石田組 2023・夏/石田組ウィーン・フィル・サマーナイト・コンサート2023/ヤニック・ネゼ=セガン&ウィーン・フィル憧憬/酒井有彩モーツァルトとマンボ 3/サラ・ウィリスCDSACDCDCD+DVD122公演は各地で完売連続、いま爆発的な人気を誇る「石田組」。パフォーマンスや衣裳などの鮮烈さに目が行きがちだが、土台はクラシカルな弦楽合奏団だ。2枚目のアルバム(特典DVD付き)の「四季」でもポップスでも、ヴィヴィッドなライブ感、朗々と楽器を鳴らし、ときに強烈な音やビートもきかせるが、基本は個々人の技量の高いきちんとした合奏団。ではなぜ別格の人気なのか。もちろん理由は明白。“組長”石田泰尚の音がすべてを超えてすばらしすぎるのだ。輝かしい美音と繊細なニュアンス、喜びと色気にあふれる歌心に聴き惚れるばかり。カリスマ“組長”の妙技をとくと味わう。(林 昌英)ウィーン・フィル恒例のシェーンブルン宮殿での野外コンサート。今年はネゼ=セガンがフランス音楽を取り上げた。キビキビとしたテンポで進む「カルメン」組曲のなかで、第3幕への間奏曲などしっとりと声部を絡ませ合うのがウィーンらしい。ブーランジェの「春の朝に」がいいアクセント。持ち前の色彩性とウェットな情感を宿す。ガランチャを迎えたグノーやサン=サーンスのアリアでも深々とした余情を漂わせる。そして、柔らかに、かつ明瞭に色彩が重ねられる「ダフニスとクロエ」第2組曲に、小気味良く、ときに蠱惑的な「ボレロ」。クライマックスはやはりラヴェルだ。(鈴木淳史)「憧憬」という想念は、芸術においていかに発想や表現の大きな原動力となりうるのか、この言葉をタイトルに掲げた酒井有彩のセカンドアルバムがそれを伝える。酒井にとって思い出深いライプツィヒ、そしてそこに集った19世紀ロマン派の音楽家たちに想いを馳せ、シューマンやメンデルスゾーンの作品、ブゾーニやタールベルクらの編曲作品を収めた。選曲には「変奏」も軸に置いており、内省的な表情から甘美・壮麗な響きまで起伏に富み、ロマン的な時代の空気を感じさせる。酒井の奏でる煌めくような音色には、愛情とともに、どこかノスタルジーも香り立つ。(飯田有抄)ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団のホルン奏者サラ・ウィリスによる大ヒット企画に新たな1枚が加わり、シリーズが完結。モーツァルトとキューバの代表的なダンス音楽であるマンボという斬新なコンセプトを掲げる一方で、彼女が夢であったと語るモーツァルトの4曲のホルン協奏曲の収録も成就した。ウィリスのホルンは軽やかでありながら、常に音楽の明暗を鮮やかに描き出している。ホルン協奏曲の最終楽章とそのロンド主題をルンバ風に仕立てたエドガー・オリベロによる新曲「ロンド・アラ・ルンバ」における対比は、当アルバムで最もエキサイティングな聴きどころであろう。(大津 聡)ヴィヴァルディ:協奏曲集「四季」/ホワットエヴァー(オアシス)/ありがとう(いきものがかり)石田組ビゼー:「カルメン」第1組曲より〈間奏曲〉/ブーランジェ:春の朝に/グノー:歌劇《サフォー》より〈おお、わが不死の竪琴よ〉/ラヴェル:バレエ「ダフニスとクロエ」第2組曲、ボレロ/サン=サーンス:歌劇《サムソンとデリラ》より〈あなたの声に私の心は開く〉 他ヤニック・ネゼ=セガン(指揮)ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団エリーナ・ガランチャ(メゾソプラノ)収録:2023年6月、ウィーン(ライブ)ソニーミュージックSICC-2270 ¥2860(税込)シューマン:アベッグ変奏曲、「ミルテの花」より〈くるみの木〉(レヴィンソン編)/メンデルスゾーン:厳格なる変奏曲、歌の翼に(タールベルク編)/J.S.バッハ(ブゾーニ編):無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ第2番より「シャコンヌ」 他酒井有彩(ピアノ)モーツァルト:ホルン協奏曲第4番、協奏交響曲 K.297b/エドガー・オリベロ:ロンド・アラ・ルンバ/ホセ・ホワイト・ラフィット(J.アラゴン編):美しきキューバ娘/ホセイト・フェルナンデス(アラゴン編):グアンタナメラサラ・ウィリス(ホルン)ホセ・アントニオ・メンデス・パドロン(指揮) ハバナ・リセウム・オーケストラ アデル・ゴンサレス(パーカッション) 他ALPHA/ナクソス・ジャパンNYCX-10412 ¥3300(税込)収録:2022年8月、ミューザ川崎シンフォニーホール(ライブ)ユニバーサル ミュージックUWCD-10003 ¥4000(税込)オクタヴィア・レコードOVCT-00205 ¥3850(税込)
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