ときに脚の間にプラスチックのゴミ箱のような容器を挟んでいます。それによって体を支えるインナーマッスル(深層筋)が鍛えられ、張りのある音で吹き続けることができるようになります。これがコンクールにもジャズ・ポップスにも大きな効果がありました。大会本番はみんなノリ良く動いていましたが、実はちょっと前までは動けずに僕に『コケシやなぁ』と言われていました(笑)。パートごとにノる練習をしたくらいですが、その成果もあってか、全国大会の際には1曲目の《ザ・テンプター》から、客席がウォーッと湧いているのを背中に感じました。コンクールとは違い、ダイレクトに観客の反応をもらいながら演奏するのは本当に楽しかったです」 生駒中出身の山上先生だが、中学時代は野球部。近畿大学附属高校で吹奏楽部に入り、大学ではバンド活動。そんな先生の経歴が、生駒中の総合グランプリ獲得という偉業につながった。 シンフォニックジャズ&ポップスコンテスト全国大会ではベストソリスト賞が4人選出されたが、そのうちの2人が生駒中の部員だった。 2023年度のキャプテンで3年生の大東こころは、トランペット、トロンボーン、フリューゲルホルンという3つの楽器でソロを奏でた。その姿と音には天才的な輝きがあった。 「小2から入った小学校の金管バンドではトロンボーンを吹いていました。中学では人数が少なかったトランペットパートに入りましたが、山上先生に『二刀流でいこう』と言われ、どちらも諦めないつもりでやってきました」 いわば、吹奏楽界の大谷翔平だ。 もうひとりのベストソリスト賞は、同じく3年生でアルトサックス担当の豊田綸(いと)。独自の音色で朗々と歌い上げた《イマジン》の長いソロは感動的ですらあった。 「本番2週間前に『どう吹けばいいかわからへん』とスランプになったんですが、山上先生のアドバイスで初心に帰り、浸ってもらうようなソロにたどり着きました。《イマジン》のソロは1年生のときから吹いていますが、3年間の思いが詰まったソロがやっと完成したと思いました」 良きライバルであり、仲間でもあるふたりのソロは、総合グランプリの原動力になった。 今年度の生駒中の活躍は、中学生だからといって、練習時間が少ないからといって、決して不可能はないのだと教えてくれた。逆風を吹き飛ばした生駒中に喝采を送りたい。♪♪♪拡大版はぶらあぼONLINEで!→左より:大東こころさん、山上隆弘先生、豊田綸さん43
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