eぶらあぼ 2023.10月号
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36 時空を超えて輝くピアノ協奏曲を仲立ちに、聴き手、指揮者、オーケストラと創造の喜びを分かち合う小山実稚恵のサントリーホール・シリーズ Concerto<以心伝心>2023が近づいてきた。 10月28日土曜の午後4時、小山実稚恵が想いを寄せるのは、ウィーン古典派の様式美を遵守しつつ、ピアノもオーケストラも驚くべき筆致に彩られたベートーヴェンのピアノ協奏曲第3番と第5番「皇帝」。指揮台に立つのは小林研一郎で、オーケストラは日本フィル。最高の役者が揃った名舞台の趣だ。小山「<以心伝心>で、ひとりの作曲家のコンチェルトを2曲弾くのは今回だけです。それもベートーヴェン! 何度もご一緒している小林研一郎先生と共演できます。こんなに嬉しいことはありません。 お客様もそうですよね。だって炎のコバケンのベートーヴェンですよ! 先生はオーラという言葉をよく口にされますが、演奏中、ただ支えてくださるだけでなく、ほんとうにオーラをくださるのです。指揮に集中しているときでも、オーケストラと会話を交わしていらっしゃるようなときでも、私のことを『見てくださっている』のです。ええ、以心伝心です。私はいつも以上にオーケストラの響きに身を委ね、コンチェルトの喜びを味わうことができるのです」 小山実稚恵の小林研一郎賛は尽きない。いっぽう、マエストロ小林研一郎の小山実稚恵賛も尽きない。小林「大切なベートーヴェンで、コバケンと日本フィルを選んでくださったことに感謝します。実稚恵さんがピンと背筋を伸ばされ、素敵な表情で私と日本フィルを見つめ、微笑んでくださるだけで、音楽が自然に溢れ出てきます。まさにオーケストラと一体となるピアニストです。取材・文:奥田佳道(指揮)Concerto <以心伝心> 2023相思相愛の音楽家たちの協奏、ホールも一体となって(ピアノ)小林研一郎&小山実稚恵

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