanarts.co.jp/special/wsk/※プログラムは公演により異なります。全国ツアーの詳細は上記ウェブサイトでご確認ください。35をはじめとする日本人ソリストとの室内楽にも熱心に取り組んできた。 5月22日、日経ホールのヴァルガ&浅野デュオは演奏時間およそ30分に及ぶブラームスのチェロ・ソナタ第1番にシューマン、フォーレ、ドビュッシーらの小品を組み合わせた魅力的なメニュー。とりわけオッフェンバックとポッパー、自らがチェロの名手だった作曲家2人の作品は興味深い。5/22(水)18:30 日経ホール問 日経公演事務局03-5227-4227 https://stage.exhn.jp会でミサのラテン語がどのような発音で歌われていたのかを知るのに、彼らの歌唱は大いに参考になるはず。可愛らしいアイドル合唱団とだけ思っていたら、彼らの真価を見誤りかねない。 10歳から14歳まで約100人の少年合唱歌手たちがブルックナー組、ハイドン組、モーツァルト組、シューベルト組の4グループに分かれて活動しており、今年来日するのはシューベルト組。指揮は同組のカペルマイスターのオリヴァー・シュテッヒ。 「夢みる夜と魔法の世界」と銘打ったAプロは、夜そしてファンタジーの世界(5/3, 6/7, 6/14, 6/15)。〈人生のメリーゴーランド〉(ハウルの動く城)や〈君をのせて〉(天空の城ラピュタ)、〈星に願いを〉(ピノキオ)、さらには〈エーデルワイス〉〈ひとりぼっちの羊飼い〉(サウンド・オブ・ミュージック)など映画・ミュージカルの人気ナンバーもたっぷり。Bプロの「ウィーン少年合唱団と巡る四季」は「秋」「冬」「春」「夏」の4部構成で古今東西の季節の歌を次々に(5/4, 6/12, 6/16)。米津玄師〈パプリカ〉は聴きもの。Aプロでプーランク、Bプロでドビュッシーと、フランス音楽を歌うのも注目。タマーシュ・ヴァルガ ©Wilfried Hedenborg©www.lukasbeck.com文:池田卓夫文:宮本 明浅野真弓ウィーン少年合唱団日本に舞い降りる“天使たち” 今年もウィーン少年合唱団がやってくる。世界中で愛される「天使の歌声」は1955年に初来日。以来、ほぼ毎年来日しているから、親子三代にわたって毎年コンサートに通い続けている熱心な日本のファンもいるのでは。 前身の「宮廷少年聖歌隊」が第一次世界大戦後のオーストリア=ハンガリー帝国の崩壊とともに解散し、1924年に「ウィーン少年合唱団」として生まれ変わってから100年目の節目。おなじみのセーラー服のユニフォームもこの時に採用されたものだという。しかし彼らにとって100年前などというのは比較的最近の出来事で、その歴史は500年以上前までさかのぼる。 〈インスブルックよ、さようなら〉で知られるフランドル楽派のハインリヒ・イザークも仕えていた、ハプスブルク家の神聖ローマ皇帝マクシミリアン1世が、1498年6月に礼拝のための少年歌手6人を雇用したのが歴史の始まり。イタリアではレオナルド・ダ・ヴィンチが活躍した盛期ルネサンスの時代だ。その時代から日々の訓練と演奏を脈々と続けてきた蓄積は当然ながら重要で、いわばウィーン宮廷の500年の歴史が、彼らの伝統の中にタイムカプセルのように保存されているのだ。たとえば18~19世紀のモーツァルトやベートーヴェンの時代に、ウィーンの教

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