eぶらあぼ 2023.11月号
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 神奈川県民ホールは芸術総監督の一柳慧(2022年10月7日没)亡き後もひたすら、同時代の音楽と聴衆の橋渡し役を担い続ける。24年10月5&6日には大ホールでイタリアの現存作曲家サルヴァトーレ・シャリーノ(1947~)のオペラ《ローエングリン》(1982/84)全曲上演を予定。これに先立つ導入企画「シャリーノ祭り」を今年11月18日に小ホールで、指揮の杉山洋一、演出の吉開菜央、ホール芸術参与の沼野雄司(音楽学者)の話、石上真由子(ヴァイオリン)らの演奏を交えて行う。一方、2021年に小ホールで始めた「C×C(シー・バイ・シー)」はComposer、Classic、Contemporaryの3つの「C」と様々な楽器を組み合わせ過去、現在、未来をつなぎ、作曲家自身が脈々と営まれる創造の過程を訪ねるシリーズ。24年1月13日のVol.5では夏田昌和(1968~)が生誕150年のシェーンベルクと向き合う。 杉山と沼野、夏田を迎えたオンラインのインタビュー。まずは「シャリーノ祭り」から。――あえて大雑把な言い方をすれば、ヴェルディやプッチーニと同じ「イタリアオペラ」ではありますが。沼野「知名度は100分の1くらいでしょう(笑)。 シャリーノはヴェルディやプッチーニの情感豊かに歌い上げるイメージの対極にあり、同じイタリアのカンタービレ(旋律美)でも、壊れ物のように繊細極まりない世界です。ワーグナーが想を得た中世オランダの《白鳥の騎士》伝説を19世紀フランスの象徴主義詩人ラフォルグがパロディ化、それを20世紀のシャリーノが再び取材・文:池田卓夫Yoichi Sugiyama/指揮Yuji Numano/音楽学者神奈川県民ホール・神奈川県立音楽堂 芸術参与Masakazu Natsuda/作曲©ayumi kakamu©satoshi aoyagi32時代を切りひらく芸術家たちの創造に耳をすます杉山洋一 沼野雄司夏田昌和

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