eぶらあぼ 2023.11月号
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11/19(日)15:00 ヨコスカ・ベイサイド・ポケット問 横須賀芸術劇場046-823-9999 https://www.yokosuka-arts.or.jpみなとみらいシリーズ定期演奏会 第390回11/18(土)14:00 横浜みなとみらいホール問 神奈川フィル・チケットサービス045-226-5107 https://www.kanaphil.or.jp プログラム後半は、キング・クリムゾンの「21世紀のスキッツォイド・マン」から「スターレス」まで、1970年代のプログレ全盛期の名曲が並ぶ(荒井編)。暗い情熱が渦巻く、重厚感ある演奏を繰り広げてくれるだろう。 両者に共通するのは、ベートーヴェンやビートルズに慣れた耳には、ちょっとゆがんだように聴こえるところか。そして、彼らの音楽がかっこいいのは、そんな「ゆがみ」があるからこそなのだ。65“新世界”アメリカが故郷の記憶を呼び覚ます 神奈川フィルハーモニー管弦楽団のみなとみらいシリーズ定期演奏会第390回(11/18)は、ダイバーシティの時代を象徴、人種やジェンダー(性差)、大陸の壁を一気に取り払った画期的なキャスティング、プログラミングだ。 指揮は2006年にフランクフルトのショルティ国際指揮者コンクールで女性初の1位を得たシーヨン・ソン(1975~)。韓国プサン市の出身だが、2001年から06年にわたってベルリンのハンス・アイスラー音楽大学で旧東独を代表するオペラのカペルマイスター(楽長)、ロルフ・ロイター教授の指導を受け、まずはドイツの歌劇場でキャリアを積んだ。ヴァイオリン独奏の辻彩奈(1997~)は2016年のモントリオール国際音楽コンクールに優勝して頭角を現し、昨年は神奈川県民ホール主催《浜辺のアインシュタイン》(ウィルソン&グラス)新演出上演に参加、演奏だけにとどまらない強い存在感を示した。辻が弾くコルンゴルトのヴァイオリン協奏曲は、シーヨン・ソンウィーンの天才少年だった作曲家がユダヤ系であるがゆえにナチスから逃れて米国へ渡りハリウッドの映画音楽で成功した後、純音楽へ戻って最初の時期(1945年)に書いた名曲。 「新世界より」はニューヨーク滞在中のドヴォルザークのチェコへの郷愁、米辻 彩奈 ©Makoto Kamiya先住民の音楽が渾然一体となった傑作。冒頭の日本初演曲「アメリカにおけるエチオピアの影」はアフリカ系アメリカ人の女性作曲家第1号、フローレンス・プライス(1887~1953)が1932年に作曲、アフリカから最初に奴隷としてアメリカへ連れてこられた黒人の物語だ。左より: 藤森亮一、戸澤哲夫、小野富士、荒井英治 演奏会場となる横須賀は、黒船来航の地であり、軍港と住宅地が隣り合い、ハイテクパークもある。様々なものが溶け合いつつトガった雰囲気も宿す。両者が出会うには恰好の舞台だ。文:池田卓夫文:鈴木淳史シーヨン・ソン(指揮) 神奈川フィルハーモニー管弦楽団モルゴーア・クァルテットクラシック/プログレッシヴ・ロック名曲選 Vol.2 「世紀の饗宴」名四重奏団が放つ異彩の“ロックイズム”を体感せよ! ショスタコーヴィチとキング・クリムゾン。旧ソ連を代表する作曲家と英国のプログレ・バンドによる饗宴である。こんなプログラムを組んでくるのは、世界広しといえどもモルゴーア・クァルテットだけだ。 モルゴーア・クァルテットは、ショスタコーヴィチの弦楽四重奏曲を演奏するために結成された、異色の四重奏団。彼らのレパートリーのもう一つの柱は、プログレッシヴ・ロックだ。つまり、この「饗宴」には、彼らのエッセンスが凝縮されているといっていい。 ショスタコーヴィチの弦楽四重奏曲第9番は、シニカルさと優美さが両立する不思議な作品。さらに、交響曲第9番の第1楽章の四重奏版(荒井英治編)も演奏される。ソ連当局に「ベートーヴェンの第九のような曲を」と期待されていたにも関わらず、オチャラケ風味を前面に出した、まさしくロックな音楽だ。

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