eぶらあぼ 2023.9月号
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9/30(土)13:00 よこすか芸術劇場10/7(土)、10/8(日)各日14:00 札幌文化芸術劇場 hitaru10/13(金)18:00、10/14(土)14:00、10/15(日)14:00 東京文化会館問 二期会チケットセンター03-3796-1831 http://www.nikikai.net※配役の詳細は上記ウェブサイトでご確認ください。46 「気高さ」に浸るならヴェルディの《ドン・カルロ》をお勧め。本来はフランス語の《ドン・カルロス》だが、いまはイタリア語での訳詞上演が多い。ただし、このオペラには5幕版と4幕版があり、筆者は「5幕版」を一押し。スペイン王子カルロとフランス王女エリザベッタが引き裂かれる名場面が5幕版第1幕であるからだ。婚約者同士が偶然に森で出会い、互いに愛情を募らせた途端、使者が「王女様は、王子様とではなく、国王様との縁組になります。受諾されますか?」ととんでもないことを伝達。戦を終わらせるための政略結婚として、人民の願いに応えて王女は「は左より:ロッテ・デ・ベア ©Philipp Ottendoerfer/レオナルド・シーニ ©Laila Pozzo/木下美穂子 ©Yoshinobu Fukaya/aura.Y2/竹多倫子 ©深谷義宣/城 宏憲/樋口達哉 ©深谷義宣進めるが、一番の期待はやはり、キャスティングの面々。王女役は温かい声音の木下美穂子と期待の新進・竹多倫子、王子役は情熱たっぷりの城宏憲とスタイリッシュな樋口達哉が競演。間に割って入る公女エボリではメゾソプラノの逸材、加藤のぞみと清水華澄、王子の親友ロドリーゴは、若手バリトンの清水勇磨と小林啓倫が競い合う。白熱のステージをお楽しみに!二期会創立70周年 記念公演 シュトゥットガルト州立歌劇場との提携公演東京二期会オペラ劇場《ドン・カルロ》新制作伊語5幕版上演! 気鋭演出家&指揮者、充実のキャスト陣で描く愛と葛藤文:岸 純信(オペラ研究家)の心をつかんで離さないエレジーだ。 続くエルガーの「海の絵」は、5曲からなる管弦楽伴奏付き歌曲集。イギリスは日本と同様、島国だけに、海のみせる表情も様々だ。「エニグマ変奏曲」の成功によりエルガー人気が高まっていく中で作曲された本作は、その光景を瑞々しい言葉と雄大な音楽で活写していく。コントラルトで登場するのは、やはり若手アーティストとして注目を集めるジェス・ダンディ。音楽とメンタルヘルスを結び付ける活動も行う才媛だ。 後半はブラームスの交響曲第4番。王道レパートリーでどんなオーケストラ・ドライヴ術を見せてくれるだろう。じっくりと耳を傾けたい。東京オペラシティシリーズ 第134回9/30(土)14:00 東京オペラシティ コンサートホール問 TOKYO SYMPHONY チケットセンター044-520-1511 https://tokyosymphony.jpい」と呟いて気絶する。立場の重みを知るがゆえの選択だが、結果、王子と彼女は共に、深い傷と葛藤を抱えつつも生きようとする。その清らかな心根に、今の日本も学ぶところが多いだろう。 今回、東京二期会がこの《ドン・カルロ》5幕版を、横須賀、札幌、東京で公演。女性演出家ロッテ・デ・ベアがドレッシーな衣裳で人物像を掘り下げ、若手指揮者レオナルド・シーニが熱く振りアンガス・ウェブスター ©Thom Axon文:江藤光紀アンガス・ウェブスター(指揮) 東京交響楽団英国の新鋭が待望の初登場! イギリスの若手指揮者、アンガス・ウェブスター。2018年、10代にしてパヌラ国際指揮者コンクールで最高位を獲得、サロネンにも才能を高く評価され、各地のオケを振って着実に地歩を固めている。一昨年、東響にも登場する予定だったがコロナで流れ、いよいよこの秋にお目見えだ。実はこの間、一足早く名古屋フィルで日本デビューを果たしているが、その時の指揮ぶり・音楽作りがとても20代前半とは思えない風格を備えていると話題になった。その大器がいよいよ東京でもヴェールを脱ぐというわけだ。 プログラム前半はイギリスもの。まずはアンナ・クライン「彼女の腕の中で」。クラインは分かりやすい作風で、近年その作品が世界中で頻繁に取り上げられている女性作曲家だ。本作は彼女の母に捧げられた弦楽合奏曲で、アルカイックで瞑想的なサウンドが聴き手

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