58Interview外山啓介(ピアノ)優雅で愛にあふれた音楽を“あなた”に 外山啓介はサントリーホールでのリサイタルを毎年継続している。今年は「君に捧ぐ」というタイトルを掲げた。その思いは選曲に反映されており、華麗で晴れやかな曲目が並ぶ。 「今年はとにかく明るく華やかな作品を選びました。ここ数年、規模の大きな作品だとか、マニアックな選曲だとか、気が付けばプログラムに重みが増してきていたように思うのです。リサイタル・プログラムはピアニストにとって名刺のようなものでもあるので、鎧を纏うような気持ちもあったのかもしれません。でも、そういったこだわりからだんだん自分が離れてきたこと、そしてコロナ禍を経た今、重い内容のプログラムを弾き続けるのは何か違うかなという思いもあって選曲しました」 前半にはまず、リストが歌曲をピアノ用にアレンジした作品が4曲並ぶ。 「シューマンの『献呈』やベートーヴェンの『アデライーデ』は、原曲からだいぶ自由に編曲された、リストらしいピアニズムにあふれています。リスト自身が素晴らしいピアニストでしたから、やはり効果的で巧みに書かれているんですよね。僕は学生時代に歌の伴奏を弾くのが大好きで、当時知った『アデライーデ』はいつか取り上げたいと思っ合わせ方も工夫が必要だが、今年の2回は最初の5曲を独自の曲順で提示する。特に後者は、重厚な大曲である5番ではなく、穏やかな抒情性の中にユダヤ音楽を取り入れた第4番をあえてメインにするなど、その狙いは興味深い。いつものようにチェロ・田崎瑞博のレクチャー付き、知的な観点と心に訴える最高水準の演奏で、ショスタコーヴィチの世界に入り込む。その1の昼 9/21(木)14:00 その1の夜 9/26(火)19:00その2の昼 10/26(木)14:00 その2の夜 11/1(水)19:00ルーテル市ヶ谷ホール、としま区民センター(小)(その1の昼のみ)問 ビーフラット・ミュージックプロデュース03-6908-8977 https://www.bflat-mp.comていた曲です」 ベートーヴェンのソナタは外山にとってのライフワークの一つとなっている。 「死ぬときには『全曲弾いたな』と思いたい。第24番『テレーゼ』は2楽章構成の規模の小さな作品ではありますが、ある種の新しさがあります。前作23番『熱情』のあと、ベートーヴェンは一時期ピアノ・ソナタを書かなくなりました。『熱情』で一度燃え尽きたのかもしれません。4年後に再び書き始めた最初のソナタがこの『テレーゼ』で、これだけ愛に溢れ、手放しで明るいソナタは他にありません。2楽章とも嬰ヘ長調という珍しい調性で、そこにもブランクを経たベートーヴェンの新規性を感じます」 後半は、外山が「今本当に弾きたいショパン」をチョイス。 「僕が子どもの頃にコンサートで聴いて忘れられなかったものを、今度は自分が弾いて若い人たちに届けたい。『小犬のワルツ』もそうした思いで選外山啓介 ピアノ・リサイタル 〜君に捧ぐ〜10/9(月・祝)14:00 サントリーホール問 チケットスペース03-3234-9999 https://www.ints.co.jp他公演9/2(土) 大阪/ザ・シンフォニーホール(ABCチケットインフォメーション06-6453-6000)9/9(土) 岡山県立美術館ホール(岡山音協086-224-6066)びました。『アンダンテ・スピアナートと華麗なる大ポロネーズ』は若い頃に重要な舞台で弾いた思い入れのある作品です。その頃の解釈とは変えようとか、特に変えずにいようなどと気負うことなく、今の自分の自然な感覚で表現したい。でも、楽譜には当時の書き込みがあり、初心に帰るような気持ちにもなりますね。サントリーホールの空間と響きを活かし、間合いを大切にして、優雅な音楽をお届けしたいと思います」取材・文:飯田有抄文:林 昌英©F.Fujimoto©Yuji Hori古典四重奏団 ムズカシイはおもしろい!! ショスタコーヴィチの時代 2023個性派クァルテットが新たな切り口で20世紀の大家に挑む 古典四重奏団の重要な柱となるシリーズ公演「ムズカシイはおもしろい!!」が、今年からショスタコーヴィチを取り上げる。彼らのショスタコーヴィチといえば、2019年に全15曲録音をリリースし、研ぎ澄まされた完成度で本質を抉る演奏を実現、高い評価を得た。その大きな成果を挙げたレパートリーに改めて臨み、さらなる新境地を目指す。 この度の「ショスタコーヴィチの時代」シリーズは全6回。今年は「その1」「その2」を2回ずつ行い、「その1」は2番・3番、「その2」は1番・5番・4番という独特の曲順。この作曲家の15曲は演奏時間や規模にばらつきがあり、組み
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