eぶらあぼ 2024.2月号
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第635回 定期演奏会 2/9(金)19:00 サントリーホール問 読響チケットセンター0570-00-4390 https://yomikyo.or.jp2/13(火)19:00 東京オペラシティ リサイタルホール問 東京オペラシティチケットセンター03-5353-9999 https://www.operacity.jp52 後半は、これまでマーラーなどの大規模な大曲や、珍しい曲を取り上げることが多かった山田が、初心に帰ったように、ベートーヴェンの交響曲に正面から向き合う。第2番は、「総決算」としてのプログラムの掉尾を飾るのにふさわしい選曲だ。をバッハ・コレギウム・ジャパンなどでもお馴染みの櫻田亮に、留学後は現代音楽のスペシャリストであるマリアンヌ・プッスール(作曲家アンリ・プッスールの娘で、世界屈指の「月に憑かれたピエロ」歌いとしても有名)と、シェルシとのコラボレーションでも知られる平山美智子に師事。そして謡を人間国宝でもある観世流能楽師、関根知孝に現在も習っている。それが緊張感のある間の使い方にも繋がっているようで、ラストに控えるシャリーノ作品にも活かされるのだろうし、日本民謡との共通項も見出せると彼女が語るリゲティと聴き比べるのも刺激的で実に楽しみだ。山田和樹 ©読響友吉鶴心文:鈴木淳史文:小室敬幸©Ayane Shindo藤原道山 バーミンガム市交響楽団でのポストが忙しくなるであろう山田にとっては、首席客演指揮者としての最後の定期演奏会がこの公演となる。もちろん、読響との共演はこれからも続くだろうが、一つの節目として耳に焼き付けておきたい公演だ。山田和樹(指揮) 読売日本交響楽団こだわりのプログラムで飾るラストステージ 山田和樹が読響を振ると、楽曲の細部までクリアになるばかりか、鳴りっぷりだってよくなる。バルトークの「弦楽器、打楽器とチェレスタのための音楽」では、そんな特徴がいちだんと際立つはずだ。民俗的なイディオムを忍ばせつつ、古典的なフォルムにしっかりと落とし込んだ楽曲だ。 これまでも日本人作曲家の作品を精力的に取り上げてきた山田。今回は、この分野の古典的名作といえる武満徹の「ノヴェンバー・ステップス」を演奏する。邦楽器を独奏にした、東西の文化が混交する音楽だ。この曲といえば、かつては薩摩琵琶の鶴田錦史、尺八の横山勝也が長らく定番のコンビだった。今回は新しい世代の名手たちが「伝統」に挑む。鶴田錦史の弟子である友吉鶴心、そして尺八をフルートのようにコントロールする藤原道山だ。山田と読響の洗練された響きと相まって、演奏史に新たな1ページを刻む。東京オペラシティ B■■■■■■■→C 薬師寺典子(ソプラノ)自在に越境する声、互いにシンクロするフィロソフィ 東京オペラシティの「B→C」シリーズは同時代(コンテンポラリー)作品のチョイスに驚くほど個性が滲み出る。久々に「嗚呼、これぞB→C!」と快哉を叫びたくなったのが、ソプラノの薬師寺典子によるプログラムだ。例えばバッハとヒンデミット、早坂文雄とイタリアのブソッティ、能の謡とフィンランドのサーリアホ……と、作曲年や作曲家の年代、そして背景にある文化と、一見したところ相容れない音楽が多様に交差するとんでもない選曲にみえるが、実は共通項をもたせて丁寧に繋いでいるのだからお見事という他ない。他にもピアノと声楽の新たなサウンドを引き出すヴィトマン作品に加え、日野原秀彦と桑原ゆうは「ソプラノにおいての謡」をテーマとして新作を書き下ろす。 薬師寺がこれだけ幅広いスタイルを歌いこなせるのは、彼女の師事歴をみれば納得だろう。藝大時代は声楽

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