eぶらあぼ 2023.8月号
38/137

♪♪♪拡大版はぶらあぼONLINEで!→♪♪♪35橘高校吹奏楽部のマーチングスタイルから学び、衣装も京都橘のケープ+ミニスカートをリスペクトした通称「ピンク衣装」にした。「マーチングの聖地」大阪城ホールで開催される全日本マーチングコンテストにも7回出場。イベントに出演すると、多くのファンが来場する人気バンドだ。 マーチングとは、30メートル四方のフロアで演奏しながら、行進や演技を披露する吹奏楽の一ジャンル。その中で、華やかな衣装で軽快なステップを見せる出雲商業や京都橘は異色の存在だ。 チャオが1年生だった2021年11月、出雲商業は全日本マーチングコンテストに出場した。「ここがマーチングの聖地なんだな!」 チャオは大阪城ホールの広さに感動した。そして、スカートの裾を弾ませ、部員たちとともにフロアに飛び出していき、何度も練習してきたマーチングを披露した。吹奏楽部に入って初めての大舞台に「間違えたらいけん!」と緊張しながらファゴットを吹き、ステップを踏んだ。楽しさもあったが、「うまくできた」とは言えなかった。 審査の結果、出雲商業は出場校の下位約3分の1に与えられる銅賞だった。残念ではあったが、1年目から大舞台を経験できたことが嬉しかった。山根采華さんと片岡利之先生 とはいえ、文化部である吹奏楽部だけに、練習過程でマーチングに苦しむ部員もいる。しかし、運動部出身のチャオは、行進やステップの動きを感覚的に身につけられた。体力づくりのためのトレーニングも苦にならなかった。その一方で、ファゴットの演奏は思うようにいかなかった。「これじゃいけん。みんなに追いつかな!」 チャオは練習に没頭する日々を送った。 ところが翌年、マーチングコンテストに出場した出雲商業は中国大会で代表校に選ばれず、目標だった全国大会に進めなかった。 チャオは重い喪失感の中で、「来年こそは絶対大阪城ホールへ行こう!」と心を燃やした。 昨年の中国大会では、演技は高く評価されていたものの、演奏への評価が厳しかった。顧問である片岡利之先生の指導のもと、部員たちは冬場に演奏の基礎力を徹底的に鍛えた。チャオも自信を持ってファゴットを吹けるまでに成長した。 4月には新入部員を迎え入れた。全部員で51名。最大81名まで出場できるマーチングコンテストでは、人数が少ないと迫力やダイナミックさで不利になる。しかし、部員同士の団結力や華麗なステップでそれを跳ね返すつもりだ。 春以降は毎週のようにイベントに招かれ、演奏やパレードを行ってきた。「お客さんの拍手はうちらのパワーの源だ!」 詰めかけた観客からの喝采にチャオたちはモチベーションを高め、さらに練習に打ち込んだ。 今年度の部活のスローガンは「桜梅桃李」。桜・梅・桃・李(すもも)のように、部員一人ひとりが個性的な花を咲かせながらみんなでまとまっていこう、という意味が込められている。 ピンク衣装に身を包んだ51輪の花が大阪城ホールに咲き乱れる日まで――。 チャオたち出雲商業は力強く歩み続けていく。振り付けはこのふたり        ドラムメジャーの河原乙加(おとか)さん(右)とマーチングリーダーの小村彩さん(左)

元のページ  ../index.html#38

このブックを見る