36文:鈴木淳史 コロナ禍を乗り越えるべく2021年にスタートした企画「クラシック・キャラバン」。3回目となる今年は、8月から来年1月にかけて全国で27公演が行われる。 クラシック・キャラバンといえば、若手からベテランまで数多くの演奏家が出演し、しかもその顔ぶれが豪華なこと。日本を代表するアーティストが勢揃いといっていい。それでいて、チケット料金も安めに抑えられているのもありがたい。興味があるがどの演奏会に行けばよいかわからない人、コロナで演奏会から足が遠のいた人などを対象にして間口をぐっと広げていることに加え、コンサート・ゴーアーも楽しめる演奏会も目白押しだ。 今回は新しい試みも導入された。まず、企画アドバイザーが起用され、専門的な視点から企画に助言する。アドバイザーは、池辺晋一郎、西村朗(以上作曲家)、仲道郁代(ピアニスト)、福井敬(声楽家)の4人。 さらに、すべての公演に日本人作曲家による作品を必ず一曲取り入れることになった。なかには、大阪公演(10/9)の大栗裕「大阪俗謡による幻想曲」、札幌公演(11/23)での伊福部昭「ヴァイオリンと管弦楽のための協奏風狂詩曲」、福島公演(11/26)は古関裕而の「栄冠は君に輝く」など、それぞれの地域にちなんだ作曲家の作品を取り上げる公演もある。 今年は、オーケストラ(いずれもスーパー・クラシック・オーケストラ)が主となる大ホール企画「華麗なるガラ・コンサート」7公演、室内楽を中心とした小ホール企画「煌めくガラ・コンサート」20公演が行われる。その多くは、演奏家が次々に入れ替わって名曲を披露するガラ・コンサート。たとえば、宮崎公演(9/16)のプログラムでは、ヴィヴァルディの「四季」が入っているが、それぞれの季節ごとにソロ・ヴァイオリンが入れ替わる趣向だ。周防亮介(春)、小林美恵(夏)、奥村愛(秋)、渡辺玲子(冬)といったように。これが松江公演(12/7)と山口公演(12/9)では、徳永二男(春)、川田知子(夏)、南紫音(秋)、漆原啓子(冬)になる。一夜にして、名だたる演奏家のそれぞれの個性の違いを味わい尽くす、絶好の機会だ。 それぞれ趣向を凝らした演奏会が全国で行われるが、なかでもひときわ個性的な公演をいくつか紹介しておこう。 東京公演(9/13)は、ドビュッシーの「牧神の午後への前奏曲」で静かに始まるものの、ピアソラや武満徹、そしてストラヴィンスキーの「春の祭典」第2部、ベートーヴェンの「第九」の終楽章という、ガラ・コンサートの枠を飛び越えた大盤振る舞い。この日指揮をする鈴木優人のバイタリティーがそのままあふれ出ているような公演だ。 にぎやかさでは福岡公演(12/10)も負けてない。「祭」をテーマに、5つの狂詩曲を高関健が指揮する。小出稚子の「博多ラプソディ」からガーシュウィンの「ラプソディ・イン・ブルー」まで、まさしく狂詩曲フェス。 高崎公演(12/2)では、生誕190年を迎えたブラームスをフィーチャーする。實川風(ピアノ)や成田達輝(ヴァイオリン)、川本嘉子(ヴィオラ)らによるピアノ曲や室内楽に加え、西村朗のクラリネット五重奏曲も披露される予定だ。 そのブラームスに加え、生誕100年のリゲティまで祝ってしまおうと、マニア心をくすぐるプログラムを用意するのが京都公演(12/30)だ。日本人作曲家の作品は、北爪裕道に新作委嘱をするなど力も入っている。最後は、一日早い除夜の鐘の代わりとして、リゲティの「100台のメトロノームのためのポエム・サンフォニック」を披露するというのだから、なかなか凝っている。 新潟公演(24.1/7)には、仲道郁代や横山幸雄、小川典子ら6人のピアニストが登場。前半は2台ピアノのための作品、そして後半は5台ピアノがサン=サーンスの「死の舞踏」やホルストの「惑星」より〈木星〉などを奏でるというのだから要注目だ。全国を巡る豪華絢爛な音の饗宴
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