第986回 定期演奏会Cシリーズ11/12(日)14:00 東京芸術劇場 コンサートホール東京都交響楽団 小田原公演 オーケストラ・キャラバン11/13(月)18:30 小田原三の丸ホール問 都響ガイド0570-056-057 https://www.tmso.or.jp プログラムは、クラリネット発祥の地ドイツと、自身が生きる日本に焦点を当てた内容。まずB=バッハのオルガン曲、前奏曲とフーガ「聖アン」BWV552を聴かせる。これは本人いわく「クラリネットだときっと心地よい響きになる」。他のドイツ組は、「視覚的にも面白いことがある」と語る人気作曲家&クラリネット奏者ヴィトマンの作品と、陰影に富んだレーガーのソナタ。日本勢は、バロックのソナタ構成を模した伊藤康英の作品、音の明暗に着目した坂田直樹の作品に、大学時代からの盟友で「綺麗な旋律を書いてくれる」葛西竜之介への委嘱作と、2020年代に誕生した興味津々の最新作が並ぶ。 なお、彼ゆかりの地・名古屋でもB→C10/1(日)14:00 名古屋/電気文化会館 ザ・コンサートホール問 ON music project 080-4300-7611 https://www.on-music-project.com10/3(火)19:00 東京オペラシティ リサイタルホール問 東京オペラシティチケットセンター03-5353-9999 https://www.operacity.jp60ジョン・アクセルロッド ©Marc Roger楽」は2002年に弦楽合奏のために書かれた、淡いノスタルジーが漂う静謐な作品だ。シベリウスのヴァイオリン協奏曲では、2012年ハノーファー・ヨーゼフ・ヨアヒム国際ヴァイオリンコンクール優勝、第15回チャイコフスキー国際コンクール第3位のアレクサンドラ・コ公演を開催。ここはぜひ清新な感覚を味わおう。アレクサンドラ・コヌノヴァヌノヴァが独奏を務める。モルドヴァ出身の注目株。ショスタコーヴィチの交響曲第5番は、作曲者随一の人気作にして問題作。このプログラムで聴くからこその発見があるかもしれない。 なお、同一内容の公演が小田原三の丸ホールでも開催される。©Kosuke Atsumi文:飯尾洋一文:柴田克彦ジョン・アクセルロッド(指揮) 東京都交響楽団コロナ禍での危機を救ったヒーローが待望の再登場! コロナ禍による入国制限で海外の演奏家がほぼ来日できなくなってしまった頃、ジョン・アクセルロッドが代役として日本のオーケストラで大活躍をくりひろげたのは記憶に新しいところ。入国制限の直前に来日していたことから、出国せずにそのまま日本に留まり、3ヵ月にわたり全国各地のオーケストラを指揮した。そのなかには2021年12月と翌年2月に指揮した都響の公演も含まれる。多くの楽団のピンチを救ってくれたアクセルロッドには「全日本首席客演指揮者」の称号を贈りたくなるほどであった。 そのアクセルロッドが11月、ふたたび都響の指揮台に立つ。プログラムはシルヴェストロフの「沈黙の音楽」、シベリウスのヴァイオリン協奏曲、ショスタコーヴィチの交響曲第5番。ウクライナ、フィンランド、ロシアの作曲家が並んだ「地政学的な」プログラムとでも言えるだろうか。シルヴェストロフは現代ウクライナの作曲家。「沈黙の音東京オペラシティ B■■■■■■■→C 亀居優斗(クラリネット)クラリネットの可能性を体感する貴重な機会 東京オペラシティ名物「B→C」の中でも、管楽器奏者の回は特に新鮮な刺激を受けるケースが多い。何しろ管楽器は、ソロを聴く機会が少ない上に、演目が各楽器の枠内にとどまりがちだ。その点、クオリティの高い作品や意欲的な新作が渾身の演奏で披露される当シリーズは、楽器に馴染みがない人にも音楽的な魅力が充分伝わるがゆえに、足を運ぶ甲斐がある。 クラリネットの亀居優斗の公演もその好例となろう。東京藝大で学んだ彼は、2021年日本音楽コンクールで優勝した注目の逸材。18~22年東京佼成ウインドオーケストラに在籍し、22年4月からは神奈川フィルハーモニー管弦楽団の首席奏者を務めている。今回は、これまで吹奏楽、オケ、ソロのフィールドで培ってきた自身の経験をフルに生かした「亀居優斗の総集編」。聴きどころは、彼の強みである“音色の素晴らしさ”だ。
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