滝 千春 「12-toneS」 〜バルトーク、シュニトケ、ペルト〜信頼を寄せる仲間たちと奏するスタイリッシュ・プロ 気鋭のヴァイオリニスト・滝千春の勢いが止まらない。常にアグレッシブな選曲と高度な音楽性に満ちた演奏で聴き手を驚かせてくれる滝だが、今回は「12-toneS」というタイトルでバルトーク、シュニトケ、ペルトの作品を、12人の実力派若手演奏家たちと披露する。チラシには「言葉はいらない、必要なのは音楽(コトバ)だけ。」という強いメッセージも添えられた。 バルトーク「ディヴェルティメント」、ペルト「フラトレス」、そしてシュニトケ「タンゴ」やヴァイオリン・ソナタ第1番12/9(土)14:00 小金井 宮地楽器ホール問 小金井 宮地楽器ホール チケットデスク042-380-8099 https://koganei-civic-center.jp58Interview板倉康明(指揮/東京シンフォニエッタ音楽監督)追悼公演となった大家70歳の記念プログラム クラリネット奏者、指揮者として長く活躍する板倉康明。彼が音楽監督(&指揮)を務める東京シンフォニエッタが、12月に第54回定期演奏会を行う。1994年創設の同団は「“現代作品の日本における紹介”と“日本の優れた現代作品の発信”を柱に活動する」室内オーケストラ。メンバーは「オーケストラ奏者、大学教員、フリーランスが基本」で著名奏者も数多い。ポリシーは「日本の特性である“1つの音で世界観を作る”」こと。定期演奏会は7月と12月の年2回で、海外公演も10回ほど行っている。 12月の定期は「追悼・西村朗」。2023年9月7日に69歳で逝去した日本屈指の作曲家を悼む内容だが、当初の主旨は違っていたという。 「元々、今年の定期の1回目は池辺晋一郎の80歳記念、この2回目は西村朗の70歳記念として、日本の重要作曲家を祝う計画でした。したがって今回も西村さんと相談し、いずみシンフォニエッタ大阪と共同委嘱した三重協奏曲の東京初演、インデアミューレのために書かれたオーボエ協奏曲の日本人初演という彼の協奏曲を柱にしながら、いずみシンフォニエッタ大阪で西村さんを支えてきた川島素晴、西村さんと親しいフランスのアラン・ゴーサンの最新作を加えて交友関係も示すプログラムなど、20世紀の様々な時期に書かれた作品を集めているが、こうした強烈な個性の持ち主である作曲家たちの楽曲をまとめて演奏することは珍しい。ヴィオラの大島亮(神奈川フィル特別契約首席奏者)、ピアノの沼沢淑音、チェロの髙木慶太らが作るアンサンブルとの共演は、ソロの時とは違った滝の魅力を見せてくれるはず。まさにその「コトバ」を聴きに行きたい。を組んでいました。ところが70歳になる前日に亡くなられたので、追悼の一語を加えることになったのです」 板倉にとって西村は「学生時代から付き合いのある公私ともに親しい間柄」だったとのこと。とはいえ、結果的に追悼公演となった今回も、元々の経緯から音楽的な意義が深い作品が並んでいる。 「最初の西村さんのオーボエ協奏曲は、名手を意識した超絶技巧の作品。オーボエは特殊奏法を交えながら約20分吹き通しです。今回ソロを吹く渡辺康之は当団の重要プレイヤーで、フランスでも絶賛されています。次の川島素晴の作品は東京シンフォニエッタの2020年の委嘱作で、これもリズムが複雑な難曲。現代曲は再演されないのが問題ですが、当団は委嘱作を必ず再演しています。すると初演とはまた違った味が出ますから。ゴーサンの作品はバス・クラリネット、打楽器、ピアノの三重奏曲。東京シンフォニエッタの公演では、1曲は室内楽曲を入れて変化を付けています。これは奇しくも奥様の追悼曲。内的に深く書法も素晴らしい作品です。西村さんのヴァイオリ東京シンフォニエッタ 第54回 定期演奏会 追悼・西村朗12/22(金)19:00 東京文化会館(小)問 AMATI 03-3560-3010 https://www.amati-tokyo.comン、ハープ、クラリネットの三重協奏曲は、生涯最後の作品の1つ。彼の内にある東洋思想的な深さを湛えた曲で、聴きやすい音楽の中に各楽器のヴィルトゥオージティが盛り込まれています」 なお当日は発表されていない追悼演奏の予定もある。話を聞くだに興味が深まる本公演に、一般ファンもぜひ足を運びたい。取材・文:柴田克彦©Alexander Platz文:片桐卓也
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