eぶらあぼ 2024.4月号
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SACDCDCDCD114アイデンティティ/三浦謙司ブラームス:交響曲第1番&メンデルスゾーン:交響曲第4番/ネッロ・サンティ&読響ヴェニス/アナスタシア・コベキナ外山雄三自作自演集Vol.2/外山雄三&大阪響国内盤として再リリースされた三浦謙司の『アイデンティティ』は、出自の固定に抗うように多彩な音楽を残したフランク、武満徹、ラヴェル、ドビュッシーの作品に向き合う。鋭いほどの透明感に満ちた響きは、シフラが所有したピアノと教会から三浦が丁寧に引き出したもの。減衰音の美しいブレンドを生みながら、個々の作品に応じて時に重く、時に滲み、時に洒脱なタッチで描き分ける。アイデンティティとは、決定され固定され分類されるものではなく、むしろ絶えず問い続ける実態なき流動体なのかもしれない。まるで音楽のように。演奏を聴きながらそんなことを考えさせられた一枚。(飯田有抄)オペラの名匠ネッロ・サンティは、交響曲でも優れた手腕を発揮した。ブラームスが素晴らしい。冒頭の序奏から凄まじい迫力で、ワクワクさせられる。主部に入って、主題以外のつなぎの一節にも歌があり、とても美しい。展開部の最後で頂点から下降して、再現部に突入する呼吸が絶妙だ。緩徐楽章も美の極み。終楽章では、序奏の雄大な造形や再現部の下降ストレッタのリズムの切れ味、コーダの息詰まる追い込みなど、いずれも特筆に値する。メンデルスゾーン「イタリア」も溌溂として、実に爽やか。緩徐楽章のしなやかな歌とたっぷりとした抒情は絶品といえる。終曲サルタレッロも心弾む。(横原千史)こんなヴェニス(ヴェネツィア)は、誰も思い描いたことがない。1994年生まれのチェリスト、アナスタシア・コベキナは、歴史と夢想の交差点としてのヴェニスを、音で描写した。ヴィヴァルディやモンテヴェルディらヴェニスで活躍した音楽家の作品がある一方で、彼女がこの迷宮都市から受けた印象が、フォーレからクルターグ、ブライアン・イーノまで様々な楽曲に投射される。そのチェロはピリオド/モダンの境界を自在に行き来し、甘美な歌からハスキー・ヴォイス、叫びまで恐るべき表現のパレットでこの超現実的都市図を彩色する。歴史から人は学ばない、という怒りまで潜ませつつ。(矢澤孝樹)昨夏92歳で亡くなった外山雄三と大阪交響楽団による貴重な自作自演集の第2弾は、2つのヴァイオリン協奏曲。ソロはいずれも同楽団首席ソロコンサートマスター森下幸路で、理想的なすばらしさ。西洋の作曲技法や構成の中に、日本の音楽の要素や感覚が横溢する外山作品の魅力を、森下はこの上ない水準とバランスで奏でる。ヴァイオリンらしい濃密な音色、鮮やかな技巧、そこに様々な形で現れる和の心の表情。ライブながら完成度も高く、長くスタンダードとなるはず。晩年の外山の指揮の重厚さは未踏の境地にあり、「ラプソディ」の巨大な「八木節」には畏怖を覚えるほど。 (林 昌英)フランク(バウアー編):前奏曲 フーガと変奏曲/武満徹:ロマンス、雨の樹素描II(オリヴィエ・メシアンの追憶に)/ラヴェル:水の戯れ、高雅で感傷的なワルツ/ドビュッシー:6つの古代のエピグラフ、喜びの島/ゴダール:マズルカ第2番三浦謙司(ピアノ)ブラームス:交響曲第1番/メンデルスゾーン:交響曲第4番「イタリア」ネッロ・サンティ(指揮)読売日本交響楽団モンテヴェルディ:アリアンナの嘆き/ヴィヴァルディ:チェロ協奏曲 RV405、同RV416/ブライアン・イーノ/ジョン・ホプキンス/レオ・エイブラハムズ:エメラルドと石/クルターグ:チェロのためのサイン ゲームとメッセージ「影」/フォーレ:「3つのうた」より〈ゆりかご〉 他アナスタシア・コベキナ(チェロ) バーゼル室内管弦楽団 他ソニーミュージックSICC 30840 ¥2860(税込)外山雄三:ヴァイオリン協奏曲第1番、同第2番、管弦楽のためのラプソディ外山雄三(指揮)大阪交響楽団森下幸路(ヴァイオリン)ワーナーミュージック・ジャパンWPCS-13847 ¥3300(税込)収録:1999年4月、サントリーホール(ライブ)マイスター・ミュージックMM-4527 ¥3520(税込)収録:2018年2月、ザ・シンフォニーホール(ライブ) 他キングインターナショナルKKC 2717 ¥3300(税込)

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