eぶらあぼ 2024.4月号
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第759回 東京定期演奏会 4/12(金)19:00、4/13(土)14:00 サントリーホール問 日本フィル・サービスセンター03-5378-5911 https://japanphil.or.jp61的な領域にだけ押し込めるのは禁物だという。聖と俗の同居。そこをこそ、下野は愛してやまない。 そしてシューベルトからは、これも珍しい交響曲第3番をチョイス。作曲家18歳のときの初期作品だ。3番並びであり、またブルックナーはニ短調でこちらはニ長調だから、駄洒落のようでもあるが、「ニ調」に下野は、「厳かなもの/祝祭的なもの」を感じ関連性をみるという。「未完成交響曲とムスの「4つの小品」op.119をソロで披露。ドイツ・プログラムでペトルシャンスキーの音色の美しさと構築力を味わえる。 5月6日のソロ・リサイタルでは、シューマンの「ダヴィッド同盟舞曲集」にムソルグスキーの「展覧会の絵」と大曲が並ぶ。いずれも様々なキャラクターの小品が連続して奏でられ、演奏者の表現力と音色の幅広さ、そしてそれを実現する高い技術が求められる。ペトルシャンスキーの音楽性の豊かさを味ボリス・ペトルシャンスキー × 矢島愛子 デュオリサイタル5/3(金・祝)14:00 東京/烏山区民会館ボリス・ペトルシャンスキー ピアノリサイタル5/6(月・休)14:00 ヤマハホール問 アルペンミュージックオフィス03-5739-1663 https://www.alpenmusic.comわうのにこれほど最良の楽曲はないだろう。多彩なプログラムで、真のヴィルトゥオーゾと呼ぶにふさわしいピアニストの音色にぜひ耳を傾けてほしい。下野竜也 ©広島交響楽団はまた違う『やんちゃ』なシューベルトを楽しんでいただけると思います」。行かずばなるまい。文:舩木篤也文:長井進之介下野竜也(指揮) 日本フィルハーモニー交響楽団二つの「第3番・ニ調」で垣間見る大作曲家の素顔 これまで日本フィルとは、好んで「マニア向け」の演目を組んできた下野竜也。だから4月の東京定期は、いっけん常識的にみえるだろう。シューベルトとブルックナーの交響曲がそれぞれ1作ずつ並ぶ。後者が生誕200年を迎えるとあれば、なおのこと「常識的」だ。 しかし、である。ブルックナーからは、この作曲家を得意とする下野にして初の第3番が選ばれている。これは一つの挑戦だろう。しかも、演奏頻度の高い第3稿ではなく、また近年注目の集まる第1稿でもなく、第2稿(ノヴァーク校訂版)を取り上げる。「これが本人の意志で書いた最後の稿だからです」とは下野の弁。なるほど、第3稿は、弟子筋の意見が相当に加わった稿だ。下野は、ブルックナーによる下げ弓の連続指定も、原則的に守るという。「ウィーンのムジークフェライン・ザールで聴くと、それがオルガンのように聞こえるのですよ」。ただしブルックナーを宗教ボリス・ペトルシャンスキー(ピアノ) リサイタル & デュオリサイタル豊穣な音世界を描き出す、熟練の匠・名伯楽のピアニズム リーズやミュンヘン、カサグランデなど数多くの国際コンクールで入賞し、世界的に活躍するピアニストであるボリス・ペトルシャンスキー。ゲンリヒ・ネイガウスやレフ・ナウモフに学んだ彼は、ショスタコーヴィチのピアノ曲全集をはじめとした録音も高く評価されている。ゲルギエフ、フェドセーエフら著名な指揮者との共演も多い演奏家であるが、同時に優れた指導者でもある彼は、イタリアのイモラ国際ピアノアカデミーで教授を務めており、これまでイングリット・フリッターにフェデリコ・コッリといった国際的なピアニストを育て上げてきた。 今回の来日では、そんな彼の名演奏家・名教師としての実力を堪能できるリサイタルが二つ行われる。5月3日は、愛弟子である矢島愛子との共演で、モーツァルトやシューベルトなどのデュオ作品を演奏するとともに、ベートーヴェンのピアノ・ソナタ第15番「田園」とブラー

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