eぶらあぼ 2023.11月号
54/157

TRAGIC TRILOGY Ⅲ 「蝶々夫人」 (全3幕)12/8(金)15:00 Hakuju Hall問 Hakuju Hall チケットセンター03-5478-8700 https://hakujuhall.jp51Interview城 宏憲(テノール)蝶々さんが本気で惚れたくなるピンカートンを演じる 登場人物を主な3人に絞ることで、オも活きません。シャープレスは悲劇ペラの核心を凝縮して楽しめる——。に至る前に何度も忠告しますが、ピンねらい通りの成果を上げているHakuju カートンは『領事さんはお年ですが、僕Hallのシリーズ「TRAGIC TRILOGY(トは若いので経験したい』という姿勢でラジック・トリロジー)」の第3弾(最終回)す。ただの女好きではなく、蝶々さんは、プッチーニ《蝶々夫人》。ピンカートだからこそ自分の妻にしたかった。そン役のテノール城宏憲に話を聞くと、こう思いたいんです。いつも交錯するのオペラを何倍も深く味わえるというのが森鷗外の『舞姫』で、日本人はエリ期待が膨らんできた。スを手放した豊太郎をよく弁護します ドラマティックな役のイメージが強が、僕はピンカートンが豊太郎だと思っい城だが、7月に兵庫で上演された《ドて、なぜ長崎を離れなければならなン・ジョヴァンニ》のドン・オッターヴィオかったのかを考えます」が秀逸で、テクニックがたしかであるこ しかも、登場人物が絞られドラマがとを証明した。それはピンカートンに「凝縮」されているから、そこに焦点がも活かされる。強く当たる。 「第1幕は長崎の夜景を蝶々さんと見 「ほかの要素が削られている分、舞台に立つ時間が長く、お客さんの視線も下ろしながら、ロマンティックに浸りま突き刺さって、気を抜く時間がないです。そのときはピンカートンも本気で、す。それだけに、壮大な愛の破滅の物蝶々さんを惚れさせるだけの男だっ語を波に溺れるように見ていただきたた。そうでないとストーリーが弱くなるので、僕は『愛の二重唱』には常に本いな、と。園田隆一郎さんのピアノと1対1なので、緩急も鮮やかです。ま気でトライします。持ち前のリリックた、それぞれの歌手の呼吸、原語も理な声を大いに使えると思います」解している園田さんの伴奏では、すご ピンカートンは一般にろくでなしだく歌いやすいんです」と思われている。城もそれは認めたう 蝶々さんは、城が「歌ありきで演技えで話す。 「海軍士官なのでいつも男だけの船上にいる分、停泊すれば女性を求めるでしょう。そこをちゃんと描かないと、彼に恋する蝶々さんも、シャープレス11/3(金・祝)14:00 小金井 宮地楽器ホール問 小金井 宮地楽器ホール チケットデスク042-380-8099 https://koganei-civic-center.jp他公演 11/4(土) 神奈川県立音楽堂(神奈川芸術協会045-453-5080)    11/5(日) 岡崎市シビックセンター(0564-72-5111)みで、聴き手をファンタスティックな世界に引き込んでくれることだろう。しめくくりはストラヴィンスキーの「春の祭典」。2台ピアノでセンセーショナルな管弦楽曲を奏でる迫力を体感できる意欲的な選曲。二人のデュオからは「音楽を奏でる喜び」がダイレクトに伝わってくる。姉妹共演ならではの華やかなコンサートが待ち遠しい。を合わせる歌手が多いなか、キャラクターを作ってそこに声をはめ込む姿勢が理想的」と語る青木エマ。シャープレスは「舞台上のアクシデントも持ち前のインテリジェンスで想像を超える答えを紡ぎ出す」大西宇宙。そこに今回は、スズキ役として山下裕賀が加わる。気迫あふれる歌手とピアノのアンサンブルを、演出・脚本の田尾下哲がさらに緻密な心理劇に仕上げると思われ、楽しみでならない。左より:児玉麻里、児玉 桃 ©Carolien Sikkenk取材・文:香原斗志文:伊藤制子©北山宏一児玉麻里 & 児玉 桃 ピアノ・デュオ阿吽の呼吸で魅せる精緻なデュオ 姉妹それぞれがソロで活躍するピアニストの児玉麻里と児玉桃。幼い頃から自宅で自然にデュオに親しんできた二人が、連弾と2台ピアノでタッグを組むコンサートを開く。幅広いレパートリーをもつ姉妹だが、長らくパリで学んでおり、フランス音楽にも定評がある。 コンサートはまず、息のあった絶妙な空気感を楽しんでほしいラヴェルの「マ・メール・ロワ」の1台四手連弾から始まる。そしてチャイコフスキーの「くるみ割り人形」(アレンスキー編)抜粋は、子どもも楽しめるバレエ音楽の傑作。姉妹によるディスクもリリース済

元のページ  ../index.html#54

このブックを見る