eぶらあぼ 2023.11月号
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126ドヴォルザーク:チェロ協奏曲/笹沼樹&スロヴァキア・フィルマーラー:交響曲第5番/アンドレア・バッティストーニ&東京フィルファンタジア/イゴール・レヴィットソロやカルテット・アマービレ等の室内楽、東響の客演首席奏者など幅広い活動を行っている気鋭のチェリスト笹沼樹が、ドヴォルザークの名曲を気迫十分に奏でた1枚。今年7月のスロヴァキア・フィル来日公演のライブ録音で、そのまま入った拍手や歓声が臨場感を伝えてくれる。笹沼は、芳醇な音色で情熱的なソロを繰り広げており、現地を含めた数回の共演を踏まえての演奏だけあって、楽曲への共感度やバックとの一体感も申し分ない。じっくりと奏された第2楽章は特に聴きもの。アンコールで弾かれた《ルサルカ》の〈月に寄せる歌〉の切ない美しさにも酔わされる。(柴田克彦)青柳いづみこと西本夏生のピアノ・デュオで、スペインから霊感を受けたフランス音楽集。ドビュッシーの「イベリア」が面白い。管弦楽曲からの編曲だが、音楽内容も響きも実に豊かだ。セビリャーナスの踊りの躍動、ウキウキとした散策、夜のしじまの繊細な響きの移ろい、何が出てくるかわからない祭りの朝など、聴き手の想像力を大いに刺激する。「白と黒で」は多彩な楽想の交錯から、ドビュッシー晩年の自由で融通無碍な境地が透けて見える。ミヨー「屋根の上の牛」は陽気な主題に、ブラジルの俗謡や踊りの音楽が、時に調子外れに挟まる。そのギャップが楽しい。 (横原千史)世界の主要歌劇場、オーケストラと共演を重ねつつ、2016年の首席指揮者就任以来、東京フィルとともに快進撃を続ける36歳の俊英。同“黄金”コンビでDENONレーベルに残している録音から、遂に昨シーズンにとりあげて絶賛を博したマーラーの“5番”をリリース。2014年発売の“1番”以来のマーラーで、しかも最高の人気作だが今回も期待を裏切らない。マエストロが本作に見出したものは「暗闇や絶望から、光、希望、新たな生命へと至る旅」。冒頭の葬送行進曲から有名なアダージェットを経てフィナーレまで、感情の劇的な起伏が聴き手の心に激しく訴えかけてくる。 (東端哲也)ここでの「ファンタジア」は、バッハ、リスト、ベルク、ブゾーニという2世紀にもわたる作曲家の作品に独自の文脈を見出すための概念として、即興性や想像力、さらには哲学的、超越的な思索を意味する。ブゾーニの「対位法的幻想曲」はバッハへの眼差しから生まれ、ベルクはリストを参照し、リストは未来のベルクやブゾーニの音楽への暗示である。すでに「ハンマークラヴィーア」や「ゴルトベルク変奏曲」に取り組んできたレヴィットらしい、晦渋でありながら、高度に戦略的なコンセプト・アルバムである。異なる様式の音楽を的確に捉えた演奏も見事。じっくりと読み解く楽しみを味わいたい。(大津 聡)J.S.バッハ:エア、半音階的幻想曲とフーガ/リスト:ピアノ・ソナタ ロ短調、影法師/ベルク:ピアノ曲 ロ短調、ピアノ・ソナタ/ブゾーニ:対位法的幻想曲、クリスマスの夜イゴール・レヴィット(ピアノ)コジマ録音ALCD-7295 ¥3300(税込)日本コロムビアCOCQ-85613 ¥3300(税込)ソニーミュージックSICC 30728〜9(2枚組) ¥3960(税込)スメタナ:連作交響詩「わが祖国」より〈ヴルタヴァ(モルダウ)〉/ドヴォルザーク:チェロ協奏曲、歌劇《ルサルカ》より〈月に寄せる歌〉笹沼樹(チェロ)ダニエル・ライスキン(指揮)スロヴァキア・フィルハーモニー管弦楽団収録:2023年7月、サントリーホール(ライブ)オクタヴィア・レコードOVCL-00828 ¥3850(税込)ラヴェル:「耳で聴く風景」より〈ハバネラ〉/ドビュッシー:リンダラハ、イベリア(A.カプレ編)、白と黒で/ミヨー:屋根の上の牛(作曲者による連弾用編曲版)青柳いづみこ 西本夏生(以上ピアノ)マーラー:交響曲第5番 嬰ハ短調アンドレア・バッティストーニ(指揮)東京フィルハーモニー交響楽団SACDCDCDCDCaprice ―気まぐれ―/青柳いづみこ&西本夏生

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