eぶらあぼ 2023.9月号
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絆 ―Dear Friends―/マッシモ・ラ・ローサ&杉山康人&沢野智子グレンダール:トロンボーン協奏曲/シューマン:3つのロマンス、アダージョとアレグロ/H.スミス:トゥ・シャドウズ・ダンシング・イン・ザ・ダーク/山口尚人:絆―Dear Friends― 他マッシモ・ラ・ローサ(トロンボーン)杉山康人(テューバ)沢野智子(ピアノ)収録:2022年8月、トッパンホール(ライブ)妙音舎MYCL-00039 ¥3300(税込) CDブルックナー:交響曲第8番CDCDSACD120トーンハレ管と2019年より音楽監督を務めるパーヴォの近況が届いた。聴き始めてすぐに引きずりこまれた。弦がいい音を出している。シルキーで滑らかな肌触りを持ち、蠱惑的な曲線美を描く。ほの暗い陰影感が曲のパセティックな性格を引き出し、深い呼吸を作っていく。快速で元気なスケルツォに続くアダージョにまたコクがあり、間髪あけずにフィナーレに流れ込む。パーヴォは明快で曇りのない音楽作りをするが、ブルックナーに欠かせない粘り気や波動のようなものをオケが補い、密度の濃い演奏に仕上がった。キレがありながらよく歌うバランスの取れた演奏で、いいコラボレーションのようだ。(江藤光紀)ベルリン・フィル首席ヴィオラ奏者の清水直子と、名ピアニストのオズガー・アイディンによる2010年ライブ録音集。バッハ、ブラームスから20世紀に連なる4作品が並び、作曲技法や表現法は全く異なるが、「アマービレ」の感覚がたしかに通底しているのが興味深い。ヴィオラが少し遠い録音だが、ブラームスはピアノの温かい和声に乗ったヴィオラの歌として味わい直せる。エネルギーと妖しさが一気に増すヒンデミットは、安定の技巧から激しい熱気まで秀逸。近年再評価が進むクラークの名ソナタでは、あらゆる感情が内包される多彩な音楽が、両者の名技で感動的に構築される。(林 昌英)クリーヴランド管の奏者・杉山康人と、同楽団の首席奏者を経てソリストとして活躍するマッシモ・ラ・ローサによるジョイント・リサイタルのライブ録音。滑らかなラ・ローサ、豊麗な杉山の各ソロは、その妙技で耳を惹きつけ、両楽器のデュオは、聴く者を新鮮な感覚へと誘う。中でも、テューバの“しなやかな歌”に驚かされる杉山のシューマン2曲や、両者の絡みが美しいデュオ曲は、滅多にない聴きもの。山口尚人の「絆」も魅力的な楽想で酔わせる。金管楽器に精通したベルリン在住のピアニスト、沢野智子の絶妙なサポートも光る。清新なサウンドを堪能できる興味深い1枚。(柴田克彦)二期会のスター・バリトン加耒徹によるアルバム第2弾は、すべて英語のテキストによる歌唱で貫かれた1枚。ロータやマンシーニ、ルグランらが名作映画のために書いた名旋律に始まり、民謡も、イタリアの歌曲作曲家トスティによる英語歌曲も、そしてミュージカルナンバー(特にラストを飾る『ジキルとハイド』からの2曲!)も素晴らしいが、やはり彼が愛してやまないイギリス芸術歌曲が圧巻。16~17世紀の詩に20世紀初頭にクィルターが曲を付けた2曲、そしてトーマス・ハーディの上質な詩に最晩年のフィンジが作曲した6曲からなる「私は愛の神に言った」が鮮烈すぎる! (東端哲也)/パーヴォ・ヤルヴィ&チューリヒ・トーンハレ管ブルックナー:交響曲第8番(ノーヴァク版 第2稿)パーヴォ・ヤルヴィ(指揮)チューリヒ・トーンハレ管弦楽団ヴィオラ・アマービレ/清水直子&オズガー・アイディンJ.S.バッハ:ヴィオラ・ダ・ガンバ・ソナタ ト短調/ブラームス:ヴィオラ・ソナタ第2番/ヒンデミット:ヴィオラ・ソナタop.25-4/クラーク:ヴィオラ・ソナタ清水直子(ヴィオラ)オズガー・アイディン(ピアノ)ALPHA/ナクソス・ジャパンNYCX-10409 ¥3300(税込)ロータ:映画『ロミオとジュリエット』より〈私たちの時〉/アイルランド民謡:ダニーボーイ/クィルター:私の生きることの喜びよ、ダマスクのバラ/フィンジ:歌曲集「私は愛の神に言った」/トスティ:私を愛して!/F.ワイルドホーン:ミュージカル『ジキルとハイド』より〈時が来た〉 他加耒徹(バリトン)松岡あさひ(ピアノ)オクタヴィア・レコードOVCL-00819 ¥3850(税込)収録:2010年8月、杜のホールはしもと&フィリアホール(ライブ)マイスター・ミュージックMM-4520 ¥3300(税込)A Time for Us ―歌道Ⅱ―/加耒徹

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