eぶらあぼ 2023.9月号
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今夜は映画館で/ジャン=マルク・ルイサダアンコール!/キース・ロックハート&ボストン・ポップス・オーケストラバッハ ベートーヴェン ブラームス/リチャード・トネッティ&オーストラリア室内管ブラームス:ヴァイオリン・ソナタ全集/黒川侑&久末航CDCDCDCD126ジャン=マルク・ルイサダに師事した複数の若いピアニストから「先生のお宅ではよく映画を観た」と聞いた。ルイサダは大の映画好きとして知られる。本盤は彼が子ども時代に観ていたフランスのTV番組『今夜は映画館で』にちなみ、両親への思いもこめてリリースした。人が本気で心から「やりたい」と思ったことは、かくもエネルギーを放ち、受け手の波動を高めるのか。タロー編曲マーラーの「アダージェット」の演奏に深く心を揺さぶられてそう感じた。映画とリンクした本盤では、モーツァルトの「幻想曲」やブラームスの「主題と変奏」の非常に熱量高く力強い表現も説得力に溢れている。(飯田有抄)世界最高峰のポップス・オーケストラ、2000年発売のベスト盤が新装再登場。当時は現・常任指揮者であるキース・ロックハートが就任して5年経ち、A.フィードラー(在任50年)とJ.ウィリアムズ(同13年)という二大巨匠の後任という重圧をはねのけて楽団のサウンドを確立した頃。グレン・ミラー楽団のレパートリーからケルト系音楽、クリスマス・ソング、クラシック、そしてもちろん自国の作曲家の作品にマーチやトラディショナルと、幅広いレパートリーから厳選されている。加えてエルヴィス・メドレーなどボーナス曲も盛りだくさん。10月には同コンビの来日あり! (東端哲也)トネッティとオーストラリア室内管弦楽団の自主制作盤第1弾。ベートーヴェンの弦楽四重奏曲が素晴らしい。「カヴァティーナ」はポルタメントをかけながら歌う旋律や対位法的な声部の絡みがとても美しい。「大フーガ」ではフーガのぶつけるようなエネルギーの爆発が凄まじい。それでいて精緻な書法も見事に造形される。ブラームスの交響曲は、冒頭からのびやかな歌と溌溂としたリズムが快い。緩徐楽章の弦と管のバランスの良さ、メヌエットのガット弦のしなやかな柔らかさ、終楽章のトゥッティの頂点の激しさとしみじみとした余韻を残す結びなどいずれも第一級だ。バッハも実に爽やか。(横原千史)気鋭のヴァイオリニスト黒川侑のデビュー盤。それがブラームスのヴァイオリン・ソナタ全曲というのだから、かなり攻めている。角がとれたまろやかな音で歌を次々に紡ぎ出していく黒川。トメ、ハネ、カスレといったフレージングも的確だ。久末航のピアノがこれまたすばらしい。両手のバランスに優れた立体的な響き。さらに2人の距離感の良さ。お互い少し距離を置きつつ、相手をしっかり見据えているような。爽やかさと甘美さを香り立て、そこにわずかに苦味が絶妙にブレンドされた第1番が絶品。第2番はより幻想的、第3番は内省的に。飾り気なし。じつに真摯なブラームスだ。(鈴木淳史)ロータ:映画『甘い生活』より〈メイン・テーマ〉/マーラー(A.タロー編):アダージェット/モーツァルト:幻想曲 K.397/ブラームス:主題と変奏 ニ短調(弦楽六重奏曲第1番 第2楽章のピアノ独奏版) 他ジャン=マルク・ルイサダ(ピアノ)LA DOLCE VOLTA/キングインターナショナルLDV-118 ¥オープン価格ミーチャム(ドン・セベスキー編):アメリカン・パトロール/ビゼー:組曲「アルルの女」より〈ファランドール〉/スーザ:星条旗よ永遠なれ/ホーレンベック編:ロング・リヴ・ザ・キング〜トリビュート・トゥ・エルヴィス!/J.ウィリアムズ:メリークリスマス メリークリスマス/J.E.ウィナー:茶色の小瓶 他キース・ロックハート(指揮)ボストン・ポップス・オーケストラタングルウッド音楽祭合唱団ソニーミュージックSICC-30726 ¥1980(税込)ブラームス:ヴァイオリン・ソナタ第1番〜第3番黒川侑(ヴァイオリン)久末航(ピアノ)J.S.バッハ:2つのヴァイオリンのための協奏曲/ベートーヴェン(リチャード・トネッティ編):弦楽四重奏曲 op.130より第5楽章 カヴァティーナ、「大フーガ」/ブラームス:交響曲第3番リチャード・トネッティ(指揮/ヴァイオリン)オーストラリア室内管弦楽団収録:2015年8月、メルボルン&2016年5月、シドニー(ライブ) 他ACO/東京エムプラスACOJP1 ¥2370(税込)アールアンフィニMECO-1077 ¥3300(税込)

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