eぶらあぼ 2023.11月号
72/157

第28回 二期会 ディーヴァ, ディーヴォ未来のスター・ソプラノ3人のデビュー・コンサート 二期会オペラ研修所のマスタークラスを修了したばかりの期待の新星たちが初々しい歌声を披露する「二期会 ディーヴァ, ディーヴォ」。今まさに羽ばたこうとする瞬間の情熱がステージにあふれる。12月の公演には3人のソプラノが登場する。 東幸慧は東京音大出身。研修所の公演でもツェルビネッタ(プロローグ)やジルダを披露していたレッジェーロ。今回は《椿姫》の〈ああ、そはかの人か〉や《ラクメ》の〈若いインドの娘はどこに(鐘の歌)〉で、鮮やかなコロラトゥーラを聴かせてくれるはず。 岩谷香菜子は東京藝大出身。R.シュトラウスの歌曲〈私は一本の花束を作りたかったの〉と《ランメルモールのルチア》の〈あたりは沈黙に閉ざされ〉を歌う。後者はコロラトゥーラのアリアだけれど、研修所の修了試演会での彼女の、ジルダの〈いつも日曜日に教会で〉を聴くと、抒情的なリリコの充実した響きも印象的12/21(木)14:00 Hakuju Hall問 Hakuju Hall チケットセンター03-5478-8700 https://hakujuhall.jp11/23(木・祝)14:00 王子ホール問 マリーコンツェルト music@malykoncert.comhttps://chihiroinda.com https://yohsukeinda.com69だ。広いレパートリーが期待できそう。 中江万柚子は宝塚歌劇団の男役として活動後に桐朋学園で学んだという異色の経歴。力強いリリコ・スピントが魅力。《仮面舞踏会》の〈あの草を摘みとって〉はもちろんぴったりだろうし、レッジェーロ寄りの《連隊の娘》のマり)。ただしその醍醐味は、2人が高い技量と姉弟ゆえの親和性を兼備しているからこそ生まれるものであろう。 彼らが「1年がかりで準備し、最も多くリハーサルをするので、活動の中でも比重が高い」と語るのがデュオリサイタル。今回のプログラムはまず、古典派ベートーヴェンの二重奏曲第2番、チェロの学習者にはお馴染みドッツァウアーの「ウィリアム・テル」によるデュオ・コンチェルタンテとチェロ奏者サレスキの「ラ・フォリア」に基づく作品。ここまでは親しみやすい音楽だ。そして20世紀ギリシャの大家スカルコッタスの二重奏曲は、難技巧の応酬が耳目を奪う注東 幸慧岩谷香菜子中江万柚子 ©Yoshinobu Fukaya/auraY2リーのアリア〈フランスに栄光あれ〉を歌うのも楽しみだ。 これまでの出演者たち同様、明日の日本のオペラ界・声楽界を担う存在。いち早く“推しメン”を見つける絶好のチャンスだ! 恒例のトークコーナーも微笑ましい。左:印田陽介 右:印田千裕目曲。さらには先鋭的な現代音楽シーンで活躍する鈴木治行の作品で、新たな世界を提示する。我々も稀少なデュオを体感し、楽しみの幅を広げたい。文:宮本 明文:柴田克彦印田千裕 & 印田陽介 デュオリサイタル 〜ヴァイオリンとチェロの響き Vol.12〜8本の弦が生み出す唯一無二の音楽世界 ヴァイオリンとチェロの二重奏でレギュラー活動を行っている世界でも稀なデュオ、印田千裕と印田陽介の姉弟が、12回目のリサイタルを行う。これはレアな形態&楽曲を堪能できる貴重なチャンスだ。 ヴァイオリンの千裕は、東京藝大と英国王立音楽院で研鑽後、ソロや室内楽で活躍。東京オペラシティの「B→C」にも出演し、東京ユニバーサル・フィルのゲストコンサートマスターも務めている。チェロの陽介も、東京藝大とプラハ音楽院で学んだ後、同じくソリストとして幅広い活動を展開中。2人は、陽介が帰国した2012年にデュオを組み、編曲ものを含む多彩なコンサートを行うと同時に、定期演奏会にあたる年1回のリサイタルを続けている。この形態は、2本の弦楽器が交わる独特の響きと、「三、四重奏にはないソリスト的な対話や丁々発止のやりとり」が魅力(2021年インタビューよ

元のページ  ../index.html#72

このブックを見る