eぶらあぼ 2023.10月号
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Information小山実稚恵 サントリーホール・シリーズ Concerto <以心伝心> 202310/28(土)16:00 サントリーホール出演/小山実稚恵(ピアノ)、小林研一郎(指揮)、   日本フィルハーモニー交響楽団曲目/ベートーヴェン:「エグモント」序曲          ピアノ協奏曲第3番 ハ短調 op.37          ピアノ協奏曲第5番「皇帝」 変ホ長調 op.73■ サントリーホールチケットセンター0570-55-0017 suntoryhall.pia.jp37 でもね、初めて共演した頃、僕はひどいことを彼女に言ってしまいました。今の仙台フィルがまだ宮城フィルといっていた頃ですから1980年代の後半でしょうか。ベートーヴェンの4番のコンチェルトを初めてご一緒した時でした。僕はその頃から実稚恵さんのピアノが大好きでした。ですので『実稚恵さん、最初のソロのところ、もっと自信をもって弾いてくださいますか。さっきの音は、あなたの音じゃない。本当のあなたの音を聴かせて』と。僕、なんてひどいことを言ったのでしょう」小山「いえ、あのとき、私は自分のなかで何かをまとめよう、きちんとしなくては、という思いがありすぎて硬くなっていたのです。先生はそれを一瞬で見抜いて、最高のアドバイスをくださいました。 演奏は習うものではありません。最後は自分。先生とは数えきれないぐらいご一緒していますが、いつも新鮮です。同じ曲でも違う。何度でもご一緒したくなります。思えば、先生がよく指揮されるチャイコフスキーの交響曲第5番やドヴォルザークの『新世界から』などもそうですよね。また聴きたくなります」 ベートーヴェンの3番と「皇帝」をめぐっても話は尽きない。小山「よく知られた2曲ですが、ソロのパートばかりでなく、オーケストラにもドラマがいっぱいで、弾く度に心が震えます」小林「たとえば3番のコンチェルト、ハ短調(1楽章)から音楽理論的には、ずっと離れたホ長調(2楽章)に飛ぶのですが、別の世界、宇宙に連れていってもらうぐらいの衝撃です」 サントリーホールを知り尽くした二人のサントリーホール賛も尽きない。小林「僕は、すべての音楽家のなかでサントリーホールでの演奏回数が一番多いらしいのですが、サントリーホールはまさに光り輝く音楽の殿堂ですね。その光はただ差し込むのではなく、何かひとつのサークルと申しましょうか、きらきらとした環をつくっているのです。あの、まばゆい空間での実稚恵さんとのコンチェルト。阿吽の呼吸で演奏するコバケンと日本フィルの音楽の行間も楽しみになさってください」小山「コンチェルト、大好きです。名曲を何回演奏なさっても、その度に私たちを熱くしてくださるコバケン先生とのベートーヴェン。心躍りますよね。3番のコンチェルトも『皇帝』も、あの前奏が聴こえてくるみたいです。 そして…大好きなサントリーホールでベートーヴェンの音を、存分に羽ばたかせたいです」 開演を彩る「エグモント」序曲にも遅れなきよう。小山実稚恵と小林研一郎の<以心伝心>を、あらためて体感したいものである。

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