eぶらあぼ 2024.2月号
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G線上のアリア―ヴィルヘルミ:バロック編曲集/横島礼理CDCDCDCDモーツァルト:レクイエム(ピアノ独奏版)/ヴァディム・ホロデンコシベリウス:交響曲第2番/沖澤のどか&読響112ワーグナーとも縁が深かったクリントヴォルト編曲によるモーツァルトの「レクイエム」の世界初録音がリリースされた。ピアノ独奏版は音源としてのみならず、書誌学的にも極めて珍しく、貴重である。昨年4年ぶりの来日を果たしたホロデンコは、楽器の可能性を最大限に引き出しながら、ピアノによる同作品の解釈に成功している。本来の独唱パート部分を鮮やかに浮き彫りにしつつ、音楽を重層的に構築していく様には卓越した声部コントロール能力が感じられる。さらにピリオド・ピアノの使用によって編曲当時の響きも再現している。「レクイエム」の受容史に新たな1ページを付け加える注目の一枚。(大津 聡)名門コンクール優勝から昨年の京響常任指揮者就任まで、短期間で飛躍を続ける沖澤のどか。意外にもデビュー盤となる当盤は、2021年秋の読響客演時のライブ録音。まずパワフルで押し出しの強いサウンドに意表を突かれる。そしてスコアの深い読みと表現意欲に加えて、例えばヴィブラートの大きい強力なトランペット奏者がいるなら、その個性を活かす表現法とバランスを実現する柔軟性に感嘆させられる。さらにはオーケストラの能力を最大限に引き出したスリリングかつ感動的なシベリウスに圧倒され、コーダの音楽の巨きさには畏怖さえ覚える。沖澤の底知れぬ力量を体感する。(林 昌英)ヴィルヘルミは第2のパガニーニと呼ばれたドイツの巨匠。NHK交響楽団第1ヴァイオリン次席・横島礼理のデビュー盤は、彼の編曲作品を集めた。「G線上のアリア」は、ポルタメントをかけた甘い音がロマンティックで美しい。ヴィルヘルミが得意としていた長い音での弓の返しも巧い。「ドイツ組曲」はヴァイオリンならではの繊細な表情づけが光ってとてもきれい。「ガヴォットとミュゼット」のミュゼットでは、原曲に無い保持音が効果的だ。「シャコンヌ」ではリズムが明確になり、運指やボウイングによってヴィルヘルミ独自の作品解釈が明らかになる。随所に新たな発見がある楽しいアルバムだ。(横原千史)「映像の時代」を代表する音楽作家によるデビュー50周年の集大成的“2枚組”自選ベスト盤。初めて手掛けたNHKドラマ『棲息分布』(1977年)のための(ジャズ・ロック風な)音楽から、一時期は多く担当していたというCMから“男のロマン”香る「カネボウ・デナリ」(91年)の曲、ブレイクのきっかけとなったNHKドキュメンタリー番組のために書いた曲、評価を確立した『阿弥陀堂だより』(2002年)や『博士の愛した数式』(06年)など小泉堯史監督作品の映画音楽、そして近年の代表作まで盛りだくさん。キャリアを網羅した本人が語る「映像音楽の歩み」(ライナーノーツ)も必見。(東端哲也)モーツァルト:レクイエム(フランツ・クサヴァー・ジュスマイヤー補筆完成版に基づく、カール・クリントヴォルト編曲ピアノ独奏版)ヴァディム・ホロデンコ(ピリオド・ピアノ)NIFC/東京エムプラスXNIFCCD 150 ¥3300(税込)シベリウス:交響曲第2番沖澤のどか(指揮)読売日本交響楽団バッハ:G線上のアリア、ドイツ組曲、3つのサラバンド、ガヴォットとミュゼット、シャコンヌ/ヘンデル:「ヘンデルのラルゴ」(《セルセ》よりアリア「オンブラ・マイ・フ」)/グルック(ズガンバーティ):「グルックのメロディー」(《オルフェオとエウリディーチェ》より) 他(以上アウグスト・ヴィルヘルミ編)横島礼理(ヴァイオリン)横島浩(ピアノ)コジマ録音ALCD-7299 ¥3300(税込)加古■:棲息分布、ポエジー、ジブラルタルの風、パリは燃えているか、風のワルツ、白い巨塔、博士の愛した数式〜愛のテーマ、最後の忠臣蔵〜夢なれど〜、愛と憎しみの果てに、風のリフレイン、グラン・ボヤージュ 他加古隆(作曲)収録:2021年10月、東京芸術劇場(ライブ)日本コロムビアCOCQ-85619 ¥3300(税込)エイベックス・クラシックスAVCL-84142〜3(2枚組) ¥3300(税込)KAKO DÉBUT 50―加古■ 自選映像音楽集

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