eぶらあぼ 2024.5月号
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SACDSACDCDCD118アランフエス/ティボー・ガルシアハイドン:交響曲集 Vol.23/飯森範親&日本センチュリー響チェンバロの旅 イタリア・バロック音楽150年の軌跡/平井み帆“子猫のミオとぼく” 朝岡真木子の歌曲を歌う/佐藤征一郎今年30歳を迎える、スペイン系のルーツを持つフランス生まれの俊英ギタリストの新譜。主軸となるのはロドリーゴによる不朽の名作と、セゴビアとの親交で知られるタンスマン(1897~1986)がルイ14世時代のド・ヴィゼー作品を新古典主義的響きでまとめた「王宮の音楽」という、ギターのための協奏曲2曲。その間を“アランフェス”の初演者である天才デ・ラ・マーサが民謡に基づいて書いた哀愁ただよう独奏曲4曲と、ド・ヴィゼーのオリジナルをガルシア自らギター独奏用に編曲した組曲が埋めるという選曲構成が絶妙。トゥールーズ・キャピトル管の好サポートも光る。(東端哲也)同指揮者とオーケストラによるハイドン交響曲全集録音も、当盤で23枚目、74曲を数える。ここまで積み重ねると、解釈や演奏法にはいささかのブレもなく、このコンビのハイドン像が確立されている。飯森はヴィブラート控えめのピュアトーンを定着させ、そこに濃密さやスパイスを加えて、鮮烈かつ有機的な好演を実現。推進力ゆたかな快速楽章、清澄で気高さをも湛える緩徐楽章など、安定の高水準だし、各曲に散りばめられた仕掛けやユーモアも自ずと生きる。「火事」フィナーレのホルン高音の高打率(!)はライブとは思えぬほど。各曲の出演者一覧もすばらしいアイディア。(林 昌英)イタリアの声楽や弦楽器と聞けば、甘美な音色でたっぷり歌うイメージだ。では鍵盤楽器なら? 当盤収録のバロック期の作品を聴けばよくわかる。17世紀のルッツァスキから18世紀中葉のパラディエスやD.スカルラッティまで、とにかく情念が濃い。半音階、不協和音、思いがけぬ転調が駆使され、喜怒哀楽が極点まで表現される。中途半端なスタンスを弾き手に許さない。だが、20年以上イタリア音楽に魅せられてきた平井み帆なら心配無用。没入と俯瞰のバランスが絶妙で、文句なしの「旅」の案内人だ。ポリエッティ「ハンガリーの反乱によるトッカティーナ」の想像力の爆発には息を呑むばかり。(矢澤孝樹)歌曲や合唱曲、オペラの創作を中心に活躍する作曲家、朝岡真木子の作品を集めたコンサートシリーズ「音のパレット」。本盤は2012年に行われた同コンサート「Ⅱ」のライブ録音である。朝岡の作品は、詩の抑揚に沿いつつチャーミングさも漂わせた旋律に色とりどりのハーモニーが寄り添い、情景と言葉の質感を鮮やかに届けてくれるもの。それをオペラ、歌曲の両分野で長きにわたり活躍するバスバリトンの佐藤征一郎が歌うことで、よりそれが確かな輪郭をもって聞こえてくる。特にタイトルにもなっている「子猫のミオとぼく」での佐藤のユーモアたっぷりの表現は必聴だ。 (長井進之介)ロドリーゴ:アランフエス協奏曲/R.S.デ・ラ・マーサ:サパテアード、ロンデーニャ/タンスマン:王宮の音楽(ロベール・ド・ヴィゼーによる)/ヴィゼー(T.ガルシア編):テオルボとリュートのための小品 組曲 イ短調 他ティボー・ガルシア(ギター)ベン・グラスバーグ(指揮)トゥールーズ・キャピトル国立管弦楽団ワーナーミュージック・ジャパンWPCS-13848 ¥3300(税込)ハイドン:交響曲第29番、同第55番「校長先生」、同第59番「火事」飯森範親(指揮)日本センチュリー交響楽団ルッツァスキ:第4旋法のトッカータ/フレスコバルディ:トッカータ第2番/ポリエッティ:ハンガリーの反乱によるトッカティーナ(抜粋)/パラディエス:ソナタ第9番 イ短調/スカルラッティ:ソナタ K.69、同K.184 他平井み帆(チェンバロ)朝岡真木子:うめぼし、さといもつるるん、カボチャ物語、おにぎりのうた、うちのねこ、海とぼくと、対処、確かな一歩、幸福とは、組曲「子猫のミオとぼく」、「武陽玉川八景之図」 他佐藤征一郎(バスバリトン)朝岡真木子(ピアノ) 杵屋勝芳歌(三味線) 藤舎露生(篠笛) 青木俊輔(尺八)収録:2012年9月、王子ホール(ライブ) 他ナミ・レコードWWCC-8008 ¥2750(税込)収録:2022年12月&2023年8月、ザ・シンフォニーホール(ライブ)オクタヴィア・レコードOVCL-00841 ¥3850(税込)コジマ録音ALCD-1221 ¥3300(税込)

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