eぶらあぼ 2024.2月号
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第995回 定期演奏会 Cシリーズ 2/22(木)14:00都響スペシャル 2/23(金・祝)14:00東京芸術劇場 コンサートホール問 都響ガイド0570-056-057 https://www.tmso.or.jp2/17(土)、2/18(日)各日14:00 東京文化会館(小)問 東京文化会館チケットサービス03-5685-0650 https://www.t-bunka.jp42Music Program TOKYO シアター・デビュー・プログラム《ラヴェル最期の日々》(新制作)“攻め”のコラボで描き出される大作曲家の晩年 東京文化会館が青少年向けにオリジナル舞台作品を贈る「シアター・デビュー・プログラム」で、作曲家・ピアニストの加藤昌則と演出家の岩崎正裕がタッグを組み、《ラヴェル最期の日々》を制作する。 希代のメロディーメーカーとして知られるラヴェルだが、晩年は原因不明の病で記憶や言語に大きな障害を抱えた。頭の中は音楽であふれているのに、それを楽譜に書き留めることができなくなってしまったのだ。この悲劇を、ラヴェルの隣人の目を通じて描き出すというのが本作の趣向。 ラヴェルを加藤と世界的に活躍するダンサーの小㞍健太が、ラヴェルの隣人を劇団チョコレートケーキの西尾友樹が演じる。音楽は「ボレロ」や「亡き王女のためのパヴァーヌ」など誰もが知っているラヴェル作品をメインに、自由な引用や加藤の新作なども加えて構成。ヴァイオリンに東京文化会館が紀になって、いちだんと実力と技術を高めた都響のポテンシャルを最大限に引き出し、頽廃よりも新世紀の澄んで乾いたモダニズムをこの音楽に感じさせたインバルの手腕と円熟に、ただ喝采を送るほかなかった。 あれは、インバルと都響が2012年から2年かけて行った「新 マーラー・ツィクルス」の、アンコールのように演奏されたものだった。 それから10年、晩冬の東京芸術劇場で、あの震撼と感嘆の時間に再び逢える。「第3次マーラー・シリーズ」の新たな旅の始まりを、今度はこの曲が告げる。主催する東京音楽コンクールで第2位&聴衆賞を獲得した橘和美優、チェロに都響の清水詩織を起用するほか、ラヴェルが用いなかったバンドネオン(演奏:仁詩 Hitoshi)を編成に交えたのも異色だ。 生の舞台の魅力と深さを若者たちに体感してもらうプログラムだが、認知にまつわる病や不安は、考えてみれば加藤昌則エリアフ・インバル ©Sayaka Ikemoto岩崎正裕小㞍健太 ©Carl Thorborg文:山崎浩太郎文:江藤光紀西尾友樹極めて現代的な問題でもある。音楽監督の加藤は、演者たちが持っている力をぶつけ合う濃密なコラボレーションを通じ、単にラヴェルを聴こうと思って来た人をいい意味で裏切る、一つのカテゴリーに収まらない舞台にしたいと意気込む。そのテーマとドラマはあらゆる年代に開かれたものとなるのではないか。エリアフ・インバル(指揮) 東京都交響楽団第2次ツィクルスの掉尾を飾った凄演の感動、ふたたび! ――あれから、10年もたつのか。 その強烈な響きは、まだ耳に残っている。2014年7月、酷暑の時期のサントリーホールに鳴りひびいた、エリアフ・インバル指揮東京都交響楽団による、マーラーの交響曲第10番(デリック・クック補筆版)のことだ。 第1楽章終盤のきしむ不協和音の咆哮は、絶滅目前の恐竜の断末魔の叫びのような、崩壊の予感にみちていた。そして、グランカッサ(大太鼓)の不気味な強打が、緊張を極限まで高めて始まる終楽章。喜怒哀楽がめまぐるしく入れ替わるうちに、クライマックスの弦楽器のグリッサンドに突入する。無重力状態のような浮遊感を味わわせたのち、音楽は一気に収斂して、高空に吸い込まれるように消える。 マーラーがほぼ書きあげたのは第1楽章だけで、ほかは未完の草稿を音楽学者クックが補筆したものという弱点など忘れさせる、凄い演奏だった。21世

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