eぶらあぼ 2023.10月号
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CDCDCDCD142ラフマニノフの生誕150年・没後80年の今年2月、2日間で全4曲のピアノ協奏曲および「パガニーニの主題による狂詩曲」が演奏されたコンサートのライブ録音。ユジャ・ワンらしいクリアなタッチと確信に満ちた音色変化、ドゥダメル率いるロサンゼルス・フィルの巨大編成ながら小回りのきく機敏な反応、両者のスケール豊かで、かつ精緻なアンサンブルが、青年期から晩年までのラフマニノフの5作品を鮮やかに描き分ける。人気の高い第2・3番のみならず、溌剌とした第1番の終楽章や、円熟期にあった第4番の緩徐楽章も聴きもので、精細な録音でじっくりと向き合うことができる。(飯田有抄)ヴィオラの重鎮、店村眞積が自らのリサイタルの後半に選んだのは、ブラームスの弦楽六重奏曲第1番。たしかにヴィオラの魅力とアンサンブルの喜びを表現するには最高の一曲で、店村の音楽観がこの上なく反映された選曲だ。手練れたちが揃ったことで、枯れた味わいから攻めた表現まで、各々が名人芸を発揮しながら、全体はふくよかで柔らかい表情が維持されている。名匠たちによる各第2奏者の濃密な表現(殊にヴィオラ村上の凄み!)に乗って、大ベテランの各第1奏者は巧みで懐深い歌いまわしを披露。構えは大きいが細部まで行き届いた、ハーモニー豊かなブラームスに浸る。(林 昌英)「ハイドンやモーツァルトを差し置いてタイトルがヴィトマン推しとは、エイベックスもなかなか大胆だな」という第一印象は、聴き始めて一瞬で霧消した。プレストの高速パッセージをヴァイオリンと競うトランペット。しかもこのパッセージは無窮動のように延々と続く。一体どこでブレスを取っているのか? 種明かしは循環呼吸(吐きながら吸う)だ。参りました。確かにこれは史上もっとも難しいトランペット協奏曲かもしれない。エキサイトした気持ちを、フリューゲルホルンに持ち替えたナカリャコフが古典派の美しい旋律(ハイドン:オーボエ協奏曲、モーツァルト:ホルン協奏曲第4番)で静めてくれる。(江藤光紀)前半2曲は“リフキン説”に従った弦と通奏低音のみのオリジナル版。フルート独奏で有名な第2番は、ヴァイオリン独奏となる。浅井咲乃のソロがとてもいい。清潔なイントネーションで透明、実に爽やか。第3番もトランペット、オーボエなし。序曲からとても素晴らしい。特にフーガのスピード感あふれるリズムの切れ味。その後半の高揚にはワクワクさせられる。鳴っていないはずのトランペットが頭の中で響いてくるのも不思議だ。ブーレやジーグでは、旋律とバスの生き生きとした動きの絡みがとても面白い。バッハならではの耳の愉悦。疑作の第5番は珍しく、バッハ以後の新時代の息吹が感じられる。(横原千史)ラフマニノフ:ピアノ協奏曲全集 他/ユジャ・ワン&グスターボ・ドゥダメル&ロサンゼルス・フィルラフマニノフ:ピアノ協奏曲第1番〜第4番、パガニーニの主題による狂詩曲ユジャ・ワン(ピアノ)グスターボ・ドゥダメル(指揮)ロサンゼルス・フィルハーモニックブラームス:弦楽六重奏曲第1番/ストリング・アンサンブルMT空前絶後の超絶技巧〜ヴィトマン:不条理/セルゲイ・ナカリャコフバッハ 管弦楽組曲集/延原武春&コレギウム・ムジクム・テレマンJ.S.バッハ:管弦楽組曲第2番、同第3番/作曲者不詳(伝J.S.バッハ):管弦楽組曲 ト短調延原武春(指揮)コレギウム・ムジクム・テレマン収録:2023年2月、ロサンゼルス(ライブ)ユニバーサル ミュージックUCCG-45076/7(2枚組) ¥3850(税込)ナミ・レコードWWCC-7986 ¥2750(税込)ブラームス:弦楽六重奏曲第1番、同第2番より第2楽章ストリング・アンサンブルMT【フェデリコ・アゴスティーニ 中村静香 (以上ヴァイオリン) 店村眞積 村上淳一郎(以上ヴィオラ) 上村昇 山本裕康(以上チェロ)】収録:2022年11月、水戸芸術館コンサートホールATM(ライブ)マイスター・ミュージックMM-4521 ¥3520(税込)ヴィトマン:不条理〜トランペット小協奏曲/ハイドン:オーボエ協奏曲(フリューゲルホルン版)/モーツァルト:ホルン協奏曲第4番(フリューゲルホルン版)セルゲイ・ナカリャコフ(トランペット/フリューゲルホルン)イェルク・ヴィトマン(指揮)アイルランド室内管弦楽団エイベックス・クラシックスAVCL-84153 ¥2750(税込)

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