40 イチカシは、今年度、大きく揺れていた。 コロナ禍や少子化、入試制度の変化などがあり、最盛期に270人以上いた部員は110人まで減少していた。吹奏楽コンクールで主力となる3年生も29人しかいない。 もっとも大きな変化は石田修一先生が顧問を退いたことだ。新たな指揮者に就任したのは、10年前から音楽教員として石田先生をサポートしてきた緑川裕(ゆたか)先生。現在42歳。同部OBでもある。「僕は部員としても、教員としてもイチカシをずっと見てきて、すべてわかっているつもりでした。ところが、いざ指導してみると『これは違ったな』『これはこうでいいんだな』と一つひとつ答え合わせしながら進んでいく必要がありました」 緑川先生はそう語った。「石田先生は偉大だった、すごかったんだ」と痛感しない日はなかった。緑川 裕先生 部員たち、特に3年生は大きな不安を抱えていた。コンクールでは課題曲《レトロ》でアルトサックスの、自由曲《とこしえの声~いまここに立つ母の姿~》ではソプラノサックスの重要なソロを任され♪♪♪取材・文・写真:オザワ部長(吹奏楽作家)♪♪♪困難を乗り越えた「新生イチカシ」全国の舞台へ! 9月2日に行われた東関東吹奏楽コンクールで注目を集める学校があった。千葉県柏市にある「イチカシ」こと柏市立柏高等学校吹奏楽部だ。 イチカシは習志野高校や常総学院高校と並んで「東関東の御三家」と呼ばれる名門で、全日本吹奏楽コンクール(全国大会)の常連だ。1984年に初出場して以来、昨年まで32回出場し、金賞18回。1990年からは連続出場を継続中だ。 ところが、その日の指揮台には、イチカシを創部から指導し、全国トップバンドへ育て上げたカリスマ指導者・石田修一先生の姿はなかった。Vol.14 柏市立柏高等学校 吹奏楽部
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