eぶらあぼ 2024.1月号
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CDCDCDCD124池辺晋一郎の打楽器作品を集めた一枚。各曲の個性が実に多彩で、次々に現れるアイディアは聴き手を飽きさせない。日常性を意識させる即興的な「雨のむこうがわで」に、探検隊が猛獣を生け捕りにするさまを描いた「サファリⅠ」が続き、上野信一による委嘱作「樹の心」を経て、躍動するパルスで俊足の守護神を表現した「テンテンイダテン」で閉じる。演奏はどれもキレがよく、束になった若者たちのエネルギーの発露が爽快だ。上野はフォニックス・レフレクションでの実践的な活動を通じ、数多の優れたパーカッショニストを育ててきた。その活動が現在、満開の花を咲かせていることがよく分かる。(江藤光紀)岡崎夫妻のシューマン・ライブ。岡崎耕治のファゴットは、のびやかで柔らかい。「幻想小曲集」は原曲のクラリネットより明るい色で、優しい歌に穏やかな拡がりがある。まろやかでしみじみとした味わいがいい。岡崎悦子の「交響的練習曲」は、とてもきれいなタッチで変奏を紡いでゆく。どの練習曲も聴き応えがあるが、特に印象的なのは、遺作の変奏曲。第2変奏は歌がきれいで神秘的、第4変奏はひそやかでありながら、変化に富み、奥行きを感じさせる。ブラームスが校訂で加えたのもよく解る。ラフマニノフのソナタ(原曲はチェロ)第3楽章は、ファゴットのメロディにピアノが繊細に絡んで美しい。(横原千史)最近もTBSドラマ『VIVANT』の音楽が記憶に新しい作曲家・千住明の“職人技”の基礎である編曲仕事を集めた好アルバム。メインは1999年NHKの番組『ナポリに響くアリア“Arias”』のために、妹で人気ヴァイオリニストの千住真理子を起用して書いたイタリア・オペラ等の名アリア9曲を、彼が主宰するコラボレーション・オーケストラで新録したもの。加えてアニメ『鋼の錬金術師』や、作家・作詞家で友人でもある故・なかにし礼のドキュメンタリー番組のために書いたオリジナル曲などが収録されている。随所に“真理子節”が利いた歌心溢れる一枚。石井竜也デザインのアートワークにも注目。(東端哲也)「Opus One」レーベルのデビュー盤から早4年。古海行子は憧れを抱き続けてきたリストの長大なピアノ・ソナタに向き合った。長年の思いの丈を、この録音にしっかりと結実させようとする意志を感じる演奏だ。緊張感、甘美さ、豪快さなど、このソナタが持つ多面的な様相を丁寧に描き出し、なおかつドライブ感のある演奏で一気に聴かせる。「愛の夢」第3番は、歌声のようなニュアンスの変化に富む。2018年高松国際ピアノコンクールで日本人初の優勝を飾り、22年ダブリン国際ピアノコンクールで第2位に輝く実力派。今後の展開がさらに楽しみになる一枚だ。 (飯田有抄)池辺晋一郎 打楽器作品集/上野信一&フォニックス・レフレクション池辺晋一郎:バイヴァランス Ⅶ―2人の打楽器奏者のために、雨のむこうがわで―4人の打楽器奏者のために、サファリⅠ―6人の打楽器奏者のために、樹の心―マリンバ・アンサンブルのために、テンテンイダテン―10人の打楽器奏者のために 他上野信一&フォニックス・レフレクションシューマン:幻想小曲集、交響的練習曲/岡崎耕治&岡崎悦子千住明 フィーチャリング 千住真理子|アリアリスト:ピアノ・ソナタ/古海行子シューマン:幻想小曲集、交響的練習曲(ピアノ独奏)、素晴らしく美しい五月に、春の宵/ラフマニノフ:ソナタ ト短調 第3楽章「アンダンテ」岡崎耕治(ファゴット)岡崎悦子(ピアノ)千住明:アニメ『鋼の錬金術師 FULLMETAL ALCHEMIST』より〈トリシャの子守歌〉、あの日/ヴェルディ:歌劇《椿姫》より〈花から花へ〉/プッチーニ:歌劇《トスカ》より〈星はきらめき〉、歌劇《トゥーランドット》より〈誰も寝てはならぬ〉 他千住明(作編曲/指揮)千住真理子(ヴァイオリン)SENJU LAB Grand Philharmonicエイベックス・クラシックスAVCL-84148 ¥3300(税込)リスト:ピアノ・ソナタ ロ短調、「愛の夢」第3番古海行子(ピアノ)コジマ録音ALCD-7300 ¥3300(税込)収録:2023年5月、王子ホール(ライブ)マイスター・ミュージックMM-4524 ¥3520(税込)日本コロムビアCOCQ-85616 ¥3300(税込)

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