第8回仙台国際音楽コンクール ヴァイオリン部門優勝/中野りなSACDCDCDCDモーツァルト:交響曲第31番「パリ」 他/飯森範親&パシフィックフィルオペレッタ〜ウィーン、ベルリン、そしてパリ/ディアナ・ダムラウショパン:4つのバラードとポロネーズ2曲/山中明日菜110飯森範親が音楽監督として一昨年、楽団名を新たにスタートさせたパシフィックフィル。その最初のCDは、モーツァルトの初期交響曲のセッション録音で、基本的な合奏力の向上を図るねらいがあるようだ。通奏低音にチェンバロを加える独特の響きは、進行中の日本センチュリー響とのハイドン全集で経験済み。第31番「パリ」は、機動性が抜群で、生き生きと躍動する。ナチュラルな金管とバロック・ティンパニは、リズムに切れ味と響きに拡がりを加える。第23番も溌溂とした運動性が前面に出る。第16&17番は、対位法的な声部の模倣が随所に現れ、表現の幅を広げようとする。飯森の丁寧な指揮も好感がもてる。(横原千史)ディアナ・ダムラウといえば、幅広い声域とレパートリーを併せ持つ、押しも押されもせぬ実力派プリマドンナだ。そんな彼女が、レハールにカールマン、メサジェなど、ウィーンやベルリン、パリで人気を誇ったオペレッタのアリアを歌う。しみじみとした叙情を香り立たせたかと思えば、官能的な旋律をしっとりと歌い、あるいはシニカルに笑い飛ばして愉悦感を弾けさせる。じつにゴージャスそのもの。オペレッタの名手エルンスト・タイスが指揮するミュンヘン放送管の蠱惑に満ちた音楽もいい。さらにデュオにはテノールのヨナス・カウフマンらも加わり、そのゴージャスさに拍車をかける。(鈴木淳史)「日本」と「仙台」の両音楽コンクール優勝を果たした中野りな。「仙台」翌年の録音による記念CDは、「日本」制覇者の小井土文哉の豊かなピアノとともに、優勝後1年の進化を存分に示す。澄んだ音色や歌心はそのままに、表現の幅は拡大、要所での抉りも増している。モーツァルトとR.シュトラウスは端整な造形に温かな血が通う、懐深い好演。プーランクは両者が強靭な意志と痛みを表した凄演で、切れ味もすさまじい。イザイの無伴奏は余裕をもって楽曲と楽器の魅力を聴かせる。全編にわたり中野の心技のコントロールが抜群で、隙がない。録音時まだ10代、大器の証明となる1枚だ。(林 昌英)ピアニストの山中明日菜は東京音楽大学を卒業後、フランスをはじめヨーロッパ各国の舞台に立ち、イタリアの音楽祭に招かれるなど国際的な演奏活動を展開。現在は岡山を拠点に後進の指導にあたりながら、ガブリエル・タッキーノのもとで定期的に研鑽を積んでいる。本盤はオール・ショパン・プログラムであり、これは彼女のレパートリーの核を成すもの。透明感がありつつ芯の強さを感じさせる音色は、“語る”要素の強いバラードにおいて特にその魅力を発揮する。ニュアンスに富んだ演奏で聴き手に確かな印象を残し、難易度の高いパッセージは鮮やかに奏されている。(長井進之介)モーツァルト:交響曲第31番「パリ」、同第23番、同第16番、同第17番飯森範親(指揮)パシフィックフィルハーモニア東京コルンゴルト:《愛の歌》より〈少し浮気〉/カールマン:《謝肉祭の魔女》より〈愛する人、私はあなたを探しています〉/メサジェ:《ムッシュ・ボケール》より〈ナイチンゲール、前と同じように〉/レハール:《パガニーニ》より〈愛、地上の天国よ〉 他ディアナ・ダムラウ(ソプラノ) ヨナス・カウフマン(テノール) エルンスト・タイス(指揮) ミュンヘン放送管弦楽団 他ERATO/ワーナーミュージック・ジャパン5419.782798 ¥オープン価格モーツァルト:ヴァイオリン・ソナタ K.305/プーランク:ヴァイオリン・ソナタ/イザイ:無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第5番/R.シュトラウス:ヴァイオリン・ソナタ中野りな(ヴァイオリン)小井土文哉(ピアノ)ショパン:アンダンテ・スピアナートと華麗なる大ポロネーズ、バラード第1番〜第4番、ポロネーズ第7番「幻想」山中明日菜(ピアノ)オクタヴィア・レコードOVCL-00830 ¥3850(税込)フォンテックFOCD9887 ¥2640(税込)ナミ・レコードWWCC-7997 ¥2750(税込)
元のページ ../index.html#113