eぶらあぼ 2023.11月号
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第540回日経ミューズサロンフィルハーモニックトリオ・ウィーン with 三輪 郁ウィーン伝統の音色に浸る贅沢な一夜 ウィーン・フィルのコンサートマスターを長く務めるフォルクハルト・シュトイデ。同楽団メンバーとともにシュトイデ弦楽四重奏団としても活動しているが、今秋はそのうち3人、彼とエルマー・ランダラー(ヴィオラ)とヴォルフガング・ヘルテル(チェロ)による、新たな「フィルハーモニックトリオ・ウィーン」として演奏会を開く。本公演ではさらに、ウィーンとゆかりの深い日本人ピアニスト、三輪郁も共演する。ウィーン国立音楽大学および同大学院に学んだ三輪は、シュトイデとも長年デュオ11/22(水)19:00 ルーテル市ヶ谷ホール問 プロアルテムジケ03-3943-6677 https://www.proarte.jp11/21(火)18:30 日経ホール問 日経公演事務局03-5227-4227https://stage.exhn.jp47ファツィオリジャパン 15周年記念コンサートヴァディム・ホロデンコ ピアノリサイタル & コンチェルト充実度高まるウクライナの若き巨匠 2013年ヴァン・クライバーン国際ピアノコンクールの覇者、ヴァディム・ホロデンコ。20世紀の名手を思わせるこだわりの選曲とアプローチで、来日のたびに刺激を与えてくれる、ウクライナ生まれのピアニストだ。そんな彼が4年ぶりの来日で二つの興味深い公演の舞台に立つ。 リサイタルで演奏するのは、変奏曲プログラム。なかでもジェフスキー「不屈の民」変奏曲が祖国への想いを込めた選曲であることは、想像に難くない。 もう一つは東京21世紀管弦楽団との共演。モーツァルトのピアノ協奏曲第20「フロレスタン・トリオ」のゴルトベルク変奏曲熟練の名手が新たな編曲で挑むバッハの最高峰 バロック時代の巨匠J.S.バッハの「ゴルトベルク変奏曲」は20世紀初頭からのバロック音楽復興の流れのなかでも、最も多様な形で再演されてきた作品だろう。もちろんオリジナルのチェンバロでの演奏もあり、グールドに代表されるモダン・ピアノでの挑戦、そして実に様々な編成、リコーダー・アンサンブルから管弦楽版に至るまでの再演があった。 モダン、バロック奏法ともに探究を続け、作編曲でも活躍するチェリスト・津留崎直紀は新たな「弦楽三重奏版」を組んでおり、同地の音色を知悉する名匠だ。 プログラムが独特で、まずトリオの3人それぞれが三輪のピアノとデュオ曲を聴かせる。特にシュトイデのソロによる《ばらの騎士》のメロディは注目。その後は、トリオによるシューベルトの弦楽三重奏曲第1番、そして三輪も加わってモーツァルトのピアノ四重奏曲第1番という、ウィーンの大作曲家たちの名作が奏でられる。ウィーンの音を愛する人は聴き逃がすわけにはいかない。番とベートーヴェンのピアノ協奏曲第4番で、初めての弾き振りに挑む。30代後半を迎えた彼が、より大きな音楽づくりに向かう第一歩を見届けることになる。 両公演でホロデンコが弾くのは、「インスピレーションを与え、新しい地平を見せてくれる」というファツィオリのピアノ。今回もきっと持ち前の巧みなタッチで、無数の種類の音をホールに響かせるのだろう。ピアノリサイタル 12/5(火)19:00 豊洲シビックセンターホールコンチェルト 12/12(火)19:00 紀尾井ホール問 ファツィオリジャパン concert@fazioli.co.jp https://fazioli.co.jpの編曲を作り、夫人の津留崎晴代(ヴァイオリン)、上野なち子(ヴィオラ)とともにこの大作に挑む。「チェンバロの技巧を駆使したチャレンジングな原曲ならば、こちらもチャレンジングで技巧的に」と津留崎。「より有機的で、立体的な」ゴルトベルクを目指すという。その挑戦は1時間半にわたる全曲演奏。変奏曲の技法を駆使した傑作が3本の弦楽器で新しい姿を現す。フィルハーモニックトリオ・ウィーン三輪 郁 ©小島竜生津留崎直紀文:林 昌英文:高坂はる香文:片桐卓也

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