eぶらあぼ 2023.8月号
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ピンク衣装の花々が大阪城ホールに咲き乱れる日まで コロナ禍も3年が過ぎ、ぶらあぼ編集部では多くの音楽家から吹奏楽部の苦難の状況を耳にしてきました。そこで吹奏楽と言えばこの方、吹奏楽作家のオザワ部長が吹奏楽部を応援するこのシリーズ。音楽へひたむきな情熱を燃やす若者の姿は、見ている私たちも元気にしてくれます。 島根県立出雲商業高校吹奏楽部の3年生、チャオが楽器を始めたのは高校からだ。「チャオ」というのは部活でのあだ名で、本名は山根采華(ことは)である。 出身は、吹奏楽の名門として全国にその名が轟く出雲市立第一中学校。だが、チャオはソフトテニス部に所属し、コートで汗を流していた。 ところが、高校の入学式の日、華やかなピンク色の衣装で新入生歓迎の演奏をする吹奏楽部の姿に心を奪われた。スウィングジャズの名曲《It Don’t Mean A Thing》を演奏しながら、脚で激しいステップを繰り返し、体を揺らす。まるでダンスだ。吹奏楽というと椅子に座って演奏するイメージだったチャオは驚いた。女子部員が身につけたケープが翻り、ミニスカートが揺れる。男子部員のスラックスを穿いた脚もキビキビと動く。演奏の合間には笑顔を振りまき、新入生に手を振る。そんな吹奏楽部員たちの姿はキラキラ輝いていた。(うわっ、カッコいいな……!) すっかり魅了されたチャオは、思い切って初心者取材・文・写真:オザワ部長(吹奏楽作家)♪♪♪34で吹奏楽部に入部することを決めたのだった。 任せられた楽器はファゴットだった。「この楽器、指の数よりキーが多いんだけど!」 演奏の難度が高いファゴットに悪戦苦闘しながらも、チャオは部活にのめり込んでいった。 吹奏楽が盛んな学校が集まり、「吹奏楽王国」と呼ばれている島根県出雲市に位置する出雲商業高校。吹奏楽部は1964年に創部され、2012年からマーチングに取り組み始めた。国内外で人気の京都躍動感あふれるパフォーマンス!Vol.12 島根県立出雲商業高等学校吹奏楽部

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