eぶらあぼ 2023.10月号
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を1曲ずつ紹介するユニークな構成だ。 「エティウス・メロス(バッハへのオマージュ)」を作曲したロナウド・ミランダは1948年リオの生まれ。作曲家、教育者だけでなく音楽評論家としても活躍してきたブラジル楽壇の重鎮だ。2人目のアルメイダ・プラドは1943年にサンパウロ州の港湾都市サントスに生まれ、69年から73年のヨーロッパ留学中、パリでオリヴィエ・メシアンとナディア・ブーランジェ、ダルムシュタットでジェルジ・リゲティとルーカス・フォスの教えを受けた。2010年に亡くなるまでに、今回取り上げる「プレアンブルム」を含め400曲以上を作曲、ブラジルを代表するピアニストで指揮者のジョアン・カルロス・マルティンスは「ブラジル音楽史上、恐らく最も重要な作曲家」と追悼した。3人目、1955年サンパウロ州カンピーナス生まれ、音楽番組のプロデューサーとしても活躍するマルコ・パディーリャはプラドの生徒の1人。「インヴォカシオ」 第1番は第2番とともに2005年、「バッハの『無伴奏組51 そこでプログラムは冒頭に第13番を置き、ヴィトマンの2曲へとつなげて、ベートーヴェン作品をなぞっていく。そこからもう一度、第13番の当初のフィナーレであった「大フーガ」へと時代をジャンプする。長大で当時の人々にとっては極めて難解だったこの作品が、ヴィトマン作品の後でどんな風に響くのだろうか。ジュリアードSQの妙技を通じて確かめたい。10/20(金)19:00 紀尾井ホール問 テレビマンユニオン03-6418-8617 https://tivc.jp他公演 10/17(火) りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館(025-224-5521)    10/19(木) 兵庫県立芸術文化センター(小)(0798-68-0255)    10/22(日) 長野/飯田文化会館ホール(0265-23-3552)11/15(水)19:00 トッパンホール問 ヒラサ・オフィス03-5727-8830 https://www.hirasaoffice06.com他公演11/12(日) 横浜市港南区民文化センター ひまわりの郷(045-848-0800)11/18(土) 名古屋/Halle Runde(芸文プレイガイド052-972-0430)曲第6番』の前に置く作品」としてメネセスの委嘱を受け、作曲された。 東京から見れば地球の裏側に位置するブラジルだが、1908年から1世紀の間に26万人以上の日本人が移住、現在も約200万人の日系人が暮らす「遠くて近い国」。早くから日本と縁のあるメネセスの妙技を通じ、「サンバとカーニバル以外のブラジル音楽」を知る好機でもある。文:江藤光紀©Erin Baiano©Clive Bardaジュリアード弦楽四重奏団 “カヴァティーナ”名教師クァルテットが古典と現代の対比で魅せる 名門ジュリアード音楽院の教授陣によって構成されるジュリアード弦楽四重奏団が、伝統と革新をつなぐプログラムを引っ提げて5年ぶりに来日する。 現代音楽界のスーパースター、イェルク・ヴィトマンに彼らが委嘱した弦楽四重奏曲第8番と第10番「カヴァティーナ」は、ベートーヴェンにインスピレーションを得た「ベートーヴェン・スタディ」のⅢとⅤにあたり、いずれも弦楽四重奏曲第13番と関わりがある。第8番は第4楽章のドイツ風舞曲による変奏曲を含む三楽章の作品、同じく第10番は第5楽章の美しいカヴァティーナに触発されているのだ。アントニオ・メネセス 無伴奏チェロ・リサイタル2つの“B”~バッハの聖典とブラジルの現代作品のコラボレーション文:池田卓夫 アントニオ・メネセスは1957年にブラジルのレシフェで生まれ、10歳の時リオデジャネイロ歌劇場首席ホルン奏者だった父の勧めでチェロを始めた。16歳でイタリア出身のチェロ奏者で指揮者、偉大な教育者でもあったアントニオ・ヤニグロ(1918~89)と出会い、ヨーロッパへ。デュッセルドルフとシュトゥットガルトで教えを受けた。ヤニグロは11歳で20世紀のチェロの巨人パブロ・カザルス(1876~1973)に才能を認められ、後にパリで本格的に師事した。門下からはメネセス(1982年)、マリオ・ブルネロ(1986年)とチャイコフスキー国際コンクールのチェロ部門優勝者を輩出している。メネセスは1977年のARDミュンヘン国際コンクールでも第1位を得た。 カザルスによって「息を吹き返した」、J.S.バッハの「無伴奏チェロ組曲」全6曲をメネセスが最初に録音したのは、1993年。東京・お茶の水のカザルスホールで、かつてカザルスが弾いた名器(1733年製のマッテオ・ゴフリラー)を手に入れてのセッションだった。2004年には英国で再録音を行った。 11月15日、トッパンホールでの「アントニオ・メネセス 無伴奏チェロ・リサイタル」はバッハの「無伴奏」3曲(第1、3、6番)それぞれに先立ち、20世紀生まれのブラジル人作曲家3人の無伴奏チェロ曲

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