2019年、当時の首席指揮者ピエタリ・インキネンとともに来日、そのみずみずしい演奏で客席を魅了したプラハ交響楽団。2024年1月、新たに首席指揮者に就いたトマーシュ・ブラウネルに率いられて5年ぶりに日本の土を踏む。 プラハのスメタナホールを本拠地とするプラハ交響楽団。30年にわたって常任指揮者を務めたヴァーツラフ・スメターチェクのもとで実力をつけ、チェコの名門オーケストラの一角をなす存在となった。70年代のビエロフラーヴェク、90年代にはアルトリヒテル、そして2010年代のインキネンなど、伸び盛りだった実力派を積極的に首席指揮者として迎えてきた。 ブラウネルもその1人と数えられるかもしれない。その透明感あるバランス45左より:トマーシュ・ブラウネル ©Petra Hajska/プラハ交響楽団 ©Jan Kolman/小林研一郎 ©山本倫子/牛田智大 ©Ariga Terasawa/岡本侑也 ©Shigeto Imuraチェロ協奏曲を取り上げる。成長著しいソリストとの共演にも期待したい。 そして、11日のサントリーホールでは、小林研一郎が指揮してスメタナの連作交響詩「わが祖国」を全曲演奏する。ハンガリーやチェコのオーケストラと密接な関係を作り上げてきたマエストロの十八番。ホールは独得な高揚感に包まれるはずだ。設計、そして圭角を取ったエレガントなフレージング。ドヴォルザークの交響曲第9番では、これまでの指揮者との共演とは違った、より親密にして新鮮な「新世界より」を聴かせてくれるのではないか。 1月9日の東京芸術劇場は牛田智大を迎えてラフマニノフのピアノ協奏曲第2番、14日のサントリーホールでは岡本侑也との共演でドヴォルザークのシューベルトとはまた一味違ったロマンあふれる詩の世界を再現してくれるだろう。そして楽しみなのは、演奏される機会の多くない「バッハのカンタータ『泣き、嘆き、悲しみ、慄き』の主題による変奏曲」。世界がさまざまな出来事に大きく揺れる今、オピッツの風格ある重厚な音による演奏が、束の間の慰めを与えてくれるかもしれない。 今年の出来事に思いを馳せ、明るい2024.1/9(火)19:00 東京芸術劇場 コンサートホール ◎1/11(木)19:00 ☆、1/14(日)19:15 ● サントリーホール問 ジャパン・アーツぴあ0570-00-1212 https://www.japanarts.co.jp他公演1/5(金) 札幌コンサートホール Kitara ◎(オフィス・ワン011-612-8696)1/7(日) ハーモニーホールふくい ◎(0776-38-8282)1/8(月・祝) 兵庫県立芸術文化センター ●(0798-68-0255)1/12(金) ミューザ川崎シンフォニーホール ◎●(神奈川芸術協会045-453-5080)1/13(土) いわきアリオス ☆(0246-22-5800)☆小林研一郎(指揮) ◎牛田智大(ピアノ) ●岡本侑也(チェロ)12/15(金)19:00 東京オペラシティ コンサートホール問 パシフィック・コンサート・マネジメント03-3552-3831 http://www.pacific-concert.co.jp未来を祈りたい年の瀬によく合う、魅力的なプログラム。自然さと説得力にあふれた音楽を届けてくれるベテランピアニストの手で、じっくりと聴きたい。©Concerto Winderstein文:鈴木淳史文:高坂はる香プラハ交響楽団創立90周年を迎えるチェコの名門が5年ぶりの来日ゲルハルト・オピッツ ピアノ・リサイタルシューベルトとリスト 詩的なものへの憧憬とその軌跡ドイツ・ピアニズムの継承者が繊細に描き出す人心の機微 近年ますます円熟味を増している、ゲルハルト・オピッツの音楽。1953年バイエルン州生まれ、ドイツの正統的なピアニズムをいまに伝える稀有な存在であり、19歳で師事したヴィルヘルム・ケンプから自らを後継する者に認められたというエピソードでも知られる。 今年のリサイタルで取り上げるのは、まずオピッツが得意とするシューベルトから、未完の作品であるピアノ・ソナタ第15番「レリーク」。今回彼は「第1、2楽章が圧倒的に美しく完成されている」ことから、補筆をせず演奏するとのこと。さらに、リストがたびたび演奏したといわれるシューベルトの名作「さすらい人幻想曲」を取り上げ、続くリストによる詩情に満ちた一連の作品につなげる。 ギリシャ神話に関連するバラード第2番と、「巡礼の年第2年『イタリア』」より「ペトラルカの3つのソネット」では、
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