eぶらあぼ 2023.12月号
127/149

R■■■■■124日本を代表するチェロ奏者が「今届けたい『名曲』」を奏でたアルバムだが、同時代の日本人作曲家の作品を主軸とした、通常の「チェロ小品集」とは一線を画す内容となっている。宮田の雄弁かつ細やかな歌い回しは、全編にわたって実に魅力的。盟友ジェルネのピアノも美しく寄り添い、時に熱く盛り上げる。中でも、久石譲、菅野祐悟、吉松隆、坂本龍一といった日本の人気作曲家の作品は、唯一無二の聴きもの。他を含む各曲が例えばサン=サーンスの「白鳥」と同じ意味を持つクラシカルな小品として提示されるので、チェロの新レパートリーを知る喜びも味わえる。  (柴田克彦)スペインのセビリャで研鑽を積んだ若き大器ギタリストの新譜。フラメンコはもちろん、フォルクローレ・ミュージシャンの両親の下に生まれ育ってラテン音楽にも親しんでおり、ボリビアで世界的なチャランゴ奏者との共演を実現するなど幅広いレパートリーに定評のある逸材。今回はテデスコに始まり、アルベニス、グラナドス、ロドリーゴからヨークまで、クラシック系のギター名曲を集めた1枚。タイトルの「RECUERDO=回想」が意味するように、収録曲の大半はかつての愛奏曲たちで、27歳の今あらためて対峙することで生まれる充実感が大きな聴きどころになっている。(東端哲也)交響詩というジャンルはフランクとリストの間の親密な交流から生まれ、リストによって命名された。が、その後交響詩は時に同一の作曲家においても年代により大きな変貌を遂げる。本盤は19世紀後半から20世紀初頭にかけてフランスで成立した、広い意味での交響詩を体系的に収めた貴重なアルバムである。多くがマイナーな作曲家による作品群はフランスの交響詩の歴史と多様性を示している一方で、そこからはサン=サーンスやショーソンなど多くの「ワグネリアン作曲家」を輩出した同時代のフランスを反映して越境的、さらには異国趣味的な音響世界が聴こえてくるところも大変興味深い。(大津 聡)プーランクのスペシャリスト鈴村真貴子のピアノ曲集第二弾は、「夜想曲集」にはじまり夜にまつわる作品を編んだ。心の奥底の喪失感を時に素直に、時には明るく覆い隠しているというのが鈴村のプーランク理解。快活な旋律の中にふっと現れるメランコリー、端正さを彩る洒脱な語り、不意を突いて鋭いきっさきをみせる狂気…弾むリズム、能弁に流れるメロディーのうちにプーランク独自のハーモニーや音感を捕まえ、さりげなくスポットを当てる。この演奏には作曲家への理解が音の解釈となって鮮やかに表現されているが、それは作品に沈潜しその音楽を血肉化してはじめて可能になるものだ。(江藤光紀)コジマ録音ALCD-7296 ¥3300(税込)オクタヴィア・レコードOVCT-00210 ¥3850(税込)村松崇継:Earth/久石譲(篠田大介編):Asian Dream Song/サン=サーンス:歌劇《サムソンとデリラ》より〈あなたの声に私の心は開く〉/菅野祐悟:ACT/ピアソラ(伊賀拓郎編):リベルタンゴ/吉松隆:ベルベット・ワルツ/坂本龍一(篠田編):星になった少年 他宮田大(チェロ)ジュリアン・ジェルネ(ピアノ)日本コロムビアCOCQ-85615 ¥3300(税込)カステルヌオーヴォ=テデスコ:ソナタ―ボッケリーニ讃歌―、タランテラ/アルベニス:マジョルカ op.202/グラナドス:「スペイン舞曲集」より〈悲しき舞曲〉/ロドリーゴ:祈りと踊り―マヌエル・デ・ファリャを称えて―/ヨーク:序奏とサンバースト 他菅沼聖隆(ギター)フランク:呪われた狩人/ブーランジェ:春の朝に/ダンディ:イシュタル/デュカス:魔法使いの弟子/オルメス:夜と愛/ボニス:クレオパトラの夢/デュパルク:星々に /ショーソン:湖の乙女ヴィヴィアン/ソイ:神秘的なダンス/シャブリエ:スペイン/サン=サーンス:死の舞踏 他ニコライ・シェプス=ズナイダー(指揮)リヨン国立管弦楽団Bru Zane/ナクソス・ジャパンNYCX-10434(2枚組) ¥4950(税込)プーランク:夜想曲集、「絹の音楽」より〈ワルツ〉、アルバムの頁、「ジャンヌの扇」より〈パストゥレル〉、フランセーズ―クロード・ジェルヴェーズ(16世紀)による―、バッハの名による即興ワルツ、2つの間奏曲、メランコリー、ナゼルの夕べ―ピアノのための組曲―鈴村真貴子(ピアノ)星々に〜フランスの交響詩集/ニコライ・シェプス=ズナイダー&リヨン国立管フランシス・プーランク:ピアノ作品集 Vol.2/鈴村真貴子CDCDCDSACDVOCE―フェイヴァリット・メロディー/宮田大ECUERDO VOL.I/菅沼聖隆

元のページ  ../index.html#127

このブックを見る