eぶらあぼ 2023.10月号
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CDCDCDCD148アダージョとアレグロ ファゴットとピアノによる盛期ロマン派名曲選/岡本正之&横山希モーツァルト:ピアノ協奏曲第9番&第24番/ラルス・フォークト&パリ室内管パリからの声〜フォーレ、プーランク、イザイ/ヤメン・サーディ&ナタリア・ミルシテインプーランク:声楽とピアノのための歌曲集「くじ」より〈心の女王〉(ヴァイオリンとピアノのための編曲版)、ヴァイオリン・ソナタ/イザイ:子供の夢、悲劇的な詩(以上ヴァイオリンとピアノのための編曲版)/フォーレ:ヴァイオリン・ソナタ第1番 他ヤメン・サーディ(ヴァイオリン)ナタリア・ミルシテイン(ピアノ)4人の人気若手・中堅指揮者が、未来に繰り返し演奏される管弦楽曲を世に送り出すという視点で、応募44作から選曲したのがこの《ニュークラシックプロジェクト》だ。映画音楽風・BGM風であったり、はやりの吹奏楽曲的なドラマ性を持っていたりと、作品の個性がそれぞれに異なっていながら、全体を通じて今という世相が音となって浮かんでくるところが面白い。びっくりしたのが城代悠子「IKUSA」で、シンプルで少々俗っぽいテーマを繰り返す。強引とも思える語り口なのだが、こういうストレートな分かりやすさが好きな聴衆はきっとたくさんいるはずで、プロジェクトの面目躍如といったところか。(江藤光紀)1989年から東京都交響楽団の首席ファゴット奏者を務める名手、岡本正之による19世紀前半ロマン派の作品集。柔らかな木の音色が持つどこか朴訥としたキャラクターと時折見せる敏捷性…この楽器が持つそんな真の実力を活かすことができる、優れたソリストを想定して書かれたウェーバーやダヴィッド、ヤコビ、カリヴォダなどの作品が目玉。しかし、たとえ他の楽器のために書かれた作品であっても、この楽器でしか表現し得ない魅力に溢れたシューマンの(元はホルンのための)「アダージョとアレグロ」やブラームス〈ひばりの歌〉も聴き逃せない。   (東端哲也)2022年9月に52歳間近で逝去したラルス・フォークトが、その前年に、20年から音楽監督を務めるパリ室内管を弾き振りした1枚。闘病中の録音という背景や後の別れを知って聴くと、第9番第2楽章および第24番のハ短調の音楽がよりいっそう胸に沁みるのは確かだし、絶妙なタッチとニュアンスをもって表出される前者の哀感、第24番第2楽章の“長調の清澄な哀しみ”も実に感動的だ。ただし全体を見れば、あくまでこれはモダン・ピアノの美感を生かしたシンフォニックかつ精緻なモーツァルト。円熟のピアニズムが光る生気に富んだ音楽は、一聴の価値大! (柴田克彦)イスラエル出身の新鋭、ヤメン・サーディのデビュー盤。早熟な少年時代からの活躍を経て、わずか25歳にしてウィーン国立歌劇場管弦楽団のコンサートマスターに就任という輝かしいキャリアを誇る。神童としてデビューした演奏家としては意外であるが、サーディのヴァイオリンはヴィルトゥオーゾ的というよりは室内楽的で極めて端正、ミルシテインのピアノも響きや音量は適度に抑制しながらヴァイオリンと対等な音楽を展開する。とりわけ印象的なのはプーランクのヴァイオリン・ソナタであろう。繊細なアタックと多彩な音色を駆使してこの多面的な作品の魅力を十分に引き出している。(大津 聡)岡本正之(ファゴット)横山希(ピアノ)コジマ録音ALCD-3131 ¥3300(税込)松井琉成:交響詩「うつしがたり〈翠〉」/山田竜雅:「祈り」〜女声と管弦楽のための〜/城代悠子:IKUSA/萩森英明:東京夜想曲鈴木優人 原田慶太楼 藤岡幸夫 山田和樹(以上指揮) 東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団 愛知室内オーケストラ安江陽奈子(ソプラノ)日本コロムビアCOCQ-85611 ¥3300(税込)シューマン:アダージョとアレグロ、3つのロマンス/ウェーバー:アンダンテとハンガリー風ロンド/ダヴィッド:コンチェルティーノ/ヤコビ:序奏とポロネーズ/カリヴォダ:モルソー・ド・サロン/ブラームス:ひばりの歌モーツァルト:ピアノ協奏曲第9番「ジュノム」、同第24番ラルス・フォークト(ピアノ/指揮)パリ室内管弦楽団ONDINE/ナクソス・ジャパンNYCX-10416 ¥2970(税込)dreyer gaido/東京エムプラスXDGCD 21130 ¥3300(税込)NEW CLASSICS by 4 CONDUCTORS/鈴木優人&原田慶太楼&藤岡幸夫&山田和樹

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