eぶらあぼ 2023.8月号
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9/2(土)14:00 Hakuju Hall問 ビーフラット・ミュージックプロデュース03-6908-8977 https://www.bflat-mp.comと思ったんです。お客様のアンケートに『イタリア語のほうがいい』と書いてあったりしましたが(笑)、いい切込みにはなったと思います」と語る。 2人とも、まさにキャリアの原点がこのコンサートにあったようだが、そこから「10周年」を迎えるまでのあいだ、大きく成長を遂げたようだ。杉山に聞くと、「生きているだけで自分の中に取り込まれるものがあり、それが必ず歌に反映されるという意識を持っています。今回、マーラーの歌曲を入れていて、これは私の原点で今後の道筋も示すものですが、同時に《セビリアの理髪師》に初挑戦します。この10年間、いろんなことを吸収してきたのだと感じていただけたらと思います」。 吉田も言う。「緊張したあのころにくらべると余裕が出て、なにかを表現するパワーは増したと思います。コロナ禍もターニングポイントになりました。歌手はアウトプット過多になりやすいのですが、コロナ禍はそれができない分、勉強に力を入れたらインプット過多になって、気持ちが追い込まれた時期Hakuju Hall 20周年記念 二期会 ディーヴァ, ディーヴォ 10周年ガラコンサート9/28(木)14:00 Hakuju Hall問 Hakuju Hall チケットセンター03-5478-8700 https://hakujuhall.jp49Interview杉山由紀(メゾソプラノ)& 吉田 連(テノール)優秀な歌手たちからさらに選ばれた精鋭の成長に触れる スポーツでも芸術でも、才能ある若者の順調な成長を目にするのはうれしい。Hakuju Hallで9月に開催される「二期会 ディーヴァ, ディーヴォ 10周年ガラコンサート」も、そんな体験ができる場である。2013年以来、二期会オペラ研修所を優秀な成績で修了した歌手がすでに60人以上、「二期会 ディーヴァ, ディーヴォ」に出演しており、今回、そのうちの選りすぐり6人が「10周年ガラ」で歌う。Hakuju Hallの20周年にふさわしい。 26回を重ねた同シリーズの第1回で歌った杉山由紀(メゾソプラノ)と第5回に出演した吉田連(テノール)に話を聞いたが、選ばれた2人も、そのころは無我夢中だったという。 杉山が回想する。「第1回なので前例もなく、緊張しながら出演しましたが、温かく響くホールでうれしかったです。お客さんのことはあまり意識せず、歌いたいワーグナーを選曲しました。その後、ワーグナーに携わる機会が多く、キャリアの原点になったように思います」。 一方、吉田は、「よく覚えているのは、《愛の妙薬》の〈人知れぬ涙〉を日本語で歌ったことです。将来は子どもたちやアマチュアの音楽好きのために自分が貢献できたら、という思いがあって、裾野を広げるために訳詞はおもしろいがありました。でも、だからこそ、自分がやりたいことが明確になり、NISSAY OPERA《ルチア》で、代役でエドガルドを歌うチャンスをいただくなど、展望が開けました」。 ちなみに、吉田は今回も〈人知れぬ涙〉を歌うが、「当時より歌いやすくなった」と自信をのぞかせ、「日本語で歌ったほうがいいかな?」と付け加えた。 ほかに高橋維、渡邊仁美(以上ソプラノ)、市川浩平(テノール)、的場正剛(バリトン)も出演。努力を重ね、技を磨いている6人の歌手たちの歌には、もっと先への展望も見いだせるに違いない。杉山由紀取材・文:香原斗志吉田 連 ©Ryoji Iwata文:長井進之介©Ayane Shindoアーティスピアノアンサンブル 2台8手連弾の世界4人の巧者の手で緻密に組み上げられる名曲の数々や「牧神の午後への前奏曲」、「モルダ 市村ディットマン朋子に金井玲子、そウ」(いずれも編曲版)といった耳なじして可児亜理と吉井美由紀によって結成された「アーティスピアノアンサンブみのある楽曲をはじめ、演奏機会の少ないスメタナの2台8手のためのソナル」。全員が国際音楽コンクールで確かタなど、バラエティ豊かな曲目が揃っな実績を残し、国内外で様々に演奏活動を展開するピアニストだ。2011年に活ている。彼女たちの高い技術と、豊富動を開始すると、日本とドイツで定期的な室内楽の演奏経験で培われた音作にコンサートを行い、好評を博してきた。りによって生み出されるアンサンブル 2台8手の迫力ある音色にこだわるは、ピアノの多彩な音色と新しい可能彼女たちが今回選んだのは、ドヴォル性を届けてくれることだろう。ザークにスメタナ、ドビュッシーにラヴェルと、チェコとフランスの作曲家によるプログラムである。「スラブ舞曲」

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