eぶらあぼ 2024.5月号
119/141

CDCDCDCD116ストラヴィンスキー:《ペトルーシュカ》 他/クラウス・マケラ&パリ管新井博江 ピアノ・リサイタル 2023サン=サーンス:歌劇《デジャニール》/山田和樹&モンテカルロ・フィル欧米トップ楽団から求められる時代の寵児マケラとパリ管の良好な関係を如実に示す。ライブ録音の「ペトルーシュカ」の高い精度と豊かな歌心たるや。約2年前の来日公演でも感じられたが、パリ管の楽員が自分たちの美質を無理なく引き出すマケラを本当に愛し、感服している様まで伝わるような、親密でヴィヴィッドな音色が連続する。それは変化に富んだ楽曲の魅力とも重なり、各楽器のソロは生命力にあふれ、全奏は輝かしいサウンド、明暗の際立つ描写が実に楽しい。ライブではないドビュッシーも、素直に作品と向き合い、楽団の表現力を抑えず、しかし精妙に美しくまとめる。(林 昌英)ザルツブルク・モーツァルテウム管の首席奏者を務めた後、欧州の主要楽団に客演し、教育面にも力を注いでいるイタリア出身の名手が、20世紀フランスのファゴット作品をまとめて収録したアルバム。鮮やかなテクニックはもとより、豊潤な音色と表情の豊かさに魅了され、同系作品の意外に多彩なテイストも実感させられる。全体が好演だが、ビッチュ「コンチェルティーノ」の妙技とケクラン「3つの小品」の優しさの対照や、ボザ作品の表現などは特に聴き応えあり。ワグナーのニュアンス豊かなピアノの貢献度も高い。ファゴットの魅力を再認識させられる1枚。(柴田克彦)新井博江によるライヴノーツ・レーベルへの7年ぶり、4枚目のアルバムがリリースされた。プログラムはベートーヴェンの難解な後期のピアノ・ソナタに始まり、ブラームスの変奏曲、スクリャービンの前奏曲、さらにはショパンのピアノ・ソナタと多岐にわたっており、大変に聴き応えのある内容となっている。ベートーヴェンとショパンのソナタでは確かな形式感を示しつつ、ブラームスやスクリャービンでは演奏家の想像力の羽ばたきが感じられる。そして演奏全体を貫くものは、常に均整のとれた丹精な語り口と透徹したピアニズムである。確信に満ちたテンポ設定にも新井の円熟の境地が感じられよう。(大津 聡)サン=サーンスが最後に書いたオペラの初の全曲録音だ。嫉妬にかられたデジャニールが、その彼女を捨てて若い女に懸想する夫のエルキュール (ヘラクレス)を破滅へと追い込んでしまうストーリー。山田和樹の手堅い指揮ぶりは、知られざるオペラが長年秘めていた魅力を引き出してくれる。とりわけ豊かな色彩をもつオーケストレーションが浮き彫りに。カタストロフィーでは盛大な不協和音も(20世紀の作品なのだ!)。魅惑的なアリアが多いタイトルロールのアルドリッチの情感あふれる歌唱、さらに初演の地のオーケストラによる蘇演というのもうれしい。(鈴木淳史)ストラヴィンスキー:バレエ「ペトルーシュカ」(1947年版)/ドビュッシー:バレエ「遊戯」、牧神の午後への前奏曲クラウス・マケラ(指揮)パリ管弦楽団ベルトラン・シャマユ(ピアノ)タンスマン:ソナチネ、ファゴット組曲/デュティユー:サラバンドとコルテージュ/ジャンジャン:プレリュードとスケルツォ/ケクラン:ソナタ op.71、3つの小品/ビッチュ:コンチェルティーノ、ロンドレット/フランセ:2つの小品/ボザ:レシ シシリエンヌとロンドフィリップ・トゥッツァー(ファゴット)ニコラウス・ワグナー(ピアノ)コジマ録音ALCD-9260 ¥3300(税込)ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第30番/ブラームス:創作主題による変奏曲/スクリャービン:7つのプレリュード/ショパン:ピアノ・ソナタ第3番新井博江(ピアノ)サン=サーンス:歌劇《デジャニール》山田和樹(指揮) モンテカルロ・フィルハーモニー管弦楽団 ケイト・アルドリッチ アンナ・ダウズリー(以上メゾソプラノ) ジュリアン・ドラン(テノール)アナイス・コンスタン(ソプラノ)ジェローム・ブーティリエ(バリトン)モンテカルロ歌劇場合唱団 Bru Zane/ナクソス・ジャパンNYCX-10466(2枚組+書籍) ¥7260(税込)収録:2023年9月 パリ(ライブ) 他ユニバーサル ミュージックUCCD-45026 ¥3080(税込)収録:2023年9月、王子ホール(ライブ) 他ナミ・レコードWWCC-8007 ¥2750(税込)20世紀パリ/フィリップ・トゥッツァー

元のページ  ../index.html#119

このブックを見る